Macbeth(Shakespeare) Milton-Keynes Theatre (17Oct02)
演出: Edward Hall
美術: Michael Pavelka

Cast: Sean Bean, Samantha Bond, Adrian Schiller, Barnaby Kay, Mark Bazeley,  他


REVIEW:

開演前にハプニング。まず、「技術上の問題で30分ほど開演が遅れます」とアナウンスが。ようやく開場してベルが鳴ったところで演出家のエドワード・ホール登場、お父さんにはさほど似ていないが可愛い感じの好青年だ。「この劇場はすばらしい機構を持っているのですが、それでもうまくいかないということがあるのです。実は、一度もドレスリハーサルをしておりません。 今からの上演が初めて全てを合わせる通しになります。皆さん同様、私も何が起こるか分からないのです。もし、万が一事故が起こったりした場合は進行を止めねばなりませんのでご了承下さい」
これはなかなかサスペンスフルな初日の幕開けである。

さてさて、予想通り全体のトーンは特に時代を設定しないモダン調。ショーンのマクベスは軍装の皮コートの袖が無いものを鎖帷子風のメッシュの上に羽織っており、いきなりセクシー系である。戦闘の荒々しさはお手のもの、マクベスが奥にあるバルコニーに反逆者の首を串刺しにして勝利をおさめる。驚いたのはショーンのアクセントが彼の地のままだったこと。当然、「標準語」によるブランクヴァースはしゃべれる人のはずだが、敢えてこのアクセントを採用したのは何故なのか。恐らくはマクベスのドラマをより自然で人間的なものとして提示する狙いなのかも知れない。ジュリアン・グローヴァー演ずるダンカン王が正統派の語りであったことからも推測できるが、はっきりとした効果はあったかどうか。個人的には、なんか保守的な物言いで嫌なのだが、ブランクヴァースのリズムと響きを楽しみたいという欲望があるため、少し残念だった。
ひょっとすると前述のトラブルの影響などもあるのかもしれないが、その割に「ヘンリー5世」で見られたような、はじけんばかりの生気と勢いが感じられなかったのも。

このマクベスはショーン・ビーンというひとりのカリスマ的存在を実にうまく活かしていると言えるだろう。活力に溢れ、スケールが大きく、そしてセクシー。マクベス夫人との実に親密な関係、上半身裸での三姉妹との絡み(どちらもベッドの使用がとても効果的)など、全てがこの運命的な男性の魅力を中心に回っているかのようである。ただ、すこーし引っ掛かるのは、これほど自信に満ち、野心的で有能な軍人マクベスが人殺しを前に逡巡する流れ。この男はあれほどに恐れおののくだろうか?またあれほど後悔の念に駆られるだろうか?というのが微妙なところである。後半に突き落とされる苦悩はすばらしいのだけど。
その他では白眉だったのがマルコムのキャラクター作り。痩せてひょろ長く眼鏡をかけたシラーの王子は、決して若々しい魅力に溢れる悲劇のプリンス、ではない。父王が殺されて身の危険を感じ逃げる下り、マクダフを試す下りなど実に狡猾で、弱そうな見かけと裏腹に一筋縄ではいかないものを感じさせた。対してグローヴァーは実にノーブルで気品溢れるダンカンを演じ、さらに門番役では180度違う面を見せて楽しませてくれる。

マクベス夫人のボンドは、ショーンの強烈な存在感を受けて立つ力強い演技で夫をリードする。始めはとても親密であったふたりの関係が、後半、マクベスが崩れて行くのと同時に崩れて行くのも なかなかはっきりと表現されている(前半を戴冠式で終わらせたのは、その後の転落を示す上でとても分かりやすい)。バンクォーのケイは、ちょっと若くないかなあと思ったのだが、化けて出る(笑)場面での凄みがよかった。この場面のライティングが効果的で本当にコワイ。

と、なかなかに面白い点はいくつもありよい舞台だったとは思うのだが、どうも見終わった後のカタルシスがいまひとつ…なのである。クリックしなかったというか…エドワード・ホールとショーン・ビーンという組み合わせにかける期待が大き過ぎたのだろうか?それとも、 ドラン&シャーのマクベス の存在が余りに私の中で大きすぎるのだろうか?それとも単にトラブルのためにまだ「完成」していないものを見たからなのだろうか?よく分からない。ただ、 現地リピーターのレポートによるとやはりどんどん変わっていっているようなので、まだ発展途上であったことは確かなようである。ロンドンに乗り込む際には相当いいものに練られていくのだろう。ざんねん。



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