日本語で読めるアラブ文学



中世のアラブ文学

『アラビアン・ナイト』を全巻読破!などと目論んでいる人へ
 ★必見!あなたの一冊を見つける『アラビアン・ナイト適性診断』
 
 ★短評+創作『アラビアン・ナイトメア』 
 

・恋してるあなたに贈ります、イブン・ハズム『鳩の頸飾り』
 
 ★ハズム翁の「恋愛につける薬」 


近代のアラブ文学

ターハー・フセイン『不幸の樹』
   ★短評+創作
「ビューティー・コロシアム」
ナギーブ・マフフーズ『バイナル・カスライン』 

   ★研究ノート「美人の条件―月と石榴」 
タウフィーク・アル=ハキーム『おお、木登りよ』
 
      (授業と並行、仮訳コーナー)
 


現代のアラブ文学

  ・ふいめいが覗いた禁断の世界 アマール・アブダルハミード『月』





イブン・ハズム著
  黒田壽郎訳

『鳩の頸飾り』


  岩波書店



 11世紀コルドバの学者イブン・ハズムによる恋愛論。「愛の兆候」から始まり、「愛の成就」、「別離」、そして「忘却」という恋愛の一連の流れが、散文・詩・逸話によって美しく語られています。1000年前の、しかも地球の反対側の人も、恋をすれば考えることは一緒だったんだなぁ、と感心してしまいます。さらに、あなたの「恋」にもぴったりの詩を見つけることができるはず。ぜひ、おためしあれ。



ハズム翁の「恋愛につける薬」





ターハー・フセイン著
池田修訳

『不幸の樹』

河出書房新社、1978

女性は概して「整形もの」や「ダイエットもの」といったテレビ番組が大好きである。普段スタイル抜群の美女ばかりが映し出されるテレビ画面に、自分と同じようなコンプレックスを持っている人や、もっと悩みの多そうな人が現れるのを見るとほっとするというか、快感というか、とにかく興味をそそられるものらしい。絶世の美女ばかりが登場するアラビアン・ナイトのあとに『不幸の樹』を読む者は同様の感覚に襲われる。主人公ハーレドの最初の妻となったネヒーサが「一家が引き継ぎうる限りの醜悪な容姿」を持って登場するからである。


短評+創作
Beauty Colosseum

もしもネヒーサの娘が出演したら…

scene 1







ナギーブ・マフフーズ
塙治夫訳


バイナル・カスライン

河出書房新社


 ノーベル文学賞受賞者ナギーブ・マフフーズ(1911・12-)の代表作。カイロの旧市街バイナル・カスラインに住むある商人一家を通して、庶民の生活と彼らを取り巻く社会状況を赤裸々に描く。男性にとっては「性」の問題、女性にとっては「結婚」の問題が大きく取り上げられる。これを読んだとき、イランのタブリーズで知り合った28歳の女性Sさんを思い出した。4歳下の美人な妹は早々に結婚したが、Sさん自身はいつ「取り持ちのおばさん」がやって来るかと、常にやきもきしながら暮らしていた。現在でもイスラム世界の地方都市では男女の自由な出会いや交際が許されないことは多い。男女関係のメンタリティーという点で、この小説は「過去」を語るものではない。






アマール・アブダルハミード著
日向るみ子訳


MENSTRUATION

アーティストハウス、2002

 「月」とはmoonではなく、menstruation、つまり「月経」のことである。題名からすでに「禁忌」(邦題を『月』としたのは正解だろう)を感じさせる本書の舞台は、なんと現代のシリアである。
 しかし、本書は何もイスラム世界の禁忌を描いているわけでも、シリアの特殊な社会を批難しているわけでもない。夫との夜に満足できない若妻、友人の夫に迫る女性、「結婚」という制度に反発しつつも性に溺れる青年。願望、想念、現実。いずれにせよ、ここに登場するのは「私たち」の影である。
 月経とは女性が一番「女」であることを感じるときであり、また別の意味では、「女」を中断するときでもある。このひじょうに繊細な期間を描いた本書が、男性によって書かれたことを読了後に知り、衝撃を受けた。