おお、木登りよ

一幕(4)




奥さんを殺したいと思ったことはありますか? 


もちろんです。


なんですって?!


*   *   *




夫    : つまり、それが自然な感情だ、ということですよ・・・
       あんたは、自分の妻を殺そうと思ったことが一日たりともないというんですか? 


捜査官 : あなたは?・・・あなたは考えたのですか?


夫    : わしはあんたに聞いているんですよ・・・。


捜査官 : ですが、私があなたに尋ねていたのです。


夫    : あんたが先に答えてくださいよ・・・。


捜査官 : 質問するのは私で、答えるのがあなた…頼みますよ!役割を逆転しないでください!
       

夫    : わしはあんたがどう思うのか知りたいんですよ。


捜査官 : しかし、私はそれ以上にあなたがどう思うのかを知りたい。それに、私の公式な職務として
       知らなければならないんです…。頼みますよ…。答えてください…。 
       あなたは奥さんを殺そうとを考えたことがないのですか? 


夫    : あんたは、なぜ、わしにあいつを殺させたいんですかな。


捜査官 : 殺させたいわけではありませんよ…。言ったのはあなたじゃないですか…。


夫    : わしが何と言ったって?


捜査官 : あなたは奥さんを殺そうと思うことは自然なことだ、と言いましたね・・・。


夫    : ええ…。わしやあんたにとって自然なことですよ。


捜査官 : 私のことはとりあえず放っておいてください…あなた自身のことを話してください。


夫    : あいつのどこかにうんざりしたような時に、そういうことを考えるのは自然だと思うんです。


捜査官 : それでは、奥さんのどこかにうんざりしたんですね。


夫    : いや・・・。


捜査官 : 疑わしいものだ。


夫    : どうして疑うんですかね?


捜査官 : ついさっき、あなたたち夫婦をこの目で見ましたからね…。あなたたちが話しているのを聞きました…。


夫    : あんたは夫婦は話しちゃいかんと言うのですか。


捜査官 : ああいう会話はいけませんね。


夫    : 何がいけないんですか?


捜査官 : 問題は、あんなのはありえないということです。


夫    : それは違う…。ああいうことはどの夫婦の間にでも始終起こっていますよ。
       どの家でも…。誰にでもね…。たとえば、あんたにも…。 


捜査官 : 私にも!?・・・とんでもない!


夫    : ああいうことがあんたのところでは起こらないというのですか?!


捜査官 : あんなことがもしも起こっていたら、私は…


夫    : …あんたは奥さんを殺していた?


捜査官 : そんなこと言っていません!


夫    : いやいや、言ってしまいなさい!…正直に言ってしまいなさいな…。
       殺していたでしょう?
 


捜査官 : 誰を殺すって言うんですか?


夫    : もちろん、あんたの奥さんですよ。


捜査官 : お願いしますよ…。私たちは今、あなたの奥さんの話を…。


夫    : それであんたの奥さんは?


捜査官 : バハードルさん、頼みますよ!…私の妻のことはあなたに関係ないでしょう…。
       私の妻はまだ、家でぴんぴんしていますよ!
 


夫    : いいでしょう!…だったらあんたもわしを勘弁してくださいよ!…少なくともね!


捜査官 : 勘弁する?


夫    : つまり、言葉の通りですよ…


捜査官 : ということは、あなたは本当に奥さんを殺したんですね?


夫    : あんたには確信があるのかね?


捜査官 : ええ、だいたいね。


夫    : では、あんたはあいつの死体がどこにあるか知っているのかい?






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