135kHz バルーンアンテナ考


始めに

135kHz帯でEIRP=1Wを実現する一例としては、右図に示す様に底部コイルローディング付きの10mx10mの逆L形アンテナでは送信電力1kWで それがやっと可能になっています。これは、接地抵抗を20Ωに想定して、ローディングコイルはQ=300という高めの 値を設定した結果です。放射効率は実に三千分の一で、ローディングコイルの許容電力は610W以上も必要になるという、何とも呆れてしまう状態です。この例を見ても、135kHzでEIRP=1Wを実現するのは大変な事が判ると思います。

バルーンアンテナの使用を考える

ひどい状況を改善する為に、筆者が10年以上前から度々使っているバルーンアンテナ( レポート 写真)を用いて何とか50W出力でEIRP=1Wを実現できないのかをMMANAで検討してみました。
接地抵抗が20オームで、ローディングコイルのQ=300、送信出力50Wを想定してバルーンアンテナではどの程度の高さにすればEIRP=1Wが達成出 来るのかをMMANAで計算してみた結果、高さが50mあればほぼ良いと判りました。これは、いつも筆者が使っているエレメントの重量では風船の直径は約 80cm有れば持ち上げる事が可能です。エレメントは実際の直径0.38mmの太さの電線に設定し て無損失のエ レメントと比較してみましたが、その差はわずか0.25dBでほとんど無視できる値でした。これ程の細い電線でも、対する接地抵抗とローディングコイルの 損失抵抗合計が36Ω以 上もある事から、エレメントその物の損失は全体にはあまり影響がないという事です。尚、放射抵抗は196mΩ程度に計算されます。利得は、完全大地の場合 −18. 1dBi と計算されますので、50W(17dBW)で計算しま すと、
EIRP = 17 - 18.1 = -1.1 dBW = 776mW
となって、1.1dBのマージンを持って、1Wを越えない適当な値と思われます。
アンテナ入力インピーダンスは38.4Ωなので50オームで駆動することはSWR的にも全く問題ありません。ローディングコイルは約5.6mHが必要になりました。

50m高バルーンアンテナの諸元 (評価はMMANAによる)
風 船:
ゴム風船直径80cm
封入ガス:
ヘリウム
(想定接地抵抗:) (20Ω)
エレメント: 直径0.36mm銅線 50m
アンテナ入力インピーダンス: 38.4Ω
周波数:
136kHz
利得(完全大地): −18.1dBi
利得(比誘電率=10、導電率=5mS/m): −19.3dBi
放射抵抗: 196mΩ
ローディングコイル: 5.64mH / Q=300
(損失抵抗分 約16.1Ω)
 
気球ゴム風船:
左から
直径60cm
同90cm(新品)
90cm(使ったもの)
1.2m












風による影響

このアンテナは底部ローディングコイルで同調を取っていますので、アンテナが風で流されて傾いた場合に同調周波数がズレて、SWRに影響する心配があります。エレメントが垂直になっている状態で同調を取っておき、SWR50=2になるエレメントの傾きを調べると約29度になりました。現状では135kHzの送信機はほとんど自作でしょうから、それらがどの程度のSWR悪化に耐えられるかは設計次第ですが、50W出力ならば余裕を持った設計が可能なのではないでしょうか。

地質による影響

上記では完全(無損失)大地で考えましたが、実大地(一例として、平均的な値に近いと思える比誘電率=10、導電率=5mS/m)での利得は−19. 3dBiと計算されます。両者のどちらを採用すべきかは判断がつきませんが、極端な差は無いので気にしてはいません。この周波数帯では放射特性を見ても判 るととうり、意外に大地の影響は少ないようにみられます。

まとめ

直径0.36mmという極めて細くて軽い電線を直径80cm程度のヘリウムガス充填ゴム風船で50mの高さに上げれば、136kHzで例え50Wの出力電力でもEIRP=1Wに近い放射が実現できそうです。
HFローバンド、特に160mバンドで、10年以上も便利にバルーンアンテナを使ってきましたが、周波数が低くなればなる程にバルーンアンテナの良さが発揮されそうです。

埼玉県草加市 森岡進 JH1GVY
こーるさいん@jarl.com