大阪府教委への申入書

2002年2月6日
大阪府教育委員会
 教育長 竹内 修 様

                           「日の丸・君が代」強制反対ホットライン・大阪
                           呼びかけ人:池田直樹、井上二郎、上原康夫、
                                   岡村達雄、空野佳弘、武村二三夫、
                                   菱木政晴、松浦悟郎(50音順)


                      申し入れ書


 2000年度卒業式・入学式以降、貴委員会は府立学校長に継続して次のような指示を行っています。@卒業式・入学式での「国旗・国歌」については「望ましい姿(=壇上に国旗掲揚、式次第に『国歌斉唱』の明記、全員起立して斉唱)」で行う。Aあらかじめ教職員には「国歌斉唱」時に起立するよう指導し、司会者は起立を促す「一同起立」以外の不要な発言はしない。B式当日の学校敷地内でのビラ配布、看板・ポスター等の設置を認めない。C式当日教育委員会事務局員を全校に派遣する。このような府教委の「指示」に連動して、高槻市教育長は、「児童生徒が全員起立して歌えるよう指導を徹底」し「いわんや教職員は率先垂範して起立・斉唱することは当然のこととして指導を徹底」するよう通知し、枚方市教委は、「教職員の起立については、起立しない場合、再度、起立の指示を行う」と通知しています。私たちは、一昨年5月、上記の「指示」が児童・生徒、保護者、教職員の「思想・良心の自由」を侵害することを指摘し、府教育委員会に「指示」を撤回するよう強く申し入れましたが、府・各市教委は具体的な措置を何ら講じようとしていません。
 一昨年7月には卒業式で「国歌斉唱」時に退席した高槻市の教員が「文書訓告」を受け、9月には、入学式で「国歌斉唱」を強制する式への「参加の自由」や「起立・不起立の自由」を保障しようとした校長(2名)や教職員(3名)の言動に「文書訓告」や「厳重注意」という「処分」が強行されました。また昨年、豊中市教育長個人が、「教育長」名で公務を装って、卒業式での「君が代」の強制に反対であることをアナウンスした小学校教員を「刑事告発」するという暴挙を行いました。
 このような強制の強まりの中で、昨年の卒業式において、高槻市で次のような人権侵害事例が起こりました。@「君が代」の事前指導で、在日韓国人児童への差別事件。音楽の授業で「君が代」の練習があり、4年生の在日韓国人の子どもが耳をふさぎ、歌わなかった。その後、教室に帰ってクラスメイトから「なぜ歌わないのか」とせめられ、言い合いになり、その時「韓国人」という差別発言を受けたA6年生の在日韓国人の子どもと日本人の子ども5名が、卒業式に「日の丸と君が代はやらないでほしい」と校長に申し入れた。卒業式前に担任が子どもたちを個別に呼び出し、圧力をかけた。担任は、一人一人に対して「式の時はどうするの?」「親には相談したの?」「退場以外にも、友だちとして協力できることはほかにいっぱいあるでしょう?」と恫喝を加えた。B修了式当日、卒業式に起立しなかった5年生の子ども全員を残して、校長が「この本(学習指導要領)には、『国旗・国歌は尊重するように』と書いてある。」「国旗・国歌が必要ないと思う人、必要だと思う人、わからない人」のいずれかに手を挙げさせた。また、枚方市でも「国歌斉唱」で着席している子どもたちを叱りつけ起立を強制した事例などが報告されています。

 「国旗・国歌法」審議の中で、政府は明確に「強制ではない」と約束したはずです。「思想・良心の自由」の尊重を約束したはずです。「強制ではありません」と式に参加する子どもたちと保護者に伝えることは、人権尊重の最低限の措置ではありませんか。人権保障が、「処分」の対象とされる現状は以ての外です。また、在日外国人生徒への「配慮」については、何の具体措置もとられていません。

 私たちは、貴委員会に対し繰り返し以下のことを強く要求します。

(1)「望ましい形」等学校行事の内容にまで介入する「指示」を今すぐ撤回すること。

 私たちは、貴委員会が昨年12月10日の臨時校長会において「望ましい形」での卒業式の実施をはじめとする一昨年と同様の各校の裁量権限にまで踏み込んだ「指示」を行いました。さらに、今年1月22日に行われた校長会主催のシンポジュウムでは、教育長及び教育次長が昨年の状況ではまだ不十分である旨を強調し、特に「国歌斉唱」時の「起立」状況を「より望ましい形」に近づけるよう強く「指示」したと聞いています。このような「指示」は、教育基本法を甚だしく侵害するものであり、昨年のような人権侵害事例を再発させ、拡大させるものです。今すぐ撤回すべきです。

(2)昨年の卒業式における高槻市や枚方市における上記の人権侵害事例についての見解を明らかにすること。また、かかる事例が再発することがないよう具体的な措置を講じ、各市町村教委及び校長に周知すること。

(3)「思想・良心の自由」を保障するために、以下の目的を実現する具体的な措置を講じ、各市町村教委・校長に周知徹底し、府民への広報を行うこと。

@良心に基づく「不起立・不斉唱」によって子どもや保護者が不利益を受けないことの保障

 卒業式や入学式に参加するすべての子どもたちと保護者に対して、「強制ではない」ことを周知すること。「国歌斉唱」の際、教職員を含めて全員が起立する中でも、退席したり、歌わない・座ったままでいるという積極的不作為の行動をとる自由が、憲法によって保障されていることを周知すること。
 また、このような行動で「目立つ」ことによって、校長や教師による嫌がらせや報復、周囲の子どもたちによる排除や「いじめ」(高槻の事例を参照していただきたい)、右翼からの嫌がらせや企業による就職差別など、事実上の不利益がが予想される場合には、そのような不利益をを受けないよう教育委員会として責任ある対応を取ることを約束すること。

A子どもたちが国歌斉唱への参加・不参加を自発的に決められる環境の保障

 文部科学省や教育委員会には、「日の丸」「君が代」のように信条の問題として意見が分かれる場合、校長や教員を通じて、子どもたちに相互の意見について教え、自ら考え、「自己判断」できる十分な教育を保障する義務があります。「君が代」に対して意見の違いがあり歌わない人にもきちんと根拠があり「歌わない自由」が保障されること、互いに対立する意見であっても尊重されることを説明する義務があります。また、式に参加する保護者にもそのような「指導」を行っていることを公式に説明する責任があります。
 このような責任と義務を誠実に果たすべきことを明らかにし、各市町村教委及び校長に周知徹底すること。

(4)貴委員会が「検討」を約束した在日外国人児童・生徒に対する「配慮」を早急に具体化すること。

 これまでの話し合いの中で、貴委員会は「『思想・良心の自由』は尊重されるべきものであり、学校教育のすべてを通して保障されるべきものである」と回答されています。また、在日外国人生徒に対する「特別の配慮」の必要性についても「検討する」ことを約束されました。しかし、在日外国人生徒への「配慮」については、何の具体措置もとられないばかりか、「配慮の必要性」について校長に周知することさえ未だに行われていません。

(5)「不起立・不斉唱」を理由として教職員が「処分」される状況の中で、子どもたちや保護者に強制されない自由を保障することはできません。「日の丸・君が代」強制のための教職員「処分」を行わないこと。不起立・不斉唱を理由とした教職員「処分」は有り得ないことを確約すること。

              <申し入れに対する府教委の回答>

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