橋下知事による学テ市町村別データ公表を糾弾する!
         
         公教育を破壊する和田中モデルの導入に反対!
                                   
2008.10.29


 橋下知事は、公務員と労働組合バッシングの次は教育にターゲットを絞り、大阪の教育に全面的な介入を始めた。橋下知事が大阪維新プログラムの「重点政策」にあげた習熟度別学習や大阪版学力テスト、「大阪まなび舎事業」などは、この秋から実施されつつある。橋下知事と府教委は、今後10年の教育ビジョンである「大阪の教育力」向上プラン(素案)をまとめ、年内完成、2月府議会での予算化、2009年度から本格実施に移そうとしてしている。
 大阪の子どもたちは、全国学テで正答率の高かった福井県、秋田県、富山県と比べて、教育条件(教員一人当たりの生徒数、生徒一人当たりの小学校費等)においても、生活条件(家庭実収入、完全失業率、生活保護率等)においても極めて厳しい状態に置かれている。全国平均でも、ほとんどが最下位に近い悪条件に置かれている。橋下知事はこのような条件があることも、これをどう改善するのかを一切語らない。教育の根底にあるものを放置したままで、「絶対に学力を上げる」と強調する。しかし、それらはすべて「自己責任による競争」の渦の中にすべての子どもたちを投げ込む体制をつくるだけのことである。
 今、大阪の教育は重大な危機を迎えている。早急に橋下知事と府教委の描く教育政策の本質を暴き、反対の声を強めなければならない。橋下「教育日本一」戦略にストップをかけなければならない。


1.「学テショック」を利用して教育に不当介入し始めた橋下知事

(1)橋下知事の市町村別データ公表は、教育への不当介入そのもの
 10月16日、橋下知事は、ほとんどの市町村教委別データを公表した。公表に際する記者会見では、すでに多くの市町村教委が「自主的判断」で公表していたものであり、知事として強制したものではないと何度も強調した。これは全くのデマである。9月以降橋下知事は、「公表・非公表で補助金に差をつける」として、補助金格差付け強行の姿勢を示し、市町村教委に恫喝を加え続けたのである。多くの市町村教委の公表は、橋下知事による不当介入の結果であって、「自主的判断」なるものでは全くない。しかも、来年度は「私の政治判断での公表にさせてもらいたい」と、市町村別データの全面開示に強い意欲を示した。
 歴代知事の土建事業への莫大な予算投入とくれてやりによって、大阪府の学校関係予算は全国最低レベルにある。「統計で見る都道府県2008」によれば、教員一人あたりの生徒数は全国4位(小学校)と5位(中学校)で非常に多く、逆に生徒一人あたりの小学校費は43位、中学校費は45位と劣悪である。橋下知事は、それに輪をかけ35人学級の実現さえやめようとした。秋田の好成績は、急激な少子化に対応して全国に先駆けて少人数学級を実現したことが大きな要因であると言われている。確かに全国学テの平均正答率の順位にはさまざまな要因がある。しかし、まともに予算も出さず、教育条件も改善せず、教員の支援も行っていない大阪府知事が、その責任を全部教員と教育委員会に転嫁しようとしていることを許すわけにはいかない。
 さらに注目しなければならないのは、行政が市町村教委の判断とは独自に公表したと言うことである。行政による政治介入を既成事実化したことである。橋下知事は、今回の市町村教委への政治介入方式を、今後の橋下「教育改革」の典型的な手法にしようとしている。会見の中で橋下知事は、「様々な調査をこれから府教委は市町村教委に対して要求していかなければならない」「今回のようなやり方以外は思いつかない」と、言い放った。今後も橋下知事の動向に注目し、政治介入の一つ一つに抵抗し、それを許さない状況を作り上げていかなければならない。

(2)教育委員会主導の「緊急対策」に従うかどうかで徹底した予算の差別化
 橋下知事は、学力テスト公表と同じ日に、教育委員会と大阪府の連名で「『大阪の教育力』向上に向けた緊急対策」を発表した。これが、橋下知事が子飼いの教育委員を使い、教育委員会の権限で市町村教委と府立学校を従わせ、教育政策を実行させる最初のものである。
「緊急対策」の柱は、反復学習と「PISA型学力向上策」として導入する藤原和博氏の「よのなか科」を取り入れた実践、携帯ゲーム機の活用、「学校支援地域本部」の設置、「次の管理職を育てる集中研修」、幅広い分野から公募する新たな校長任用システムなど、どれも橋下知事が藤原氏の和田中モデルを取り入れた政策ばかりである。しかも、30億円の教育振興基金を設立し、橋下「改革」を率先して進める市町村教委に「交付金」をだすとしている。まさに橋下「改革」に従うかどうかで、徹底した差別化を図ろうとしているのである。

