君が望む永遠
âge(アージュ) 2001年

発売当時は一大ブームを巻き起こし、しばらくの間業界の話題を独占し続けたと言ってもいい有名作です。実際にやったことがなくても、タイトル名だけならほぼ知らない人はいないでしょう。
発売から5年以上が経ち、今や「一時代前の名作」という位置づけにもなり、完全に時代に乗り遅れた形になったワタクシですが、いつかは一度はやってみたい気になる作品でした。

今回私が購入したのは初回のCD-ROM版で、XPに対応という形にはなっていません。ですが、少なくとも自分のPCの場合は、ほぼ問題なく動作しました。ごくたまにボイスが乱れたり、雨のシーンのアニメーションの際にメッセージ送りがぎこちなくなったりというのはありましたが、どうしても気になるというほどのものではありません。
むしろ、2001年製にしてはグラフィックの発色が鮮明で、線の輪郭は若干粗いもののそれほどでもなく、今のゲームと比べてもあまり遜色ないのではないでしょうか。画面効果についても、前述の雨のアニメーションとか、あとは主人公が目を潤ませたときに画面がじわじわっと滲む効果とか、なかなか凝っていて楽しめました。
あと、システム面で言えば、できればメッセージスキップに未読・既読の判別をつけてほしかったところです。選択肢の分岐上、特に序盤の方は何度もプレイすることになるので。

原画はところどころクセが見受けられるものの、ほぼギャルゲー標準。女の子のキャラデザについては概ね満足できました。
立ち絵とイベントCG間で若干キャラの印象が異なるところがあるのが残念。立ち絵の方がバリエーションもあって表情豊かなので、こっちの方が好みでした。

音楽は全体的にオーソドックスで、これまたギャルゲー標準仕様という感じ。しかし、クオリティーはなかなかのものだと思います。出しゃばり過ぎず、ゲームの進行の中によく溶け込んでいました。
ボイスは、北都南さん以外はみんなこれまで聞いたことのない声優さんばかりでしたが、それぞれ適材適所で良かったと思います。特に、メインヒロイン涼宮遙を演じた栗林みな実さんの独特の愛らしい声が印象的でした。この方、本作以外ではそれほど出ていないようですが、もったいないですね。…それとも、ここでの遙役があまりにハマってしまい、イメージが固定化してしまったからなんでしょうか??

ストーリーは、最初はごく普通の学園もののような感じで進みますが、これは物語としてはほんの序盤。第1部と第2部に分かれていて、第2部が本編と呼ばれるものです。あまりここで語るとネタばれとなってしまい面白くありませんので、これ以上書きません(もっとも、あまりに有名なので知ってる人も多いと思うが)。とにかく鬱ゲー鬱ゲーと聞かされていたわけですが、とうとうこうしてフルコンプした後でも、どこか鬱ゲーなのかよくわかりません。鬱ゲーに対するとらえ方の違いなんでしょうか。進めていて気分があまり良くない部分はところどころはあるものの(あるルートは特に…)、かといって鬱まではいきませんでした。
エンディングは細かいバッドエンドも含めるとトータル14。感動的な物語もあれば、複雑な気持ちを抱かせる結末、さっぱりとした展開、そして時には胸くそ悪くなるストーリー、…など、様々なテイストの物語が用意されているのは、評価できます。シナリオライターが複数いることもその理由のひとつでしょう。
その中でも一番力があったのは、やはりメインである遙・水月シナリオあたりを担当した人ですね。主人公・鳴海孝之を中心とする複雑な心理の動きを掘り下げる描写は引き込まれますし(もっとも、彼が思い悩むさまがあまりにうじうじしてるため、ヘタレなどと嫌われたりもするのですが…)、あと、何と言っても印象に残る名セリフや、言い得て妙の一言をテキスト内にはめ込むのが本当に上手です。素人ながらもせこせこ小説本なんかを書いたりもする私などからしたら、思わず嫉妬してしまうセンスですね。今までそれこそいろんな作品に触れてきましたが、これほど心に直接響く名言を多く聞かせてくれるものはなかったです。

シナリオの充実度はもとより、単に感動物語という以外にもいろんな意味で(良いにしろ悪いにしろ)センセーションを巻き起こす要素を内包した作品です。さすが大きな話題になっただけはあります。単純な泣きゲーに留まらせず、いろんな方向性を持つシナリオを用意してくれたのは良かったと思います(って言っても、限度があるけどさあ…)
一度やってみる価値は十分あるでしょう。



