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Analog Science Fiction and Fact, July/August 2003
Novelettes
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The Fire and the Wind / G. David Nordley
主人公エイブラハム・ユーは、月軌道共和国レスキュー部隊の入隊後の訓練中に、教官である月独立運動の英雄マルチネス大佐や訓練仲間のクリスティンらとともに、緊急救援のため冬の南極の地表へと降下することとなる。月軌道共和国も参加した南極探査隊が遭難し、もっとも早く到着できるのが彼らだというのだ。しかし、これは単純な救助任務ではなかった。実はその南極探査隊は極秘のスパイ任務を行っていたのだ。彼らは敵側が到着するより先に探検隊の遭難場所にたどり着き、救助するだけでなくスパイ活動の証拠を消さなくてはならなかった。ユーたちは吹雪と寒さと慣れない地球の重力とに苦労し、ぎりぎりのところで探査隊の隊員たちを発見する。だが、そこに敵側の暗殺部隊がやってきた……。
評価A。約19000語。主人公の視点で南極探査隊救援ミッションを描きながら、月政府と地球側の複雑な対立の歴史の広がりまでを感じさせる作品。ハッピーエンドではないかと予想していたが、結末は厳しく現実的なものだった。月育ちの人間に地球の重力は厳しい様子がとてもリアルに描いてある。加えて南極という極寒の条件の下で、宇宙育ちの彼らがどう生き延び、どう探査隊を救出するのか、あるいはどう暗殺部隊からのがれるのか。メインの舞台は地球上でも、近未来宇宙SFといったほうがいいだろう。期待を裏切らない作品だ。
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The Meeting of the Pilgrims / Robert R. Chase
地球人たちが植民した惑星スカイランドにはすでに知的種族が住んでいた。高い台地の上方は生態系を改変して地球人たちが入植し、気圧の高い下方には異星人たちが暮らしている。何年か前、地球人の子供がさらわれ、地球人は代わりにチェンジリング(取り替え子)と名付けた異星人の一人を人質にした。その事件にかかわっていた主人公は呼び出され、異星人たちがチェンジリングと引き換えにさらわれた子供を返すつもりらしいことを知らされる。そこで、主人公や子供の家族や科学者、軍人らの一行は、チェンジリングとともに下方の世界へと向かう。惑星の自然は厳しく、旅は危険なものだった。彼らを待ち受けていたものは……。
約12000語。"The Changeling Hunt"(Analog誌1987年7月号)、"The Wellness Plague"(Analog誌1995年10月号)の続編らしい。とはいえ、それらを知らなくてもそれなりに楽しめる。上部だけ地球人にあわせて改造された惑星、植民者たちの社会構造など、物語の隅々まで興味深い設定が用意されているように感じた。匂いで意志を疎通する異星人との、危険ではあるが魅力的な世界の冒険はおもしろく読めた。ただし、最後に待ち受けていた結末が、私にとってはいまひとつだった。
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The Robot Who Knew Too Much / Ron Goulart
広告代理店を経営しているマギーは、別の広告代理店につとめるダンテに言い寄られながら中央アメリカの街へ顧客との面接に向かう途中、元夫ベンの精神をコピーしたボディガード・ロボットもついてきていることに気づく。私立探偵事務所を開いているロボット・ベンは、マギーをつけてきたわけではなく、行方不明の女性歌手を探しにきたのだと言い張る。街は大きなマラソン大会の開催が近づき、緊張している。やがて、マギーたちが顧客にしたいと考えていた企業が、行方不明事件にかかわっていたことが明らかになる。そして、真実を知り過ぎたロボット・ベンは……。
約7100語。ハードボイルド気取りなロボットが登場するユーモアSFのシリーズ四作目。前作は"The Robot Who Came to Dinner"(Analog誌2002年7月8月合併号)。ロボット・ベンに訪れた最大の危機!なのだが、このシリーズのことなので、あっさりとベンは復活する。主人公たちのやり取りの珍妙なおもしろさは相変わらずだ。
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Not a Drop to Drink / Grey Rollins
惑星に入植した植民者たちは、ここ数年続く干ばつに苦しんでいた。作物は枯れ、飲み水にも事欠くようになる。解決策はなかなか見つからなかった。そこで、これから産まれてくる子供たちに、海の塩水も摂取できるように遺伝子操作するという提案がされる。しかし、狂信的なクリスチャンたちはその案に感情的に反発する。市長の奮闘も空しく、街の住人たちは争いはじめ、一方で、若い夫婦たちが秘密裏にその処置を受けた子供を産みはじめる。反対する人々は強硬な手段をとるのだった。
約11000語。なんだか子供たちが成長するまでに植民惑星は全滅しそうでしかたがない。遺伝子操作するくらいだったら、海の塩水を利用するようにした方が絶対早そう(蒸留器をつくってはいるが追い付かないという記述はあるが)。聖書の勉強会や街の集会所での会合などの時間があるなら総出で蒸留器を作るわけにはいかなかったのだろうかと、そんなことを考えてしまった。
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Triumph in the Desert / Bud Webster
