「スミぬり裁判」の第6回口頭弁論(公判)報告


                           ひらかた「君が代」訴訟=スミぬり裁判をすすめる会 
                                                     松田浩二



 5月18日に大阪地裁で「スミぬり裁判」の第6回口頭弁論(公判)が行われました。
 昨年の6月25日に枚方市民30人で住民訴訟を起こして、早いものでもうすぐ1年になります。この裁判迅速化の時勢に、ほとんど絶望的と見られた住民訴訟を成立することができて、そして1年も裁判を維持することができたということが、正直驚きでもある今日この頃です。

 今年の1月27日(第4回)から本案(不起立調査)の審理に入ることになって、まずは仕切り直しで、原告、被告が本案についてもう一度主張をし直し、原告は12点の求釈明。被告は「東京地裁ピアノ伴奏職務命令適法判決」に便乗。3月23日の第5回弁論で、原告は「東京地裁判決」を批判し、今後の弁論予定を提示。被告は求釈明に対して、うわべだけの紋切り型の回答。
 そして、原告は5月18日(第6回)、7月6日(第7回)、9月2日(第8回)の3回にわたって、枚方市教委が2002年卒・入学式で行った「7点指示」にもとづく「君が代斉唱時の不起立教職員調査」の違法性について主張することになっていました。

 そこで、5月18日は予定に従い、学習指導要領の法的拘束力について(準備書面6で)主張しました。
http://www.kcat.zaq.ne.jp/iranet-hirakata/newpage68-junnbisyomenn(6).htm 
(準備書面6)

■ 原告の出廷は27人。傍聴は9人。総勢36人で、原告からの発言は3人。

 発言回数はのべ5〜6回。今回もにぎやかで楽しい法廷になってしまいました。(あの)裁判長が笑うようになりました。(なんのこっちゃ)
 笑われているのか、楽しんでいるのか、定かではありませんが、裁判官に限らず、私たち原告も、せめて法廷の短い時間ぐらいは、スリルとサスペンス、はらはらどきどきを楽しみながらの真剣勝負もいいと思っています。本人訴訟の役得というものでしょうから。
 ぜひ、傍聴にいらっしゃってください。ごく普通の裁判を見慣れている人には(そういう人はめったにいないとは思いますが)、楽しめること請け合いです。

 被告(代理人)は、相変わらず「沈黙は金」路線を堅持しています。「答える必要はありません」「書いてあるとおりです」このふたつのセリフだけで報酬を得ています。これは私たちをあしらっているのではなくて、ほんとうにそう言う以外にないという状況なのです。しゃべればしゃべるだけボロが出て不利になるという境遇だということです。
 私たちはもちろん「金の斧(おの)」路線で正直一路に怒りを爆発させています。そこで、まずこちらが予定の発言を終えたあと、続いてふたりの原告が「なぜ被告は応えないのか」等とすかさず追い打ちの発言をして、被告が応えないので、いきおい矛先が裁判長に向くことになり、裁判長は「だから・・・私がそう言っているわけではなくて・・・被告の主張がそういうことだと・・・」と苦笑いを浮かべながら収拾に努めることになるわけです。(でも、なんとなく楽しんでいるみたいですよ)

 もちろん、こういったやりとりと判決とは直接に関係するわけではありません。しかし、毎回、私たちの意思を積極的に示し、市教委の主張の矛盾やいい加減さを追及したり、質問したりしていくことは、とても大切なことだと思っています。根本は気迫です。
 裁判官は学校現場の実状や市教委の横暴の実態を知りません。証人尋問(証拠調べ)をするかどうかという判断の決め手になるのは、つまるところ、裁判官がどれだけ私たちの訴えに興味を示すか、ということになるだろうと思います。訴訟指揮にも大きな影響を与えて、思わぬ展開を誘い出すのも、こういった(文書ではない)実際の口頭での弁論だということもあるでしょう。

■ さて、今回の弁論(公判)ですが、主張と確認事項は以下3点です。

1.今回はまず、被告が「7点指示」とそれに基づく「不起立調査」の「正当性や適法性」を主張するための内容的根拠として唯一、金科玉条のようにあげている学習指導要領についての一般論を展開しています。

 「準備書面(6)」では、国は「教科の基準」についてしか授権されておらず、地方自治である教育に関する事務に対しては「指導・助言」として意思表明する以上のことはできない。学習指導要領は最高裁判例では大綱的基準としての「法的拘束力」しか持ち得ず、文科省や教委がいつも引用する伝習館高校事件最高裁判決「学習指導要領は法規としての性質を有する」については、そのあとが「・・・有するとした原審の判断は、正当として是認することができ」となっており、是認している原審(福岡高裁判決・1983・12・24)を見なければいけない。
 その福岡高裁判決は、はっきりと「旭川学テ最高裁判決」を踏襲していて、そこでは「大綱的基準を定めたものと認められ」「項目を文理解釈して適用すべきものではなく」「学習指導要領は相当柔軟な性格をもつものと解される」と判示しています。
 したがって、一細目(国旗・国歌条項)までが全面的に法的拘束力を持って強制力を発揮し、処分や調査の正当な前提となりうるなどと主張しているのは、文科省、教委だけだということです。
 そして、「旭川学テ判決」の趣旨からしても、「教師に対し一方的な一定の理論ないしは観念を生徒に教え込むことを強制するような」ものは法的拘束力も有しないし、教育の不当な支配になるので、国家の信条的中立性を逸脱して「国旗・国歌項目(条項)」は無効であると私たちは主張しています。
 つまり、判決文ふうの言い回しでいえば、「7点指示や不起立調査には理由がない」ということになると言っているわけです。「理由」というのはもちろん合法的で合理的な根拠という意味です。理由がない「指示」や「調査」はもちろん違法だということになります。