ヒロイン別感想

涼宮遙
現代ではもはや稀少種(?)と思われる、おっとりオドオド系かつ純粋な女の子。こういうタイプの子に弱いのは、男性心理のひとつの普遍的な傾向なんでしょうね…。しかし、そうわかっていてもやはり惹かれてしまいます。「守ってあげたい」タイプの典型。ちょっと困った時や照れた時に、両目がくりっと寄るのが個人的に大きなチャームポイントでした。
彼女は非常に衝撃的で数奇な運命をたどります(有名なので知ってる人も多いと思うが)。そして、それが本作品全体での大きな核ともなっています。ぜひ何も予備知識なしでプレイしてみて下さい。


速瀬水月
遙とは対照的な、明るくさばけたスポーツ少女。遙とはもともと親友で、最初は彼女の孝之への想いを後押しする形になります。…と、ここまで書けばその後の展開が何となく予想できるような感じですが。
孝之も遙もそれぞれ辛かったでしょうし、単純に比較はできませんが、、本作で一番辛い思いをしたのはこの水月ではと思います。一見強そうで実は非常に弱くて脆い彼女の内面がよく出せていました。
遙には悪いですが、どうやらこの水月シナリオがトゥルールートな感じ。特にラストあたりの素晴らしい叙述には見事に寄り切られてしまいました。


涼宮茜
遙の妹。ゲーム序盤ではただうるさいだけのガキンチョなのが、成長とともにグッと大人っぽくなります。このイメージギャップで転ぶ人もいるのではないでしょうか。私的にも、キャラとしては一番お気に入りです。容姿とかももちろんですが、秘めた思いをぶつけたいのだけど我慢して一人耐えているような健気な姿が、見ていていじらしくもいたたまれなくなります。
シナリオはトゥルーエンドがひとつ、アナザーエンド(とでも言うのか?)がひとつ、そしてバッドエンドが二つ。アナザーエンドの方はちょっと呆気に取られるかもしれません。


大空寺あゆ
孝之と同じアルバイトで働く、ちっこい爆弾娘。顔を合わせればケンカばかりで、多少うんざりするかもわかりませんが、こういう子が実は意外な一面を持ってたり、というのはお約束。今でいうところのツンデレキャラになるかと思いますが、序盤から終盤を通しておおよそ「ツン」で、あくまで「デレ」は小出し小出しにくるところが逆に良かったです。
シナリオはメインの遙や水月ルートとはまた一味違う切り口で、進めていて楽しかったです。あゆのキャラクターをフルに生かした極めて「らしい」仕上がりになったと思います。
ただし、ラストは不満。


玉野まゆ
孝之がバイトするレストランに新たに加わった新人さん。いくらなんでもキャラ造りが過ぎるだろーというくらいコテコテな個性の持ち主で、第一印象は何だかなあという感じでしたが、不思議なことに付き合っていくうちにすっかり慣れてしまい、かわいさすら感じられるようになりました。もっとも、人によっては嫌気がさすでしょうが。
というわけでキャラは悪くなかったものの、シナリオ的には今ひとつ。


天川蛍
えー、こう言っては失礼ですが、第一印象は「キワモノ」的キャラクター。性格はよく、サブキャラとしてはいてもいいですが、この子メインのルートでいったいどんな話を展開させられるのか怪訝に思いながらのスタートでした。で、お話はこれまた意外な方向に。
やりたいことはよくわかりましたし、これはこれでアリだとは思うものの、せっかくのシナリオ構成を生かしきれなかった気がします。
エンドはひとつだけ。実は、限りなくバッドエンドっぽいです。


穂村愛美
孝之を秘かに想い続け、影ながら応援している母性あふれる准看護婦さん。…この子のルートに入る前のプレイヤーの印象というのは、概ねこんなところでしょう。私も好感を持っていましたが、本シナリオをやることによって、全てがひっくり返ること請け合いです。何となく噂は聞いていたのでそれなりの覚悟をもって挑んだわけですが、それでも想像以上の展開でした。
少なくとも、本作のメインである遙、水月、茜シナリオあたりの雰囲気が好きでそのイメージを保ちたい人は、やらない方がいい、というか、「絶対」やらないで下さい。これしか言いようがないですね。


星乃文緒
「あ、彼氏ぃ〜。どうも〜」という北都南さんの声が印象的な、セクシー系看護婦さん。こんな彼女(?)ですが、一応専用ルートがあります。…とはいえ、バッドエンドがひとつだけ。もったいないですね。どうせなら、ちゃんとしたシナリオにしてほしかったです。

ヒロイン別ネタばれ感想