1958年。少年は、家族と折り合いが付かず家を飛び出して以来、有能な機械工として金を稼ぎながら旅を続けている。異星人が存在して彼らに出会うことを夢見ていた彼は、UFOのコンベンションにやってきた。だが、彼を待ち受けていたのは、いかさま師や狂信的なUFO信者ばかり。そのうえ、家族からの思いがけないつらい知らせを受け取る。気落ちする少年をなぐさめたのは、会場に来る途中で親しくなった初老の男性だ。一つ大人になって会場から去ろうとする少年を見送ったその男性は、実は……。
約11000語。"Bubba Pritchert and the Space Aliens"(Analog誌1994年7月号)、"The Three Labours of Bubba"(Analog誌1996年6月号)の前日譚。少年がなぜBubbaと呼ばれるようになったか、どうしてUFOの存在を確信するようになったのかが、明らかにされる。前作ではすっかり大人(のUFOオタク)の彼だが、この話ではまったく別人のよう。繊細な少年の青春の物語が描かれている。
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Trinity Bay / Alexis Glynn Latner
主人公の初老の技術コンサルタント会社の経営者が、趣味のグライダーを楽しんでいるとき、通常ならあり得ない水面の上での上昇気流に気がついた。前方にはナノテク微生物の研究所が集まった街があるのだが、そこで異変が起こっているようだ。ナノテク微生物が外に漏れて、街を異様な姿に変えた後、水かさの増えた河へと流れ出したのだ。主人公はナノテク微生物が水面下に存在する場所を示す上昇気流の位置を追いつつ、この事件がビジネスに与える影響を考えるのだった。
約8200語。前半は空中で楽しんでいるうちに異変に気づき、謎を解明しながら飛行を続けている。緊張した状況が続き、次にどんなことが起こり、明らかになるのだろうかとドキドキしながら読めた。それが、後半では一転してオフィスでのパワーゲームの場面となる。空中にいて謎を解明した場面か、着陸したところで終わらせていたら、もっと私の好みだったかもしれない。
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Still Coming Ashore / Michael F. Flynn
オドハーティのバーでの今日の話題は「進化」で、客の一人がヒトは水辺で進化したという説を披露する。そのとき、常連のマウジーは、彼女の体験したつらい出来事を話しはじめる。マウジーは恋人コリンとの船旅の途中、嵐で船が難破してしまう。無人島に流れ着いたのは、マウジーとコリンと、そして、道具を使う巨大な猿アダムだった。アダムは二人をメス猿だと思いこんだらしく、奇妙な共同生活が始まる。だが、彼らを悲劇が待ち構えていた。
約11000語。語り手はバーの常連の一人で、先月号に掲載されていた"3rd Corinthians"(Analog誌2003年6月号)の続編になる。前編で言及されていたマウジーが主役となる。前の話は宗教とタイムトラベルネタをうまく使った話だったが、今回はヒトとは別に進化しようとしているサルが登場する。マウジーが目撃したのは、生物学的にではないけれど、文化的な進化といってもいいような瞬間だ。前編と同じく、登場人物の語り口がいい雰囲気をつくり出している。
Short Stories
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Taveling, Traveling / Sarah A. Hoyt
誰もが常に情報グリッドにリンクしている22世紀、主人公の飛行艇はグリッドの不調から緊急着陸する。彼女が助けを求めた近くの村は、情報グリッドを拒否した人々が古い生活手法を守りながら暮らしていた。そこで一晩すごした彼女は情報グリッドのない生活という選択ができるというのもいいと思うのだが……。
約3900語。「目撃者 刑事ジョン・ブック」のアーミッシュを思い起こさせるような村の風景だった。そこを訪れた語り手は、人種や国境など意味がなくなったような情報社会に住み、それを推進していく会社の幹部ですらある。ノスタルジックな雰囲気に溢れた作品。
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A Professor at Harvard / David Brin
新たに発見された古文書から推測されるある事実を、ハーバード大学の研究者が友人に手紙で述べるという形式を取っている。ガリレオに師事したことがあり、Torricelliの友人であったスティーブンスは、メイフラワー号の開拓者の一人としてアメリカに渡り、測量家として貢献する。その彼は、ガリレオが宗教裁判にかけられたころ、ヨーロッパを訪問したらしい。そして、その頃創立されたハーバード大学に、ある人物が着任したという。
約4100語。語り手(手紙の書き手)が資料を手に入れたのがネットのオークションだというのが、ちょっと新しいかもしれない。どちらかというとSFというより普通の小説で、科学のフィクションだからSFかなと考えてしまった。ここに書いてあった話はどこまでが事実でどこからがフィクションなのか調べてみたくなる。
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Brownian Motion / Richard A. Lovett
アルバートは人生を共にする相手を探しているが、ブラインドデートで時間を無駄にするのに嫌気がしている。そんなとき、現実の場所にホログラムとしてでかけて異性と出会うホロデーターという結婚紹介サービスの存在を知り、それに加入する。これなら相性がいい女性を効率的に探すことができるはずだったが……。
約5500語。主人公が女性たちと一瞬知り合ってはまた別々の人生をいく様子をブラウン運動と重ねている。コミカルだけれど下品ではなくて、それなりにおもしろくて読みやすい作品。結局彼が見つけた女性は……といういう結末も、ありふれているかもしれないが、悪くないと思う。
