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 ここでは、外国為替に関する解説書や外国為替に携わっている人たちが著述した古今の
書籍を、筆者の書評を添えて紹介します。
 ただし、筆者の評価や書評は、あくまで一読者の個人的な意見であって、むやみにその
購入を勧誘するものでも、その内容を誹謗・中傷するものでもありませんので、
あらかじめご了承ください。           (評価について)

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NO.4

タイトル

はじめてのテクニカル分析

〜相場の正しい捉え方〜

総合評価

★★

著者

林 康史 他

価格

適量度

★★★

出版社

日本経済新聞社

役立つ度

★★★★

読み物度

価格

2,500円(税抜き)

オリジナリティ

★★★

読みやすさ

読んだ版

1997年9月発行初版

今どき度

★★

長寿度

★★★★★


総評

 この本は、金融市場でテクニカル分析等で活躍されている人たちが、各々の専門分野について著述したものを各章として編集した形をとった、いわゆるオムニバス形式となっている。私もこのサイトで為替相場のテクニカル分析を行っている関係から、自らの勉強も兼ねて興味をもって読ませていただいた。

 しかし、「はじめてのテクニカル分析」というタイトルや「初心者の人でもテクニカル分析を学ぶことができるように編集されている。」という「はしがき」の記述にもかかわらず、金融市場で使われる専門用語が多用されている上に、あらかじめテクニカル分析について予備知識があることを前提に書かれたとしか思えない箇所も見受けられ、タイトルから受けるイメージとはほど遠い内容である。「はじめて」テクニカル分析に触れる人向けに書くのであれば、その定義や前提条件、なぜ金融市場でテクニカル分析が多用され、一般的になってきたか等々をもっと詳述すべきだと思うのだが、プロローグや第1章で簡単に触れているに過ぎず、初心者にとってはとっつきにくいものと映るように思われる。

 確かに、多くのテクニカル分析手法について詳しい解説がなされており、私も改めて勉強になった部分もあるが、タイトルに沿って、読者にテクニカル分析を紹介、理解してもらうことが目的ならば、そのようなテクニカル分析の定義や前提条件、有用性といった基本的事項にもっとページを割き、解説する分析手法はより代表的なもののみに留めるという方法もあったのではないだろうか。

 また、オムニバス形式をとったためか、各々の章に書かれていることはいずれも優れた内容には違いないのだが、ある章は特定の分析手法についてこと細かく解説しているかと思えば、ある章ではいくつかの分析手法を一覧表にして済ましているなど、各章によって書き方の差が激しい上に、前後の章により重複して書かれている部分もあるなど、全体としての統一感に欠けている。

 さらに、2,500円という価格も、初心者向けとするならば割高感は否めない。編者の林氏は既に為替相場を中心としたテクニカル分析に関する書籍をいくつか著しており、いずれここでご紹介しようと思うが、どれも2〜3,000円台の価格設定がなされている。以前からこの林氏の関わる書籍は「高い」というイメージを抱いていたのだが、今回もそのイメージどおりのものとなった。内容についても、今回は自分以外の識者とのオムニバス形式という違いがあるとはいえ、様々なテクニカル分析手法の解説という、相変わらずの内容といったイメージも拭いきれていない。金融市場でその道の権威ともいうべき人々の知識の結集としては優れた内容なのだが、何となくバランスの悪さが感じられることが惜しまれる書である。


 この書は、オムニバス形式を採用しているため、以後はいくつかの章についての書評を簡単に述べていくことにする。

・プロローグ〜第1章

 総評でも述べたように、はじめてテクニカル分析に触れる人のための本なら、この部分をより充実させ、わかりやすく書くべきだあったろう。テクニカル分析が過去の価格・時間・出来高といったデータから将来の相場を考えることという定義はわかるが、なぜ過去のデータから将来の相場予測につながるのかというテクニカル分析の前提条件についてほとんど触れられていない。また、テクニカル分析の分類についても、ここでいきなりテクニカル分析手法の名前を記したところで、「はじめての人」にはそれがどういうものか理解し難いのではないだろうか。さらに、テクニカル分析の歴史の部分も同様に分析手法の名前が説明なしに記されており、初心者には難解極まりないように思える。また、後半のイングランド銀行の調査の箇所は、この本にも執筆している田中泰輔氏の顧客向けのFAXレポートに記載されていたような記憶があるのだが...。

・第3章

 ロウソク足について解説している章であるが、前半はテクニカル分析について前提条件ともいうべき事柄や留意すべき点がきちんと書かれており、これこそプロローグか1章辺りで記すべきものであろう。後半はロウソク足の各種のパターンが一覧表になっており、解説もわかりやすい。

・第4章

 テクニカル分析の基本ともいえるトレンドラインについて、その重要性を示している点は評価できる。ただ、トレンドラインの引き方については、後の第9章のポイント・アンド・フィギュアの所でも別の観点から書かれており、はじめての人には、ちょっと混同しそうな気もする。

・第6章

 エリオット波動理論についての解説がなされており、その構造はよくわかる。私は以前から、実際の相場変動においてどの部分が第1波動や第3波動にあたるのかをいかにして明確に解釈するのかが疑問だった(実際、分析者によってこの解釈がかなり異なっているケースがある。)のだが、残念なことにこれについてはほとんど答えを得られなかった。

・第7章

 移動平均の分析手法が解説されており、私自身もこの手法で分析しているので、再度自らの知識を確認する意味もあって読ませていただいた。特に、移動平均線の期間の取り方の重要性については改めて勉強になった。

・第8章

 わずか4ページの章だが、5種類の分析手法が一覧表で紹介されている。しかし、ポイント・アンド・フィギュアは次章で詳細に書かれているために問題ないが、それ以外はどうやって作成するのか書かれておらず、この本の読者であろう「はじめての人」には不親切極まりない気がする。

・第9章

 おそらくこの章がタイトルの「はじめてのテクニカル分析」に最も適合した章であろう。ポイント・アンド・フィギュアの分析手法について、その由来や考え方を始め、作成方法が細かに述べられている上に、分析手法自体も具体例を付けてていねいに紹介されているので、はじめての人にも非常にわかりやすいと思われる。

・第12章

 RSIの考案者であるワイルダー氏へのインタビューの記録である。私もRSIを使って分析しているので、興味をもって読ませていただいた。しかし、本来インタビューというのは、できる限り多くの意見を相手に語らせるべきものであるにもかかわらず、ワイルダー氏の性格もあるのだろうが、次第に彼の解答がより簡潔になって、インタビュアーの質問の方が長くなっているのが残念でならない。

・第14〜15章

 これまで数多くのテクカル分析に関する書籍が発刊されてきたが、これらの章のように建玉法やシステム運用まで触れているものは少なかった。テクニカル分析で相場動向を予測するのみならず、これを駆使していかにトレーディングに結びつけ、収益を上げていくかが解説されており、この本の最も画期的な部分と言えよう。

・第16章

 この章の執筆者である田中泰輔氏は、市場における価格動向について、市場参加者の行動心理学の観点からの独特の分析で、既にいくつかの著書があり、いずれここでぜひともご紹介していきたいと考えている。ここでは、田中氏が過去の書籍で記してきた独自の分析が簡潔にまとめられている。しかし、ここで氏のユニークな分析のすべてが理解できるわけではなく、その一部を垣間見る過ぎない。ましてや雑多な感の否めないこの本のごく一部に留めておくのは誠に惜しい気がしてならない。この章を読んで興味の湧いた読者は、ぜひとも田中氏自身の著書を読んでいただきたい。