ひらかた「君が代」訴訟 訴状




                        訴  状

                                 2003(平成15)年6月25日

 大阪地方裁判所 御中

                   原告        (30名連記)          印



 当事者の表示     別紙の通り
 請求の趣旨      別紙の通り
 請求の原因      別紙の通り

 証拠方法       

   甲1号証   枚方市職員措置請求書(写)
   甲2号証   平成14年度入学式の国歌斉唱時、起立しなかった教職員調査
          (中学校)(写)  
   甲3号証   平成14年度入学式の国歌斉唱時、起立しなかった教職員調査
          (小学校)(写)  
   甲4号証   平成14年度入学式の国歌斉唱時の起立状況について(通知)(写)
   甲5号証   平成14年度入学式の国歌斉唱時の起立状況について(報告)(写)   
   甲6号証   平成13年度枚方市立学校卒業式実態調査(写)          
   甲7号証   平成14年度枚方市立学校入学式実態調査(写)
   甲8号証   平成13年11月1日 定例校長会議事録(写)
   甲9号証   教学指第1234号 部分公開決定通知書(写)
   甲10号証  平成14年度第7回定例校長会指示伝達事項(メモ)(写)
   甲11号証  枚方市教育委員会の「7点指示」の撤回を求める集会決議(写)
   甲12号証  枚方市教育委員会の「7点指示」の撤回を求める集会決議の回答について(写)
   甲13号証  2003年3月7日 枚方市教育委員会への「7点指示撤回」の申し入れ(メモ)(写)                
   甲14号証  枚監査第39号 住民監査請求の取扱いについて(通知)(写)     


  請求事件

 訴訟物の価額 金950000円      
 貼用印紙額   金  8200円




               当事者の表示

原 告 〒573−○○○○  枚方市○○○○○
                   松田 浩二     
原 告 〒573−        (以下29名連記)


被 告 〒573−8666    枚方市大垣内町2丁目1番20号
                   枚方市長 中司 宏

          (※3ページ目と4ページ目が「当事者の表示」です。)



                請求の趣旨

 一 被告は、訴外中野一雄に対し、金75100円、これに対する2002(平成14)年5月1日から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金および本件訴訟費用を請求せよ。
 二 訴訟費用は被告の負担とする。
との判決を求める。


               請求の原因

第一 当事者

 原告らは枚方市の住民である。
 原告らは、枚方市教育委員会が行った「平成14年度入学式の国歌斉唱時、起立しなかった教職員調査」のための、公金の支出・財産の管理に対し、2003年3月31日に、枚方市監査委員に監査を求め、同5月15日付、監査を「実施できない旨の通知」なるものを受けたが、監査の結果は同30日までに通知されていない。

 被告は枚方市長であり、枚方市の債権を管理する権限を持つ。(地方自治法第240条)


第二 事実

(1)枚方市教育委員会は、教育長である訴外中野一雄の権限によって、卒業式・入学式の「国歌斉唱時に起立しなかった」教職員を調査し、国歌「君が代」に対する、それらの教職員の思想・信条・信仰に関する個人の情報を、本人の意思によらないで収集し保管した。
 ア)2002年3月から4月にかけて、市立小中学校の平成13年度卒業式で「国歌斉唱時に起立しなかった教職員」の氏名を調査した。
 イ)同年4月末までに、「平成14年度入学式の国歌斉唱時、起立しなかった教職員調査」を行い、それらの教職員の氏名、起立しなかった理由を調査した。

(2)訴外中野は、この調査のために、文書用紙、文房具などの物品、文書作成ならびに印刷のための諸機材、電話回線などを含む枚方市の財産を使い、また教育委員会事務局職員らに使わせた。

(3)被告は、訴外中野および教育委員会事務局職員らの、この調査のための役務にたいし、その給与を減額することなく支給して公金を支出した。
 被告はまた、この思想・信条・信仰を調べられた教職員、調査の影響を被る児童、生徒、市民らに、償いを負う立場に立った。


第三 この調査の違法性(自由な思想・信条と個人情報の保護)

(1)枚方市の個人情報保護条例(平9条例24)は、同市の行政機関は原則として「思想、信条及び信仰に関する事項に関する個人情報の収集・保管・利用をしてはなら」ず、これらの情報を収集・利用等できるのは、法令・条例の特別の定めおよび同市「情報公開・個人情報保護審議会の意見」によるときに限っている(第7条2項)
 同条例はまた、個人情報の収集は、その「収集目的および記録項目を明らかにして、当該個人から直接収集」することを原則とし、@法令・条例に特別の定めがあるとき、A本人の同意があるとき、B報道等によりその情報が公にされているとき、C個人の生命・身体または財産の保護のため緊急かつやむを得ないと認められるとき、D「審議会」の意見を聴いて公益上必要があると認めたときを、その例外としている。(第8条)
 枚方市教育委員会は、これらのどの要件も充たさないで、この条例に違反して、この調査を行い、教職員の思想・信条・信仰に関する個人情報を収集・保管した。