 さて、次回はいよいよ勝負です。「無効な国旗・国歌項目(条項)」にかこつけて、「7点指示」を出し、さらに(条例違反でもある)「不起立調査」をした枚方市教委の「自己責任」を追及することになります。
 そして、教育長による「意図的な思想調査」を立証し、ひいては教育長の証人尋問を実現させるための「証拠」も提出する予定です。

※ なお、今回も、西原博史さんの執筆されたものや、「京都君が代訴訟」の最終準備書面など引用させていただいています。また、今回、引用しなかったけれども、「北九州ココロ裁判」はもとより、「東京ココロ裁判をすすめる会」の方にも資料内容の確認等、お世話になっています。その他、多くの訴状、意見書、勧告書など参考にさせていいただいています。ありがとうございました。

2.前回(第5回)弁論のときに、被告準備書面(求釈明への回答)の、「7点指示は職務上の命令と位置づけることができる」という文言を巡って論議になったが、そのさい、裁判長は「法律的には『位置づける』は要らない。命令だということ」と解説したが、それについて、口頭弁論調書に記録してもらいたいと要求しました。
 すると、「これはあくまでも被告の主張として・・・ごにょごにょ・・・被告はいかがですか?」「書いてあるとおりです」 まったく!
 あげく「そういうことを言った記憶はありません」とシラを切りました。ようするに、原告と被告が主張をしあっただけのことで「私(裁判長)は関係ない」というわけです。(裁判長はわかるでしょ、わかってほしいなぁ、という顔をしています)
 こちらとしては「書面でまた主張する」と述べておきました。(これは予想の範囲です)

3.今回、3点の再求釈明をしています。(準備書面の最後をご参照ください)
 開廷後、冒頭、裁判長から再求釈明に対して釈明するかという質問が被告に対してなされましたが、被告(代理人)は即座に「応える必要はありません」と予定通りの返答をしました。
 私たちは、そんなことは意に介さず、3点の趣旨を説明し、被告に釈明(回答)するように要求しました。
 特に、2点目の求釈明は重要です。わたしたちの「なぜ国旗・国歌だけが徹底されなければいけないのか?」という質問に対し、被告は前回の釈明(回答)で、「指導要領の教科、すべての領域で指導している」と答えています。
 それならば、本件の「不起立調査」と同じレベルで教員ひとり一人の授業内容などについて指示、命令し、あるいは個人調査をしている例を多数挙げよと迫っています。
 これによって、「国旗・国歌(日の丸・君が代)」だけが突出して徹底されていることが浮き彫りになるでしょう。

 なぜ「日の丸・君が代」だけをここまで執念深く徹底しなければいけないのか。その動機、理由が問題なのです。これが市に与えた損害をもたらす原因だから重要だと私たちは主張しています。
 そして、情報公開で明らかになっていることとして、02年(本件)の調査後、03年、そして今年04年と「不起立調査」(起立状況調査という名称に変わっています)では、「起立しなかった理由」の聴取は行わず、「氏名」のみの調査にとどまっています。(これについて、次回、証拠を提出するというと、裁判長は大変興味を示して、提出するようにと確認しました)

 03年も04年もほんとうならば、市教委は「起立しなかった理由」の聴取をしたかったはずなのです。けれども、03年の3月31日に私たちが住民監査請求を起こしたためにできなかったというのが真相です。さすがに「理由まで聞いたのはまずかった、違法かもしれない、やりすぎた」と思っているからで、法廷で02年の調査は「合憲、適法、条例違反じゃない」と突っぱねているわりには、身体は後ずさりしているというわけです。(もちろん、理由を聞かなくても、氏名の調査だけでも同じことなんですけどね)

 しかし、02年に起立しなかった「氏名」と「理由」を調査したことは事実です。なぜ「日の丸・君が代」だけをここまでやらなければいけないのか。この理由は、「学習指導要領に書いているから」では通りません。この「国旗・国歌」の項目だけがここまで個人調査を行っているからです。
 そして、その理由こそが、まさに、「国旗・国歌(日の丸・君が代)」が個人の思想・信条に関する問題だから、という以外にはないのです。
 そのことを百も承知だから、「思想に介入し、思想の自由を許さない」ために徹底的に強制し、統制しているという以外の理由を見つけることはほとんど不可能なことなのです。つまり「不当な支配」をすることが動機だということになります。

 私たちはこの「スミぬり裁判」を、たんなる「条例違反」で片づけるのではなくて、なんとか、学習指導要領の「国旗・国歌条項」の無効と、市教委の「7点指示」や「不起立調査」が憲法19条、20条違反にとどまらず、教基法10条違反の「教育の不当な支配」であるということを立証したいと望んでいます。

■ あと2回の弁論が組まれています。

 ・第7回口頭弁論  
  7月6日(火)  午後2時より 806号法廷
 
 ・第8回口頭弁論
  9月2日(木)  午後3時より 806号法廷

 私たちは次回準備書面(6月30日提出)に全力を傾けます。
 ご都合のつく方は、ぜひ傍聴をお願いいたします。

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