双眼鏡の選び方(初心者向け)

1.倍率は低い方が良い!

 初心者に双眼鏡を覗かせると必ず出る「何倍ですか?」という質問がある。当然「8倍です。」というように答えるのだが、なにか物足りなそうだ。普通の双眼鏡にはA×Bという表示がある。Aが倍率である。後ろのBは対物レンズの有効口径をミリ表示した数字だ。初心者向けに言えば覗く方と反対側のレンズの直径である。(厳密には違ってしまうが当たらずとも遠からずなのだ)
 倍率は初心者にとって唯一の判断基準になってしまうことが多い。これは車で最高スピードが何キロでますか?という程度の質問レベルなのだ。答えられるが、その製品の性能を表す基準としては全く役に立たない。確かに1000m先の物を見た時に倍率8倍では125mまで近寄って見たのと同じ大きさに見えるはずである。倍率20倍なら50mまで近寄って見るのと同じなのだ。それなら大きく見える方が良いではないか?というのは早計である。

 倍率が高いと見える範囲が狭くなるのと、対物レンズから取り入れる光の量に比べて倍率が高いと倍率の二乗で暗くなってしまうのだ。またちょっとでも手が動くと見ている対象が大きく動いてしまい、時には視野からいなくなってしまう。高倍率にはこのような欠点がある。

 はっきり言って手持ちで使用する双眼鏡の倍率は10倍以下にすべきだ。初心者には5〜8倍程度が向いている。もっと低くても良い位なのだが、市販されていないから仕方が無い。

9.粗悪品(価格はともかくまともに見えない双眼鏡)

8.割安品(価格が安い割にはまあ見える双眼鏡)

7.中級品(ちょっと高いと感じる価格設定で見え味もそこそこ)

6.高級品(コストに性能が比例していく限界レベル)

5.超高級品(お金に糸目をつけず良い物を追求する人向け)

3.さてどれにしようか?

2.まず使用目的は?

 現行商品で最も低倍率の双眼鏡(オペラグラスは除く)はキヤノン5×17,ニコン5×15で、美術館やコンサート用には最適な双眼鏡だろう。
 全くお薦めできないのが、ズーム双眼鏡だ。特に倍率が高いものは論外である。最低倍率が8倍程度ならともかく20〜100倍なんていうのは、まともには使えない代表だ。最高倍率の100倍では視野が暗く、どこを見ているのか判らない状態になってしまうだろう。製造しているメーカーの良識を問いたい!!!また最低倍率が8倍程度の物であっても普通の双眼鏡と比べると視野が狭く快適に見えるとは言えない。初心者がつい買いたくなってしまうのだが、絶対買ってはいけない。ベテランがこれらの双眼鏡を買うことはない。万一買うことがあれば、100円というような捨ててもよい前提で、バラシて構造を見たりするのに買うだけだ。私だったら無料でもいらない。人にあげても喜ばれないような物と言える。
 双眼鏡というのは道具である。利用するのは肉眼では確認できない遠くの物を見たり、肉眼では細部まで確認できない物を見えるようにするためだ。とはいっても様々な利用がされている。コンサートや美術館等に持っていく物は携帯性が重要だ。いくら良く見えてもかさばって重いのでは困ってしまう。また漁船で魚の群れを探すような場合は防水性が問われる。というように自分がどんなときに使うのかを考えてみよう。

 普通はコンサートにも使いたいし、競馬にも使うなあ。星を見るのもたまには良いかな、というようになるだろう。となると比較的万能な双眼鏡が良い事になる。このような場合にお薦めできるのは8×30,8×32クラスの双眼鏡だ。初めて双眼鏡を購入するのに向いている万能型の道具だ。
 8倍30ミリクラスの双眼鏡といってもたくさんあるのだ。大別するとポロプリズムタイプとダハプリズムタイプがある。覗く側のレンズと対象物側のレンズが直線的な位置関係にありちょっとコンパクトなのがダハプリズムタイプだ。昔からのイメージの覗くレンズの位置より対象側のレンズがずっと幅広の位置にあるのがポロプリズムタイプだ。ダハプリズムは少しコンパクトにできるがプリズムコストがポロプリズムより高いため高額になることが多い。同じ金額だったらポロプリズムタイプの方が良く見える双眼鏡になる場合が多い。
 さて、個人のホームページならではの部分に突入だ。実際に具体的な機種を挙げるのは雑誌等ではスポンサーの関係もあり非常に難しい。またはスポンサーの商品のヨイショ記事なのだ。例外は「暮らしの手帖」位だ。だがここは私個人の責任で書いているホームページなのであえて踏み込もう。
 まず国産ではニコン8×32HG Lと、同じくニコンの8×32SEが素晴らしい。HG LはダハプリズムタイプでSEはポロプリズムタイプだ。この2機種は世界の超高級品と同じ土俵で勝負できる物だ。ただちょっと大きくて重い。価格はHG Lが11万円、SEが7万円で実売価格は約80%だ。

