どこまでも続く広島県教育行政の暴力−−唖然とする広島県人事委員会裁決
     広島県府中市立小中学校(全16校)校長への不当処分取り消し請求を棄却
                                                 2003.8.31 井前

 広島県人事委員会は、8月20日、2000年度入学式で「君が代」斉唱指導を行わなかったとして「戒告処分」を受け、その処分の取り消しを求めていた校長9人(16人全員が人事委に提訴したが7人が「取り下げ」に追い込まれている)に対し、請求を棄却する裁決を行いました。あり得ない不当な裁決です。報を聞いて、唖然とする他ありませんでした。

法的にも許されるはずのない「処分」−−市教委の処分拒否に県教委が直接介入・強行

 地教行法上でも、市立小中学校の設置者である市教委による「処分内申」に従って県教委が「処分」決定手続きを行うことになっているにもかかわらず、広島県教委は府中市教委の「内申」抜きでの処分を強行しました。校長16名に対する「処分」は、「法的手続き」さえまったく無視した暴力以外の何ものでもありません。
 現場の教職員も校長も「君が代」の斉唱指導は行わないと決定し、それを府中市教委も認めていました。政府・文科省が教職員や子どもたちに「日の丸・君が代」を強制する根拠として使ってきた、「学校行事における校長の決定権」という論理から言っても、「処分」を正当化することはできません。しかし、県人事委は今回の裁決で、「国歌斉唱を実施しないという校長らの非違行為に対し、市教委が何らの措置もとらず、内申も行わないことは人事管理上著しく適正を欠く」として、県教委の暴力的な措置を支持したのです。学校行事の内容を決定するのは、校長や現場の教職員ではなく、学校の設置管理者である市教委でもなく、県教委や政府・文科省であるということです。国家が命ずるままの教育以外は、すべて「非違行為」であり、法的な手続きを無視して国家が「処分」や排除を行っても、正当であるということになります。

教育基本法「改正」を先取りした広島県教委と人事委

 府中市立小中学校の全校長が、「処分」取り消しを県人事委に提起した直後、「新しい教育基本法を求める会」は、次のような内容を含む「新しい教育基本法へ6つの提言(要望書)」を政府に提出しています。
「今日、普通教育(小・中・高校)に関する行政の重要部分が委任されている教育委員会は、3,300余の市町村に細分化されているため、機能不全に陥っている事例が随所に見受けられます。こうした無責任体制から脱却するためには、国のもつ権能と責任を明確化することに加えて、細分化され過ぎた教育委員会機能のうち重要なものを都道府県の教育委員会に集約させる施策が必要です。新しい教基法に右の趣旨が盛り込まれ、それに連動して教育関係の法規と慣行に改善が加えられれば、知事(教育委員の任命者)、都道府県議会議員(教育委員の任命に法的根拠を与える権能者)、都道府県教育委員会(それぞれ5名からなる合議的執行機関)の三者間の協力関係は、今までにない密接なものとなるでしょう。」(新しい教育基本法を求める会「新しい教育基本法へ6つの提言−21世紀を拓く子供たちのために─(要望書)」2000年9月18日)
 上記要望が実現するように、教育における国家や県の「権能」を教育基本法に明示せよというものです。教基法「改正」を要求し、「つくる会」教科書を子どもたちに押しつけようとしている彼らは、府中市立小中学校校長への「処分」が教育基本法及び関係法令に抵触すること、広島県のような暴力的な権力による教育介入を全国に徹底するためには教育基本法を「変える」以外にないことを、はっきりと認めています。

「処分」取消訴訟に向けた全国からの激励と支援を

 私たちは、人事委への申し立てで勝利できるものと権力に対して甘く考え、行政や右翼による激しい攻撃の中で闘ってきた方々への支援ができていなかったことを反省せざるをえません。
 支援する会と弁護団は、9月中にも「処分」取消訴訟を提起する方向で検討中だと聞きます。広島への政府・文科省及び右翼団体等一体となった攻撃の中で、闘いを継続するには極めて大きな困難を伴うことは、想像に難くありません。しかし、教育への国家権力の自由な介入と批判者排除の自由を獲得しようとする教育基本法「改正」の動きが強まる中で、府中市の闘いは、教育の権力犯罪に反対し抵抗している全国の教職員や市民に元気と勇気を与えています。
 簡単な決断でないことも外部からの勝手な物言いであることも承知の上で、私たちは、当事者の皆さまが「処分」取消訴訟へと進まれることを強くお願いするものです。私たちも、私たちにどのような支援ができるのか検討し、支援者を広げていくための取り組みを進めたいと思います。

                              もどる