(3)子ども無視の橋下知事の本質が暴露〜私学助成の削減反対を訴える高校生に「今の世の中は、自己責任がまず原則。誰も救ってくれない」
 橋下知事は17日、第二京阪道路の用地買収に応じなかった門真市の北巣本保育園の畑を行政代執行で強制収容した。「収穫まで待ってほしい」という園側の要望を無視して、園児たちが育てたサツマイモを無惨に引き抜き、畑を一瞬にして更地にしてしまった。橋下知事は、園児の大切な体験の場を破壊したことに批判が高まると、「所有者は園児たちの涙を利用した」と逆ギレして保育園側を攻撃した。
 第二京阪道路は、国直轄事業として府が今年度210億円を負担しており、財政危機の中でも聖域として維持されたものである。橋下知事は、「こちらが要望してつくってもらおうとしている道路であり、(国に)まけてほしいとはいえない」と、あれだけ職員の人件費、府民の社会保障や医療を削っておきながら、公共事業に関してはこの発言である。今回の「イモ刈り取り」騒動は、橋下知事が、何を優先して、何を軽視いているか、はっきりと浮き彫りにした。
 さらに23日には、私学助成を減らさないでと訴える高校生に「なぜ、公立を選ばなかったんだろう?」「私学はあなたが選んだ」「高校でなくても学ぶ機会はあるはず」と浴びせ、ついには「保護されるのは義務教育まで」「日本は自己責任が原則」と完全に切り捨てた。橋下知事の掲げる「教育日本一」の本質が、学力競争に勝ちぬけない者を「自己責任」として切り捨てることであることを示した。許すことができない発言である。橋下発言を徹底して暴露し、彼の政策の本質を暴き出さなければならない。


2.橋下知事が全面的導入をもくろむ和田中モデル=公教育の破壊と市場開放の促進

 橋下知事の教育介入は、二つの方向から全面的に始まっている。一つは、9月12日に府教委が発表した「大阪の教育力」向上プラン(素案)である。これは、橋下知事の「重点政策」を取り入れた今後10年間の教育ビジョンであり、予算化の元になる方針である。もう一つが、自らの任命したた教育委員主導の「緊急対策」である。これは、藤原氏と蔭山氏、小河氏の主張をそのまま方針化したものである。「大阪の教育力」向上プランと「緊急対策」は、お互いに絡み合いながら、どちらも改悪教育基本法の具体化と橋下新自由主義を包括的に大阪の教育に持ち込もうとするものである。
 ここでは、直近の「緊急対策」の基礎になっている藤原氏の教育観と杉並区和田中での実践の本質を中心に暴露・批判していきたい。

(1)藤原「和田中モデル」を大阪に導入しようとしている橋下
橋下知事は、元和田中校長:藤原和博氏を大阪府教委特別顧問に委嘱した。藤原氏が和田中で実施した地域本部制と「夜スペ」は、文科省のモデル事業となり、全国へ拡大しようとしているものである。橋下知事は、早速これに飛び付き、全国に先駆けて和田中モデルを自治体レベルで実施しようとしているのである。藤原氏は、池田市で教員研修会の講師をし、池田中学校で「夜スペ」をモデルにした放課後授業を開始させた。11月からは大阪府内全域の校長・市町村教委を対象にした研修会を行おうとしている。
 府教委は、「おおさか・まなび舎」を9月から政令・中核市を除く200小学校(全528校)、政令市を除く129中学校(全291校)でスタートさせ、来年度は400校と200校に拡充、2010(平成22)年度には完全実施するとしている。保護者らでつくる和田中学校の学校支援組織「地域本部」にあたる「学校支援地域本部」を府内291中学校区に配置、「各校の取り組みの支援」に加え、学校のホームページづくりや部活動にも協力してもらうという。

(2)教育の市場開放を推進する杉並・和田中
 藤原氏は、大阪に何を持ち込もうとしているのか。それは和田中で彼がやったことを見れば一目瞭然である。
@教職員と保護者が協同して学校を支えるPTAを廃止し、それとは性格を異にする学校支援地域本部を導入したことである。地域本部には、学校教職員は関わっていない。和田中では、「地域本部主催」ということで現場教員とは無関係に、子どもたちに関わる様々な政策が学校に持ち込まれた。「地域」の名の下に私的営利企業・塾などが地域本部に入り込み、教育現場を営利活動の場としてきた。さらに今年度からは、地域本部を受け皿にして寄付金を集める教育基金も始まった。これは、学校と教育内容への私的営利企業の介入と支配の始まりである。今後、地域本部が強化されれば、「学校経営」や教職員の人事に影響力を持つのではないかという危惧がでている。大阪では、今のところ和田中ほど強大な権限と予算を握っているわけではないが、塾受け入れの窓口として機能し始めている。
 しかし、杉並区から約560万円の補助金を受け全面的に支援されている和田中地域本部だが、その実態はマスコミ報道とは逆に、いい加減で杜撰な組織実態である。杉並区の公認団体であるはずだが団体許可の書類がない。できてから4年間も規約がなく「夜スペ」開始時にアリバイ的に作成した。メンバーは藤原氏の独断で任命され、任期も選考基準も何もない。しまいには、杉並区からの補助金や「ドテラ」や英検コース、「夜スペ」の参加費等の収入がどのように使われているのか、全く不明なのが実態である。巨額の使途不明金の存在に保護者・地域には疑心暗鬼が広がり「地域本部のおかげで地域がバラバラになった」との声も聞かれるようになっている。

