セミの幼虫期間が長くなった理由

 セミの幼虫期間が7年と思っている人はいまだに、多くいるようだ。もちろん、幼虫期間7年で羽化した記録は今のところない。それに誰も幼虫期間が、7年とは言っていない。その本によれば、産卵した年を1年目として7年目に出てくると書いてあり、幼虫期間が7年とは書いていないのである。卵の期間1年、幼虫期間5年という意味なのだが、”7”という数字の一人歩きの結果だと思う。伝説である。
 セミの幼虫期間は卵の孵化時期(6,7月か9月頃)と年2回(6月、9月頃)発育パターン、終齢幼虫は一夏やり過ごすでだいたい決まってくる。 例外的なツクツクボウシが1、2年(関東あたりでは1年がやや多い)、アブラゼミ、ミンミンゼミ2〜5年(関東あたりでは普通3、4年)、クマゼミ2〜5年(関東あたりでは4、5年)、ニイニイゼミ3年〜5年(関東あたりでは4年が多い)。ニイニイゼミがほとんどユッカからの羽化、それ以外はほとんどアロエからの羽化である。
 セミの幼虫は1年のほとんど休んでいる。実際に発育している期間は1年のうち2ヶ月にも満たない。3、4年かかっても、実際に成長している期間は4、5ヶ月程度しかない。これに成虫の期間1ヶ月、卵の孵化までの期間、年内孵化の場合、45日程度なのでそれを加えても、8ヵ月もあれば計算上一世代完了できることになる。セミも中身はほかの昆虫と大差がないのである。計算上はセミも一世代1年の生活史を確立することができるはずなのに、実際にはできていない。
 セミの幼虫を飼育するのに、ホームセンターなどに売られている高さ1メートルぐらいの苗木を鉢植えにしてセミの幼虫を飼育してもセミが羽化することはほとんどない。これは栄養が足りないからである。セミからすれば、普通の木の場合、木が持っている栄養のすべてを利用することができない。普通、セミは大きな木の根元付近から羽化してくるものである。木に余裕がないとセミの幼虫が育たないのである。アロエの場合はセミの幼虫はアロエの持っている栄養をすべて利用できるから羽化させることができる。
 なぜ、普通の木の場合、木が持っている栄養のすべてが利用できないのか、それは木には自衛システムがあるからで、セミの幼虫が限度を超えて樹液をとろうとすると自衛システムが作動し、セミの幼虫が樹液を得ることができなくなる。兵糧攻めにあってしまう。自然状態では別の木の根に移動すればすむが、飼育ではそれができない。幼虫には時間制限があり、必要な時に十分な栄養を得ることができないと、成長できずに死んでしまうので成虫になれない。アロエの場合は樹液を吸われることに対しての自衛システムのようなものはなく、アロエの持っている栄養をすべて利用できる。 すべての栄養を利用するとアロエは当然枯れてしまう。

しおれ始めたアロエ
セミの幼虫の急成長でしおれ始めたアロエ

 セミの幼虫が1年一世代の生活史を確立しようとすると連続して樹液を吸い続けることになり、木が持つ自衛システムが作動しやすくなり、セミの幼虫はしばしば、新しい木の根を探し移動を続けることになる。地中を移動するのには坑道を掘るしかなくそれには栄養の多くを浪費することになり、成長するどころではなくなってしまうので、それを回避するために休み休み成長する今の生活史になったと考えられる。
 セミの幼虫は師管から樹液をとっている。道管だという説が主流だが、ほとんど水だけで育つ昆虫がいるはずがない。成長するのには栄養が必要だ。成虫が師管から樹液をとっているので幼虫も師管から樹液をとっているのは当然である。
 羽化の前には絶食している時期があるはずだという話があった。たしかに、スズムシ、マツムシ、クツワムシなどの直翅類は脱皮が近づくと動きが緩慢になり、エサも取らなくなる。直翅類は脱皮をする場所は周辺にいくらでもあるから、位置を少し変えるだけで、脱皮はできる。しかし、セミの場合は幼虫は地下にいて、羽化場所は木の上にある。絶食などしてじっとしていたら、地上に出てこられない。地上に出るのには坑道を掘るため水分と栄養を蓄えておくことが必要である。セミは少なくとも羽化直前は絶食はしていない。セミも成虫の体ができる時期があり、その時は絶食しているのだろうが、ミンミンゼミの場合、6月の終わりには羽化ができる状態になっている。普通の昆虫ならすぐに羽化することになるだろうが、ミンミンゼミが羽化するのは、数週間から一月以上も後である。セミは羽化直前の状態で止めておき、羽化の時期は自ら決めることができる。さらに、羽化直前にもかかわらず、活発に活動できる特殊能力の持ち主なのである。



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