◆◇◆ 週間 はぶちゃんまんが ◆◇◆






 はぶちゃんのクリスマス  2005年12月22日




サンタは絶滅の危機に瀕していた。


もともと希少種であるサンタは
進みつつある都市開発、それに伴う環境破壊、
そして心無い乱獲でたちまちのうちに姿を消した。

それでもクリスマスには稀に姿を現していたが、
何年か前からサンタはまったく姿を現さなくなった。

人々は囁く。
サンタは死んだ、と。
そしてクリスマスも死んでしまった、と。

今では年末の行事は大晦日だけとなった。






年末も押し迫った頃だった。
一通の手紙がはぶちゃんの元に届いた。
それは郵便屋さんがポストモドキにうっかり投函してしまったが、
ポストモドキ嫌気剤が塗ってあった。
それを食べかけたポストモドキがもがき苦しんでいる所へ
はぶちゃんは現れた。

「あんた、またここにいるの?
ここじゃろくに餌も取れないわよ」
「友達少ないもんねー」

と憎まれ口を叩きつつ、ポストモドキは手紙を吐き出した。
はぶちゃんはその表面に塗られた薬剤に気がついた。

(送り主は只者じゃ無いわね)

ぐったりとしているポストモドキの口に、
えさ代わりのいらないDMをぐいぐいと押しこみつつ
はぶちゃんは思った。
手紙の裏を見ると差出人の名前は無い。
はぶちゃんが封を開けると、
その中から昔聞いたことのある音楽が流れて来た。

「これは…、クリスマスソング!」

久しく聞かれない音楽だった。
はぶちゃんの脳裏にかつての光景が浮かぶ。

クリスマスツリー、ブッシュ・ド・ノエル、リースにカード…。
最後にクリスマスプレゼントを貰ったのは
いつだっただろう…。

はぶちゃんは中身を出した。
それはサンタからの手紙だった。

『はぶちゃんへ
はぶ公爵に囚われています。
助けて』

それだけが書かれた短い手紙だった。

「サンタさんが!」

はぶちゃんは叫んだ。
既に絶滅したと思われたサンタがはぶちゃんに助けを求めている。
罠の可能性もあるかもしれない。
だが先程聞いた音楽を思い出す。
たったあれだけの事ではぶちゃんに
クリスマスの情景を思い出させた。
その力は本物でしか起こす事は出来ないだろう。

はぶちゃんは再び手紙を読み返す。
力の無い弱々しい筆跡の文字が危機感をあおる。

「…行くわよ、私は」


はぶちゃんは立ち上がった。
それでもほとんど背は変わらないがそんな事はどうでも良かった。



クリスマス



<中略>




はぶ公爵はがっくりと膝をついた。

「ま、負けたワ…」

その目から涙が零れ落ち、地面にしみを作った。
はぶちゃんはその光景を見下ろし静かに聞いた。

「どうしてサンタを拉致したの?
サンタはみんなのものでしょう?」

はぶ公爵は苦しげに返事をした。

「クリスマスが憎かったのよ」
「憎かった?」
「この下まつげのおかげで別に悪い事もしていないのに、
みんな私を悪者と呼んだワ!
鬼ごっこの時はいつも私が鬼よっ!!
だから一度もクリスマスパーティには誘われた事は無いワ!
プレゼント交換って何よ、知らないワっ!!」

はぶ公爵の顔が苦しみの表情になった。

「どうして人は見かけで判断するの?
下まつげがあっても善い人はいるワっ!」

はぶ公爵は声を上げて泣き出した。
はぶちゃんはその肩に優しく触れた。

「ごめんなさい。そんなことがあったなんて。
そうね、見た目で判断してはいけないわね」

その時だ、空から微かな音が響いて来た。
それは軽やかな音だ。

二人は耳を澄ます。
それは徐々に近づき、そして姿を現した。

「あれは…」

二匹の立派な角のトナカイが、沢山のベルが付いた
金色のそりを引いていた。
そしてそこには先ほど解放された赤い服の人物が乗っていた。

「サンタクロース!!」

はぶちゃんとはぶ公爵は叫んだ。
サンタはにっこりと二人に笑いかけると手綱を引いた。
ベルが澄んだ音を立てる。

そしてゆっくりと空に昇っていくと、
光り輝くものが降って来た。

「雪だわ」

雲の切れ間から落ちてくる光の中で雪の結晶が輝き、
二人の周りを包んだ。
そしてその中を無数のプラナリアが金色に輝きながら、
ゆっくりと空を昇っていく。

「ありがとう、プラナリア。
あなた達の増殖の技がなければサンタは助けられなかったわ」

はぶちゃんが呟く。



永遠を約束するお好み焼きの大地に白い雪が積もる。
戦いの後の傷跡は白い雪の下でゆっくりと癒されるだろう。

そして時が経てばナニは再生し、捕食者もその姿を現すだろう。

双子の花が小さく生命の歌を口ずさむ。
それはまだ完璧ではない。
だが春になれば命の伊吹とともにこの世の隅々にまで
響き渡るだろう。
それまでは花柄ウサギが密やかに見守るだけだ。

そしてはぶちゃんは家に戻り、
何事も無かったかのようにクリスマスの準備を始めるのだ。

久し振りのその用意は以前と変わらない。
ただ違うのは、もう一つ席が用意されている事だ。
そこには下まつげの立派なあの人が来るはずだ。


寂しいクリスマスしか知らなかったあの公爵は、
今年初めて人とその日を過ごすのだ。




そして

全ての人に幸せなクリスマスを。











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