スクラップブック
環境教育
ビオトープ
| かつてその地域にあった自然生態系を、小さな規模で再現する「ビオトープ」を導入する小学校が全国で増えている。開発が進む都心の学校を中心に、失われた自然とのかかわりを子供たちに持たせようというのが大きな狙いだが、来年度から多くの学校で始まる「総合的な学習」の教材としても注目を集めている。今年度初めて開かれた「全国学校ビオトープコンクール」の2次審査に残っている東京都内の小学校をのぞいてみた。(社会部 村田雅幸) 「総合的学習」の教材として注目 校門をくぐると、左手に高さ4メートルほどの小山。春から秋にかけて、子供たちが登っては草を観察し、昆虫を捕まえる。「実はこの山、校舎を新築したときに出た残土を積んだものだったんです」。志茂校長が笑いながら説明してくれた。 同校は1997年9月に校舎を改築。現在ビオトープがある場所は、2期工事で音楽ホールが建てられる予定だったが、バブル崩壊で工事は延長、緑地回復に取り組んでいた同区の勧めもあって同年12月、残土の山を含めて600平方メートルのビオトープを完成させた。 ビオトープの効果はさまざまだ。多くの草花が育ち、山の“ふもと”の池ではカエルやトンボが繁殖した。区環境保全課が昨年5月から10月にかけて行った調査では、もともと校内に生えていたり、種をまいたりした植物の約3倍、171種類もの草木が確認された。鳥や風が種子を運んだと考えられるという。 さらに、都内では珍しいオニヤンマやショウリョウバッタも見つかり、小さな自然が徐々に回復しつつある。 「子供たちが優しくなったように思います」と話すのは、児童10人で作るビオトープ委員会を担当する矢野税教諭だ。小さな虫の成長を観察し、植物の世話をするうちに、子供たちは友達に対しても思いやりを持てるようになったという。 同委員会委員で5年生の井上愛美さん(10)は「前は虫を見るだけでいやだった。でも今は、少しかわいく思える」、秋本悠里さん(11)も「校庭では1,2年生とあまり遊ばないけれど、ビオトープでは、『これなあに』と小さな子が聞いてくる。そうしたら教えてあげるの」と楽しそうだ。 地域との交流も生まれた。ビオトープ造成時には、50年以上も前に同校を卒業したお年寄りらがコナラやブナの苗をプレゼント。98年秋には、近所の70歳代の男性が、ビオトープの草花を調べ、それぞれに名札を付けてくれた。 同コンクールを主催する日本生態系協会によると、国内の小学校に初めてビオトープが設置されたのは89年。埼玉県のように自治体が補助金を出した地域もあり、現在は全国で約500校に広がる。「そのほとんどが総合的な学習に取り入れるようです」と同協会の田辺竜太郎次長。多くの人にビオトープを知ってもらおうと行った今回のコンクールには、全国の幼稚園から大学まで82校が応募し、環境教育に生かされている33校が2次審査に進んでいる。 目黒区内でも、ビオトープのある小学校9校のうち7校が「総合的な学習」で活用していく方針だ。今年7月に導入した五本松小学校の長須登喜子教頭は「ビオトープと、隣接する森を利用し、自然保護と人間の健康を結びつけた学習ができるのではないか」と話している。 緑ヶ丘小でも、「自然とのふれあい」「人々のふれあい」を共通のテーマに進める予定だ。志茂校長は「どんな植物を植えれば、どんな虫が来るのかということを試すこともできる。本で調べるのではなく、実際の体験としてできる楽しさ。詳しい人に聞きに行ったりとテーマはどんどん広がっていくはず」と期待している。 1989年にビオトープを日本に初めて紹介した日本生態系協会の池谷奉文会長に話を聞いた。 −学校にビオトープは今後、どうあるべきか −教育としての意味は 2000(平成12)年1月10日(月曜日) 讀賣新聞 |