人魚姫....その後


「シエラザーデのゆめ」にある「koigooro-人魚姫」で
あわになってきえてしまった人魚は

今、どうしているだろうと、.....。


深い海の底をのぞくと

おおきなアンコウが提灯をかざしてゆったりと泳いでおりました。




背中には
その小さな明かりで守っているかとでも言うように
たおやかな女性を乗せていいるようです。


眠っているのか、まどろんでいるのか、


アンコウの背中で、
母に抱かれた子供のようにやすらいでいるのは
あの時、あわになって消えた、人魚のむすめ。


おともなく、波もない、
深海のかすかな海流の中を
どこへ運んで行くと言うのか...


なきがらか?


いえ、いえ。
たしかに静かに息づいておりますれば..。



あの折り


チリジリに散った娘の体の泡を

アンコウが大きな口をあけてひと粒残さずに吸い込みました。


広々とした腹の中で丸めては吐き出し、又吸い込んで丸めては吐き出し...



最後に一つの大きな泡にまとまった時
ポイと背中に放り挙げ、

それ以来背負って泳いでおりますル。



深い海の底でありますれば、
暗さに、
娘が怖がらないようにと

眉間の間から出した触角にあかりをともし


娘の傷が癒えるのを待つ親のように


ゆったりと、ゆったりと
海の底を散歩しておりまする。




ゆったり...ゆったりと...

静かな海流の感触が、

娘の体をなでては過去へ流れますル。


ヒュロヒュロヒュロと耳元で
瞑想曲を奏でながら....



いつか娘が声を取り戻し


月の海原で
再び歌う時がきますれば.....



いえ、近い内にきっと歌うでしょう。



その時は
皆様にその歌をお届けする事ができると思います。



海の神様が
あの娘の命を拾って



海で一番優しいアンコウに託したのですから。

今はこれだけ....





03.3.00

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