(2)日本国憲法第19条は「思想及び良心の自由」を保障している。また同第13条は「個人として尊重」され、「自由及び幸福追求」の権利は最大限に尊重されなければならないことを謳っている。国家がこれらの権利を保障することは、思想・良心、またプライバシーといった個人の領域における内容の決定権が個人に存することを意味している。
 したがって、外見からは知ることができない、個々人の内心状態を知るための思想調査や「踏み絵」に類する行為の禁止は重要な意味を持っている。国家が「思想・良心の自由」を保障する以上、国家が個々人において異なる思想、良心の内容に介入し、あるいは特定の思想や価値観などを強制することは許されることではない。
 枚方市教育委員会が行った「平成14年度入学式の国歌斉唱時、起立しなかった教職員調査」は明らかな「思想調査」であり、日本国憲法第19条ならびに第13条に違反する思想・良心の自由の侵害、プライバシーの侵害である。これは国際人権規約にも違反している。

(3)枚方市教育委員会の行った「平成14年度入学式の国歌斉唱時、起立しなかった教職員調査」は教育基本法第10条に違反した「教育の不当な支配」である。国家を象徴する国旗や国歌、つまり、「日の丸」や「君が代」に対してどのように思い、どのような態度を取るのかということは「個人の思想・信条に関わる問題」であって(大阪鯰江中学校・日の丸裁判大阪高裁判決・1998・1・20)、(2)において述べたように、「思想・良心の自由」を保障することは、子どもたちの思想・良心形成過程にも国家や教育委員会が介入しないことを意味している。すなわち「子どもが自由かつ独立の人格として成長することを妨げるような国家的介入、例えば、誤った知識や一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制するようなことは憲法26条、13条の規定からも許されない」(旭川学力テスト事件最高裁判決・1976・5・21)のであって、枚方市教育委員会による教職員の思想・良心の自由を侵害する行為は、児童・生徒の思想・良心形成過程への介入をもたらさざるをえず、教育への不当な支配となっている。
 

第四 違法な事務のための財務

(1)枚方市物品管理規則(昭54規則35)は、「物品は、適正かつ効率的に使用しなければならない」義務を職員に課している(第10条)。違法な事務に物品を使うのは、事務の違法に原因して違法であるとともに、それ自体を同規則が禁じ、市の財産を失わせる違法な財産の管理である。

 (2)また、同市職員給与条例(昭23条例103)は「職員が勤務しないとき」は、その勤務しない時間につき給与額を「減額するもの」としている(第51条)。職員の違法な役務に対し給与を減額しないで支給することは、役務の違法に原因して違法であるとともに、それ自体を同条例が禁じ、市の財産を失わせる違法な公金の支出である。

 市民の財産は、市民の福利に使うことに、その値打ち(目的)がある。


第五 枚方市の損失と被告の責任

 訴外中野および被告は、違法に人権を侵す事務のために、財務法規に違反して違法な財産の管理・公金の支出を行い、原告らが監査を請求する前1年以内に、少なくとも75100円以上の財産を枚方市に損失させた。

(1)訴外中野は、文書用紙、文房具などの物品、文書作成ならびに印刷のための諸機材などの市民の財産を、同市物品管理規則の定めに背いて、目的外に不適正に費やすどころか、人権を侵す事務に違法に使い、また教育委員会事務局職員ら使わせ、枚方市の財産を失わせた。

(2)訴外中野は、中野および教育委員会事務局職員らの、その勤務に専念しないばかりか、人権を侵す役務に対し、同市職員給与条例に違反して、教育長の人事管理責任を果たさず、その職員らの給与を減額することなく被告に支給させて公金を違法に支出させ、枚方市の財産を失わせた。

 なお、枚方市が被った損害の内容・額を原告が知り得る範囲は、監査の結果を知らされていないこともあり、ごく限られるが、被告は調べることができる。

 この訴えは、また、違法な財務行為による市の損失に対し、住民が監査請求手続きを経て求償義務の履行を求めるもので、対象にできる財務行為の行われた時期等を限られる。 しかし、被告市長および訴外中野は、枚方市に被らせた損失に対し、全体の奉仕者として、自ら民事上の責を果たすことができる。

 被告は枚方市を代表し、訴外中野に、この償いを求めなければならない。(地方自治法第240条)


 結 語

 よって地方自治法第242条の2第1項4号の定めにもとづき、請求の趣旨記載の判決を求める。  

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