平成15年(行ウ)第60号
2003年11月11日
大阪地方裁判所民事7部 御中
原告 松田浩二 他29名
被告 枚方市長 中司 宏
記
第一 「本案前の答弁」に対する反論の補足
1.「調査」の違法は、本件「財務行為」の違法の、要件
(ア)
被告は「本案前の答弁」で、恰も原告らが本件「調査」を「本案」として訴えているかのように言い做し(同「答弁」第2の2(1)C)、「本 案前」に却下を求める。しかし、原告らは言うまでもなく、この違法な、調査のために(a)「物品を使用」し、事務の従事に(b)「給与を支給」したことによる、損害の償いを訴外中野に求めることを被告に求めている。 (イ)
物品は、まさに「事務の遂行」(同B)の財産として使われる。この使用の、違法性が、本案で審理されるべきである。「調査」事務の違法性は、この使用の違法性の、ただ先行の行為ではなく、構成要件を成す(枚方市物品管理規則10条) (ウ)
給与の支給も、違法な事務の従事が「職務の遂行」(同C)か否か(市職員給与条例51条)を、本案で審理されなければならない。被告の、教育長の権限に関する答弁(同(2)、乙4号証)は格別として、請求が訴訟要件を欠くという答弁は当たらない。
2.物品の「使用」に対する教育長の責任(地方自治法170条2項4号)
被告は、物品の使用の権限は教育長にはないと答弁する(同(2)@、物品管理規則7条) しかし、同条によって物品管理の権限を各「課長」に委ねる収入役は、「使用中の物品」には権限を有しない(自治法170条2項4号括弧内)「事務のために物品を使う」教育委員会事務局の職員と職員を指導・監督する課長を、教育長は指揮監督しなければならない(「地方教育行政」法17条、20条)
3.「給与を減額せず支給」した違法に対する教育長の責任と「新」訴訟類型
「給与の支給・減額の権限は、本来的には」被告である(同A)ことは同意する。 この、職員が勤務しない時間の給与の減額は、これに対する人事管理と、一体である。 教育委員会事務局職員の人事は、同委員会が管理し(地教行法23条3号)、一部を、教育長に委ねる(枚方市教委事務委任規則)そして、本件財務行為の違法性の要件を成す「調査」事務は、教育長である訴外中野がおこなった。
「教育長」は、他の行政委員会の事務局長とは異なって、教育委員会の委員(議会の同意を得て市長が任命)のうちから委員会によって任命され、委員会の権限に属するすべての事務をつかさどる(地教行法4条、16条、17条。中央教育審議会の答申「今後の地方教育行政の在り方」98.1)
被告が本件「給与の減額」を怠った行為の違法は、訴外中野による違法な「調査」がその要件であり、これに対し、訴外中野が権限・責任を有する人事管理を違法に怠った行為と一体を成す。いわゆる市長部局の職員は給与を減額される同質の行為が、委員会事務局の職員ならこれを免れるような制度はありえない。 被告はこの損害の償いを、訴外中野に求めなければならない。(法律上、委員会が人事管理権限をもつ職員については、合議体の委員会が公費でこれを填補するわけにいかず、実質的に「委員会のすべての事務を統括し、事務局の職員を指揮監督」し、だから、原因行為者でもある訴外中野に求償することになるから、被告はこれに代位するべきである) なお、行政組織内部のこれらの責任の所在は、住民である原告らには難解であり、公の管理者の立場で被告の「協力」を必要とする。監査委員が原告らの請求に対し監査を怠ったことも一因をなしている。幸い「執行機関に、行為者に償いを求めることを、求める」類型に改められた制度を、被告の応訴にも、この困難の解消にも、適切に機能させる必要がある。
4.原因行為に関する補足
(被告の「本案」部分の答弁に対して)
(1)「平成13年度卒業式」についても、歴然と「調査」をおこなっている。被告は訴外中野の行為について「平成13年度卒業式」で国歌斉唱時に起立しなかった教職員の氏名を調査したことを否認し、「平成14年度入学式」に関する調査の際に、あわせて、氏名の報告を校長に求めたことはあると答弁する(「請求の原因第二」について(2)) もちろん「調査」と銘うった、また調査「票」を使う調査だけが「調査」ではなく、抽出「調査」も聴取り「調査」も調査であり、「氏名」は思想の「持ち主」を表わす「思想に関する」情報である。甲2号証・甲3号証 の「H13卒業式の起立状況」「確認者」の欄の記載内容は、卒業式において、「調査」が行われたことを実証するものである。 この情報の収集もまた、本件違法な財務行為の要件行為である。
(2)本件要件行為の「調査」は、憲法上あってはならない「行政による支配」。 枚方市個人情報保護条例7条は、個人の思想信条に関する情報を、@法令・条例が(別段に)定めるとき、A市情報公開・個人情報保護審議会の意見を聴いて(公けの利益のために)必要と認めるときを除いて、市の機関は収集・利用してはならないこととしている。 本件要件行為の「思想」情報の収集に対し、同条例に基づき当該教職員らが「削除」を求めたところ、訴外中野はこの収集が「正当」であることを、つぎのように説明している。(甲22号証・決定理由説明書) @法令等の「定め」は、法令等の「趣旨・目的から、収集等できると解される」場合をふくむ。 A従って地方教育行政法が定める教育課程の事務等のための収集は、「法令等の定め」に基づく。 「法令」がその一般規定性から、「趣旨・目的等から解する」必要がある事情は、一般論として当然ある。ただ、人の「情報」は、ほとんど、その人の「属性」である
(最高裁2小判決
03.9.12参照)とくに「思想」は人の精神そのものであり、その「自由」の保障は、共同生活の基本条件である。その、とりわけ行政機関による収集・利用は、抑制的でなくてはならない。 第1に、だから例えば枚方市条例は、法令等で「定め」ない個別の事案は、その趣旨等を第3者機関(情報公開・個人情報保護審議会)の合議で検討することにしており、現に、別件ながら個人情報の扱いについて、教育委員会は平成10年度から13年度までに合計7件の諮問を行っている。 また、法令に定めがある場合においても、具体的な諮問を行っている事例が存在している。 第2に、地教行法の規定は、教育行政事務に関する教育委員会の「職務」を定める。 この規定を、その職務に「必要」な情報の収集・利用を「法令が解禁する趣旨」と解したら、およそ全ての事務で行政機関は「必要」な情報を収集・利用できる。条例が市の機関に、抑制を求める存在意義を失くする。 審議会が個別の事案を、また、条例を議会が代議する民意を、2重に蔑ろにする専横である。
第二 被告は事実の認否と求釈明への答弁を速やかに行うべきである。(結語)
「第一」で述べたとおり、原告らの請求は、「平成14年度入学式の国歌斉唱時、起立しなかった教職員調査」という原因行為が、「枚方市物品管理規則」および「枚方市職員給与条例」が求める趣旨・規定に違反した違法・不当な財務会計行為であることを明らかにし、原因行為の持つ重大な違法性が、同時に上述の財務会計行為の違法・不当性を決定する不可分の構成要件であることを明確にしている。 したがって、被告が求める「本案前に却下を求める答弁」は、原告らの請求の本旨を誤解した、きわめて失当な答弁であると言わざるをえない。 被告は速やかに、原告が「準備書面(2)」において求めた事実の認否と求釈明への答弁を行うべきである。
以 上
添付書類
甲21号証
教学指 第412号 決定理由説明書 |
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