 カールツァイスは双眼鏡の元祖だ。Victory 8×32 T* FLが現行品でClassiCの弱点だった逆光時のフレアは解消した。光学性能は文句無し。比較的コンパクトだが作り込みの高級感は感じない。実用向けではピカイチだ。

 ライカはUltravid8×32HDが現行品。以前のTrtnovidより進化した見え味は透明感が素晴らしい。このクラスでは最もコンパクトで軽い。

 スワロフスキーはSLC8×30WBだ。光学性能はニコンHGと同等だが、ピント調節のリングが対物レンズ側にあり一瞬戸惑う。より高級品のEL8×32WBという中心軸の無いユニークな形状の双眼鏡が素晴らしい。光学性能はもちろん優秀だが、作り込みの高級感は他の追随を許さない。

 これらの機種は常用双眼鏡として一生物になる資格がある素晴らしい双眼鏡だ。ライカとツァイスは携帯性が良く、ニコンSEはポロプリズム双眼鏡としては最高レベルの見え味と言える。どれを選んでも後悔することのない優秀な双眼鏡だ。

価格は最近ユーロが高いため、欧州3社の価格がずいぶん高い。
以下の価格は2008年6月の協栄産業の通販価格。

ツァイス Victory 8×32 T* FL \174,800円(税込)
ライカ   Ultravid8×32BR   \206,000円(税込)
スワロフスキーSLC8×30WB \168,000円(税込)
スワロフスキー EL8×32WB \234,300円(税込)
 まず私個人的に超お薦めがニコン8×30EUだ。ポロプリズムタイプでちょっとかさばるけれど見掛視界が70度と広々とした視野は一見の価値がある。中心像は超高級品にも負けない。価格は57k円で実売は約80%だ。トータル性能では超高級品に入れても遜色無いと言える。

 もうひとつニコンからダハプリズムタイプのモナーク8×36 DC Fがある。価格は32k円で実売は約80%。

 フジノンから出ている8×32LFはこのクラスでのダハプリズムタイプだ。防水の割りに結構軽い。価格は41k円で実売は約80%だ。

 ビクセンからはフォレスタHR8×32だ。ちょっと見掛視界が狭い。価格は40k円で実売は約70%だ。ビクセンからもう一つフォレスタZR8×32WPだ。こちらはポロプリズムタイプで防水なのでちょっと大きくて重い。価格は32K円で実売は約80%だ。

 コーワからBD8×32DCFだ。型番はBD32-8が正式だが混乱するとまずいので8×32と表記した。ダハプリズムの全反射を得られない1面に誘電体多層膜コートをおごり、ダハ面に位相差補正コートも実施。防水で最短合焦距離が1.5mと使いやすそうな双眼鏡だ。価格は46k円で実売は約80%だ。

 ツァイスからはConquest8×30T*もある。特長は軽量防水なのだが視界の狭いのが物足りない。価格は90k円で実売は約80%だ。ユーロが高いためコストパフォーマンスはイマイチ。

 このクラスは最初に買うには抵抗のある価格帯だが、満足度は高い。
 初心者はこのクラスから買うことが多いだろう。学生や中高生にはこのクラスでもやっとかな。でもあの単純なメガネでさえこれ位の値段はするのだから、なんとか皆さん頑張ってね。

 ビクセンから出ているアルティマZ8×32(W)はお買い得感がある。ポロプリズムタイプはやはりダハプリズムタイプよりコストパフォーマンスが高い物がほとんどだ。見掛視界も広く、高級品並みの性能だ。価格は27k円で実売は約70%だ。またアスコットZR8×32WP(W)もある。こちらはポロプリズムで防水にしたため重いのがイマイチ。価格は22k円で実売は約70%。ビクセンからはダハプリズムタイプでアトレックHR8×32WPもある。これは防水なのに390gと軽量なのが特長だ。価格は24k円で実売は約70%。
 
 このクラスは本音を言うとあまりお勧めしたくない。1万円を切る価格は手を出しやすいが、性能もそれなりなのだ。とりあえず双眼鏡が必要になり、その後使う可能性がほとんど無いならまあ仕方ないか、というレベルである。初めて双眼鏡を覗く人にはそれでも良く見えると感動するかも知れないが、長く使っていると物足りなくなるのが確実だ。

 ケンコーのNewVOLARE 8×30W SPはこのクラスだ。見掛視界は広いがアイレリーフが短いため眼鏡使用ではせっかくの広視野が生かせない。オープン価格で実売は1万円を切っている。
 よく家電量販店やDIY店などで、自由に手に取って双眼鏡を覗けるように置かれている事がある。大多数は高倍率ズームで悲惨な見え方だが、たまには8×30という表示のポロプリズムタイプの双眼鏡がある。高倍率ズーム双眼鏡と比べれは良く見えるように感じるかも知れないが、5k円未満で販売されている物は避けたほうが無難だ。稀には型落品が安く売られている事があり、そんな場合はラッキーなのだが、初心者は自分一人では判断できないので、ベテランに同行してもらって判断を仰いだ方が良いだろう。

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