A和田中は、文科省から地域運営学校(コミュニティースクール)に指定されており、学校運営協議会が学校運営や校長の人事権に絶大なる権限を持っている。その委員長に藤原氏もなっていた。昨年藤原氏は運営協議会委員長として、自分の後任校長に同じくリクルート社から田代氏にすえた。学校運営協議会委員には、蔭山英男氏、全国「よのなか科」ネットワーク事務局長のキャリアリンク社長(大阪に本社)、ニンテンドーDSのソフト会社社長などが名前を連ねている。藤原氏は、彼らと一緒になって地域本部を入り口にして営利企業を公教育に呼び込んだのである。
 和田中の学校運営協議会メンバーは、今度は大阪に乗り出してきた。藤原氏は大阪府教委の特別顧問。蔭山氏は大阪府教育委員。(株)キャリアリンクは、藤原氏の「よのなか科」や地域本部制を強力にバックアップし、大阪でも昨年から府教委の新任教員や総合的な学習担当教員を対象にした研修会の講師として呼ばれ、府教委に急速に接近している。ニンテンドーDSを念頭に置いた携帯ゲーム機の活用も和田中そっくりである。
 
B地域本部が引き込んだ営利企業はこうだ。「都立の進学重点校や私立の中上位校を狙う夜の特別コース」(和田中での保護者向け案内)、いわゆる「夜スペ」。進学塾「サピックス」が、教材開発から講師派遣まですべてを請負った。塾業界が「夜スペ」に反発したことからもわかるように、「夜スペ」はサピックスの営業活動の一環であった。「夜スペ」は、子どもや保護者の要望から生まれたものではない。藤原氏がサピックスと組んで、トップダウンで決めたものであった。「夜スペ」の最初の募集は希望者ゼロだった。そのほかにも塾講師が授業をする英検対策・「英語アドベンチャーコース」、ニンテンドー・DSを使った「ドテラ・ジュニア」、など、杉並区と和田中を巡って教育の市場化が一気に進んでいるのである。

C「成績上位層」に限定した「夜スペ」や「英語アドベンチャーコース」の導入は、子どもたち・保護者・地域に差別、選別、分断を持ち込んだ。「夜スペ」の授業を受けるためには、「入室テスト」を受け合格しなければならない。いったん合格すれば格安で進学塾の授業が受けられ、夕食まで保障される。子どもたちの間に「成績上位層」でなければ、特別配慮を受けられないという差別意識を植え付けることは明らかだ。誰でも参加できる「土曜寺子屋」(学生ボランティアなどの補助を受けることができる自習)を実施していたとしても、それは格差教育を見せつけるものでしかない。
 「夜スペ」は、開始から半年あまりですでにほころびが見え始めている。和田中校区の町会長は、「義務教育の場に民間塾の授業を持ち込み、生徒間較差をあおるほか、夜間通学の防犯体制を周辺地域に要請するなども異常としか思えない。」と民間塾を活用した生徒集めを批判した(「世界」2008年4月号参照)。現在「夜スペ」は、このような批判にさらされて変更を余儀なくされている。今年度から「入室テスト」をなくさざるをえなくなり希望者がどっと増えた。サピックスだけでは対応できなくなり、対策として「家庭教師のトライ」も参入させようとしたが、今のところうまくいっていない。学校での格差拡大と差別化、子どもの間での優越感と劣等感の拡大、そして利潤追求をめざす民間塾の参入競争の中で、和田中改革と「夜スペ」は行き詰まり始めている。

