子どもの権利条約と「日の丸・君が代」の強制(1)

          子どもの意見表明権、参加権は保障しなかればならない!



 子どもの権利条約は、1989年国連総会で全会一致で採択されたものです。「子どもを独立した人格として、人間の尊厳の尊重が貫かれており」子どもたちの権利保障の前提として、あらゆる差別の禁止を定めています。それは、「子どもを権利の享有主体、権利行使の主体」と位置づける画期的なものでした。日本でも子どもの権利条約は、1994年に批准しており、「憲法に準ずるものとして重く扱わなければならない」(佐藤幸治「憲法」)ことになっています。子どもの権利条約違反に対しては「適用違憲に準ずるものとして扱うべき場合もあり得る」と憲法違反の可能性も出てくると解釈されています。日本の学校の中で、当然その内容が教職員の中で周知され、子どもたちに大切なものとして教えていかなければなりません。学校運営の基本の一つに位置づけられなければならないものです。

 しかし、日本国内、とりわけ学校現場では、子どもの権利条約の意義も内容も十分に学習内容になっておらず、子どもの権利条約が正当に適応されているとは言えません。現在の卒・入学式における「日の丸・君が代」の扱いにおいて、「子どもを権利の享有主体、権利行使の主体」と規定した子どもの権利条約が無視され、子どもの人権が踏みにじられる事態が進行しています。昨年、札幌弁護士会は、子どもたちへの「日の丸・君が代」強制に強い危機感を表明し、札幌南高校校長に「子どもの権利条約違反」の勧告書をだしました。
                                     札幌弁護士会の「勧告書」全文

 ここでは、学校での「日の丸・君が代」の強制にかかわる条文を取り上げます。皆さん、子どもの権利条約が卒・入学式の過程で正しく適応され、子どもたちの人権が保護されているかどうか、調べてみてはどうでしょうか。



子どもの意見表明権、参加権は、保障されなければならない

第12条(意見表明権)

1.締約国は、自己の見解をまとめる力のある子どもに対して、その子どもに影響を与えるすべての事柄について自由に自己の見解を表明する権利を保障する。その際、子どもの見解が、その年齢および成熟に従い、適正に重視される。

第13条 (表現・情報の自由)

1.子どもは表現の自由への権利を有する。この権利は、国境にかかわりなく、口頭、手書きもしくは印刷、芸術の形態または子どもが選択する他のあらゆる方法により、あらゆる種類の情報および考えを求め、受け、かつ伝える自由を含む。

2.この権利の行使については、一定の制限を課することができる。ただし、その制限は、法律によって定められ、かつ次の目的のために必要とされるものに限る。
(A)他の者の権利または信用の尊重
(B)国の安全、公の秩序または公衆の健康もしくは道徳の保護

子どもの意見表明権、参加権を保障するためにしなければならないこと
 第12条は、子ども自身にかかわるあらゆる事項について「子どもの最前の権利」(第3条)を守るために、子ども自身の権利として意見を表明する機会を保障することが不可欠であることが定められています。特に、教育現場での子どもの自己決定権の行使を重要したものです。
 札幌弁護士会「勧告書」には、子どもの意見表明権、参加権を保障するために国及び自治体、学校などの子どもに関する関係者に対して3点の義務を指摘しています。卒・入学式で、「日の丸・君が代」が実施されようとしたとき、以下の点が子どもたちに保障されていなければ、子どもの権利条約違反です。

1.機会保障義務
 子どもが意見表明や参加を要求する場合には、その機会を十分に保障しなければならない。

2.誠実応答及び説明義務   
 子どもが意見表明を行った場合には、これに対して、誠実に応答する義務を負う。特に、その意見が、大人の側の意見と異なる場合には、子どもが納得するように説明すること。

3.意見尊重義務
 表明された意見については、その年齢や成熟度を考慮し、「適正に重視」する。

「適正に重視」(due weight)とは、「出来るだけ実現するように積極的に努力する義務」のこと
 大人が、子どもの権利を一方的に考慮するだけでは不十分であり、子ども自身が自らのかかわる問題について意見を表明し、大人がそれを「適正に重視」することが重要です。「適正に重視する」(due weight)とは、「子どもにかかわる事項を決定するにあたって、表明された子どもの意見を、その表明がなされた一連の経緯・状況などをも十分にふまえて、そのうちに存する真の意義に沿って正確に把握し、そのようにして把握された子どもの意見に従った場合にその子どもに生じる様々な影響を、その子どもの『最善の利益』の実現という観点に照らして精査・検討し、その結果、子どもの自律そのものに取り返しのつかないほど害を与えることが予想される場合には、これに拘束されないとともに、それ以外の場合においては、その意見を、実質的なかたちであれ、出来るだけ実現するように積極的に努力する義務を負っていることを意味している」(弁護士・中川明)

子どもの権利行使は、身勝手とは違う。
意見形成のためにあらゆる資料を提供することも学校の責任

 学校現場には、「子どもの意見を尊重ばかりしていると、甘やかすことになる。」「身勝手な行動を許してしまう。」という考えが存在しています。この考えは、子どもの意見表明権が、子ども自身の問題の決定に際して、広く子ども自身の意思を反映させる適正手続きを求める権利であり、自分の生活や社会の条件に対して、子ども自身の意思を尊重することを求めた権利であることの認識が不十分であるといわざるを得ません。
 学校は、「甘やかし論」によって子どもの権利を制限するのではなく、子どもたちに、子どもの権利条約の意義と内容について正しく教えることが必要です。もし、子どもが自分の関わり事項について明確な意見を持っていない場合には、子どもが自分の意見を形成して、それを述べることができるようなあらゆる資料を提供することが学校の責任となるはずです。

国連「子どもの権利委員会」が日本の学校体制に対して厳しく「勧告」1998.5.27
 国連「子どもの権利委員会」は、1998年日本における子どもの権利条約の実施状況について『総括所見』を発表しています。その中では、日本の学校の中で「子どもの権利条約」が生かされていないこと、「子どもの意見表明権」が軽視されていることを勧告しています。日本政府は、学校での子どもの権利条約の徹底が国際的に要求されているといえます。

<主たる懸念事項>
13.本委員会は、差別禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)および子どもの意見の尊重(第12条)との一般原則が、子ども、特にアイヌおよび在日韓国・朝鮮人などの国民的および民族的少数者、障害を持つ子ども、ならびに婚外子など特にその権利を侵害されやすいグループに属する子どもに関する立法政策および施策に十全に組み入れられていないことを懸念する。本委員会は、・・・参加に関する権利の行使にあたって、社会のあらゆる側面において、子どもが一般的に困難に直面していること、特に、学校制度において困難に直面していることを懸念する。

<提案及び勧告>
35.本条約の一般原則、特に、差別禁止(第2条)、子どもの最善の利益(第3条)、および子どもの参加(第12条)が、政策論議および政策決定の指導原理とされるべきこと、ならびに、あらゆる法改正、司法的および行政的決定、および、子どもに影響を与えるすべてのプロジェクトとプログラムの開発と実施において適切に反映されるべきことを確保するために、さらなる努力が行われなければならないというのが本委員会の見解である。・・

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