胃潰瘍の話

 胃潰瘍は日本人にとっては非常にポピュラーな病気の一つです。長年この病気で悩んでおられる方も結構沢山いると思われます。
 『胃潰瘍は夜つくられる』という言葉があります。これは胃酸と胃潰瘍との関係を言い尽くしてあまりある言葉だと思います。生理的に人間の胃の中のpHは夜になると高くなってきます。夜は胃の中に食べ物が入ってこないため胃酸が中和されないということも一つの原因ですが、人間の体は夜になると迷走神経緊張状態になり、そのために胃酸の分泌が増大するわけです。
 潰瘍は胃酸が多いだけで出来るわけではありません。それを説明するためには、Shayの天秤理論がわかりやすいと思います。これは胃壁に対する防御因子と攻撃因子を天秤にかけ、攻撃因子が勝てば胃の粘膜防御機構が破壊され潰瘍が出来るというわけです。攻撃因子としては胃酸、ピロリ菌、飲酒、喫煙、ストレス、虚血、鎮痛剤、ステロイド、ペプシン、ガストリン、胆汁酸、膵液等があり、防御因子としては粘液、重炭酸、一酸化窒素、血流、プロスタグランディン、上皮細胞増殖因子、上皮細胞の再生産(細胞回転)等が挙げられます。
 最近、新聞・雑誌・TV等マスコミによく登場しますが、ピロリ菌が潰瘍の形成に大きく関係しているともいわれています。そのために今年からピロリ菌の除菌治療が健康保険でも認められるようになりました。
 昔は難治性の胃潰瘍は手術の対象になりましたが、近年、H2ブロッカー、プロトンポンプインヒビターと言った薬剤の開発により、ほとんど手術をすることはなくなりました。しかし、このような薬剤(最近ではH2ブロッカーは薬局でも手に入ります)を胃透視や胃カメラ等による確定診断を受けずに不用意に使うと、胃癌等の自覚症状を隠蔽してしまい、胃癌の早期発見が遅れるという事態にもなりかねません。
 胃の調子が悪いときは一度専門医を受診し、これらの精密検査を受けて、適切な治療を受けることをお勧めいたします。
<胃潰瘍の病期>

活動期1期(A1)
活動期2期(A2)
治癒期1期(H1)

治癒期2期(H2)
瘢痕期1期(S1)
瘢痕期2期(S2)

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