(3)「吹きこぼれ対策」を根幹とする藤原氏の危険な教育観
 藤原氏の和田中「改革」の基盤となった教育観は極めて危険なものである。藤原氏は、2003年4月、リクルート社営業統括部長から東京義務制初の民間人校長として和田中に赴任した。学区制を廃止した杉並区の中で和田中の「営業成績」=進学実績をあげるために、学校改革を行っていった。校内の会議を「経営会議」とし、学校全体を効率的に目標を達成するための経営体にした。そのためには塾との連携に何の躊躇もいらなかったのである。
 藤原氏は、「夜スペは教育の機会均等を促す」「上の子を引っ張り上げることで、全体の力が向上する」と豪語しる「吹きこぼれ」対策重視である。「夜スペ」は、習熟度別指導の究極の形態で、「吹きこぼれ」対策そのものであった。
 「吹きこぼれ」対策とは、もっと深く学習したいという子どもたちの多様な関心・意欲から生まれたものではなく、「成績上位層」への進学指導そのものである。すなわち受験準備教育とテストの結果重視の教育。それは、「学力」の意味を根本的に変質させ、それを受ける子どもたちだけでなく学校教育の内容全体を変質させていくものである。
 大阪では、人権教育を土台にして「ひとりはみんなのために みんなはひとりのために」という「集団主義教育」が行われてきた。それは、子どもたちの生活場面だけでなく学習場面においても重視されてきた。学習内容がすぐに定着する子も時間のかかる子もお互いに協力し合って、集団として高まっていくことをめざしてきた。我々は、このような教育の中でこそ、子どもたちの成長がはかられるのではないかと考える。


3.橋下知事を先導役に改悪教育基本法の具体化を進める文部科学省

(1)改悪教育基本法の理念が、教育政策と教育内容に反映される新たな段階
 教育基本法が改悪されて2年。文部科学省は、教育3法の改悪をはじめとしてその具体化を着々と進めてきた。2007年から全国学力テストの実施。2008年3月には、新学習指導要領を告示し、改悪教育基本法の「教育の目標」に沿った大幅な改訂が行われた。道徳教育の目標の中に「伝統文化の尊重」「愛国心」「公共の精神の尊重」を盛り込み、「学校の教育活動全体の要」と位置づけることで全教科で道徳教育を推進することを明記した。政府は、2008年7月「教育振興基本計画」を閣議決定し、今後5年間の教育施策をまとめた。教育予算拡大と教職員増の具体的目標は削る一方で、「世界トップの学力水準をめざす」「学習指導要領の実施と学力テストによる検証」「道徳教育や伝統・文化に関する教育の推進」「教員免許更新制の実施」「メリハリある教員給与体系の推進」「不適格教員の厳格な人事管理」「新しい職の設置と学校運営の改善」等を掲げた。今後、政府の「教育振興基本計画」に沿って各地方自治体の「教育基本計画」が策定される(改悪教育基本法17条により)。「大阪の教育力」向上プランは、大阪版「教育振興基本計画」に相当するものである。
 改悪教育基本法の理念が、教育政策と教育内容に反映され、現場での具体化の段階に入ってきたのである。

(2)地方自治体主導で、なし崩し的に加速する新自由主義的政策
 文科省は、橋下知事を先導役に、なし崩し的に新自由主義的政策を加速させている。全国学テの市町村別公表に慎重だった文科省が、橋下知事の公開要請を機に一端容認する姿勢を示した。そのとたん、秋田県や宮城県、浜松市などでも雪崩を打って公表の動きが広がった。鳥取県南部町教委は、全国で初めて学校別結果まで公表するに至った。歯止めがなくなりつつある事態に文科省は危機感を持ち、橋下知事が市町村別データを公表すると、すぐさま批判のコメントを出し押さえにかかった。
 一方で文科省は、各自治体の「自主的公表」によって競争原理をはたらかせ、全国学力テストを国家教育戦略にそって学校をコントロールする装置として機能させようと目論んでいる。しかし、他方で地方自治体の独自の動きによって、文科省は今後自らの主導権と国家統制機能を揺るがしかねない事態に進むことを極度におそれているのである。文科省の右往左往ぶりは明らかである。

(3)大阪の地で橋下「教育日本一」戦略に反対する声を強めていこう!
 教育基本法改悪の実質化と新自由主義の加速が進むにつれて、今後教育現場では矛盾が一層深まり、それへの抵抗も一段と顕在化していくことは明らかである。東京では、都教委の10.23通達以降、「日の丸・君が代」強制と「君が代」不起立処分に対する頑強な抵抗が継続されている。大阪でも、全国で先頭を切って始まった教職員人事評価制度=評価育成システムによる教職員のランク付けと評価結果の給与反映に反対して集団訴訟が起こっている。全国学力テストに対しても、愛知県犬山市の不参加を始め、各地で批判と抵抗が続いている。
 橋下知事との対決は、全国で進む教育基本法改悪の実体化を阻止する取り組みの一翼を担うものである。各地の運動と結びつきながら、大阪の地で橋下「教育日本一」戦略に反対する声を強めていかなければならない。

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