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情報教育

小さな学校大きな成果

 児童十人。過疎が進む長野県南部の阿南町和合地区にある和合小学校は、県内で二番目の小規模校だ。しかし、地区の全戸がPTA会員となる協力体制と、周りの大自然を利用した独自の教育活動が評価され、昨年は教育研究財団の教育賞を受賞。「郷土学習」を核に、地域と一体となった教育を実現している。奥深い山里の“小さな学校”の取り組みを追った。

(飯田支局・山本 真嗣)

 「そーら、よいしょっ」。山あいの校庭に威勢の良い掛け声と、もちをつく音が響き渡る。先月初め、地元の人たちを招待して開かれた収穫祭。子どもたちが自分たちの背丈ほどもあるきねを上手に使い、もちをつきあげていく。

 もち米は、学校田で子どもたちが育て、収穫。近くの農家の人に指導を受け、田起こしから田植え、稲刈りなど一連の農作業をすべて手作業で行った。

 阿南町和合地区。面積は町全体の40%以上を占めるが、人口は7%未満という過疎地だ。児童数は、わずか9人と周囲の飯田下伊那地方では最小。1年生が2人、3年生が4人、4,5,6年生が各一人ずつで、3・4学年と5・6年は複式学級となっている。

 同校の教育の中心は「郷土」。学校裁量の時間はもちろん、教科書の時間に積極的に校外に出掛け、豊かな郷土の自然と文化を学んでいる。

 アマゴの飼養やシイタケ栽培はその一例だ。すぐ横を流れる清流で釣ったアマゴを使って、人工授精し養殖。シイタケは原木に菌を打ち込み管理、収穫し、近くの事業所などに売った。また、生活科に「さんぽ」、理科や社会科に「たんけん」という単元を設定。住民生活を調査するなど、地域へ出掛ける機会をできるだけ多くしている。

 学校の活動を支えているのが、約130世帯約380人の地区住民だ。全員がPTA会員となり、飼養や栽培などに「社会人講師」として参加。全世帯に配布される「自然だより」や「学校だより」には、子どもたちが調べているモリアオガエルの生態への情報提供を呼び掛け、その結果を再配信するなど情報の相互発信にも努めている。

 本年度はクラブ活動で、コンピュータを使った「和合小PRクラブ」も発足。立ち上げた酒井恵美教諭(36)のホームページに、同校の活動内容を紹介したところ、北海道と島根県の小学校からメールが届き、以来、二人の児童がネット上で交流を続けている。

 「同世代の子と会う機会が少ないので、良い友達ができれば」と酒井教諭。たくさんの学校とアクセスし、広い世界を身近に感じてほしいという。

 これらの活動が認められ、昨年10月、財団法人・才能開発教育研究財団(本部東京)の才能開発実践教育賞を、県内でただ1校受賞。山田拓校長は「地区全体で受賞した」と喜ぶ。

 「新しいお友だちができました」。3学期が始まった今月11日、始業式で山田校長が、愛知県新城市の小学校から転校してきた1年生の男子児童を紹介した。「大自然の中で体を鍛えたい」と、同校に通うため親が引っ越しした。うれしい二けたの“大台”だ。

 今年、入学する予定の子でもは一人。「学校存続」に向けた地域の取り組みは続く。

2000(平成12)年1月17日(月曜日) 中日新聞

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