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記 憶 喪 失 物
 
たとえばこんなミステリ (青い文字のタイトルをクリックすると作品データへ移動します)
タイトル 著者
1. ボーン・マン G.C.チェスブロ
2. 喪 失 ジュディー・マーサー
3. 異邦の騎士 島田荘司
タイトル 著者
4. 紫のアリス (*) 柴田よしき
5. 存在の果てしなき幻 司城志朗
6.
 
■ 記 憶 の 扉

 今記憶が無くなるということがどんなことなのか、記憶を無くしたことのない人間は想像するしかない。ミステリの世界で記憶喪失とは、どんなにか便利なものだろう。記憶がなければなんでもできるのだ。(政治の世界でも便利らしい(笑))
 この記憶喪失物は、精神の病気とするミステリと似ている(*4.「紫のアリス」などはこちらに近いのだが特例で掲載)。ともすると、卑怯な部類に入るかもしれない。だが、精神の病気とするミステリは、事件を病気やクスリのせい、はたまた幻覚や幻聴(幽霊なども含む)などのせいにしてしまい、人間の犯罪として暴こうとしないのに対し、記憶喪失物は、記憶を無くしても一己の人間として、苦悩しながらも現実を取り戻そうと自分探しをする。犯罪はあくまでも人間が犯すものだという前提がある。決して超常現象的な病気のせいにはしない。だから、より現実的に実感でき、たとえその過程に精神医学的なウンチクを挟まれたとしも説得力がある。自分の過去という記憶の謎を解いていくのも一つのミステリといえるだろう。

 ところで、記憶喪失物の数は少ないらしい。その理由はたぶん、自分探しというパターンが決まってしまうからではないかと思う。
 記憶を無くした人間の心理描写に陶酔し、主人公と一緒にハラハラドキドキ、スリルとサスペンスを味わせてくれる・・・。と、このような文言はこの際、「当然」といわせてもらおう。もちろん、前述にもあるように、記憶喪失ならなんでもできるので、大ドンデンガエシも十分可能だと思われ、ということは、その過程が問題になる。そのハラハラドキドキの部分が作家の腕の見せ所なのだ。もっと言うなら、鮮やかなトリックの一つでも欲しいところだが、これはかなりの難問であり、贅沢な希望なのかもしれない。


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