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The Spacemice Incident / Carl Frederick
観光客を積極的に受け入れるようになった宇宙ステーションの指揮官の主人公は、わがままな金持ち観光客の応対におわれて頭が痛い。ライバルの中国の宇宙ステーションからの査察官が滞在中に、宇宙ステーションにねずみが大量発生する。部下のエンジニアと共にネズミ退治におわれるのだが、なかなかうまくいかない。なんとか問題が片付いたと思ったら……。
約4300語。ネズミ対策に奮闘する船長らをコミカルに描いている。事態はコメディのようなのに口調は淡々としていて、かえっておもしろさをみせているかもしれない。ネズミ退治の副産物で、別の問題が片付いたところなど、目新しくはないかもしれないけれどもきちんとまとまった感じだ。
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Agent / Shirley Kennett
彼はコンピュータネットワークに入り込み、人の生死を左右しては喜んでいた。彼の今の目標は、初めての植民船に潜り込み、狭い船の中で乗組員たちをもてあそぶことだった。そのため、彼はネットワークに自分のために働くさまざまなエージェントプログラムを放ち、乗組員に選ばれる確率を上げようとしていた。さもなければ……。さて、植民船団の中で目覚めた彼のエージェントは、さっそく乗組員を苦しめるための策を練るが、あと一歩というところでうまくいかない。誰かが(あるいは何かが)彼の行動を邪魔しているのだろうか……。
約4600語。殺人をなんとも思わない主人公(たち)の視点からだけで語られているためか、なんとも嫌な気分になる話。最初から最後まで緊張感がただよっている。
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Linda's Dragon / Brenda Cooper
医師のリンダが乗り組んでいる宇宙船に疫病が発生し、次々に乗組員たちが倒れていく。リンだと彼女の同僚の医師ジャックは、発病してしまった時のために、違法だと知りつつ自分達の脳をコピーしたAIをつくることにする。だが、そうするうちに、ジャックが疫病で倒れてしまう。病気にかかったジャックのコピーの解析によって、病気を食い止めるかもしれない手段が見つかったのだが……。
評価A-。約5300語。タイトルだけからはファンタジイのようだが、生と死のぎりぎりのところで奮闘する人々を描いた近未来SF作品だった。タイトルのDragonは、コピーのAIに名付けた名前から来ている。はじめは違和感を感じていたAIの存在に徐々に自分の分身としてなじんでくる、そんな感情の微妙な動きが、友人の死にも感情的になる余裕もない極限的な状態の中でうまく表現されている。
作者はこれまでにラリイ・ニーヴンとの共著の作品をアナログ誌に発表している。だが、単独でのこの作品も、悪くない。悪くないというより、私はこちらの方が好みだった。
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Home on the Range / Pat York
大コンピュータ会社の創始者の主人公は、故郷の草原のまっただ中にイギリス風の庭園に囲まれた大邸宅をつくりあげたのだが、隣接する保護区で大量発生したバッファローに自慢の庭を荒らされるようになる。庭をバッファローの群から守ろうとして、彼がさまざまな手段を取る様子を描く。
約7400語。バッファローに大事な庭を荒らされて試行錯誤を繰り返す場面が描かれている。だが、実はとてもいい人の主人公と、ヨーロッパ育ちの上品な最愛の妻や、バッファロー問題のために知り合い親友になった役所の担当官などとの関係のほうが、おもしろく読めた。
Probability Zero
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COWZILLA / Geoffrey A. Landis
遺伝子操作で作り上げられた通常の牛の100倍の重量を持つスーパー牛、牛とゴジラから通称「カウジラ」。その巨大牛が逃げ出して野生化し、全世界へと広まった時の姿をほのぼのと描いている。
約700語。こんなほのぼのとしたオチになるとは想像できなかったが、実に牧歌的な風景でしめられている作品。
Essays/Articles
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Editorial: A Fragile Cornerstone / Stanley Schmidt
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Science Fact:
From Salt Foam to Artificial Oysters : Innovative Solutions to Global Warming / Richard A. Lovett
温室効果を防ぐ方法として提案されているものをいくつか、それぞれ問題点を含めて検討している。
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The Alternate View: LSST -- The Dark Matter Telescope / John G. Cramer
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2002 AnLab Results
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The Reference Library / Tom Easton
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Upcoming Events / Anthony Lewis
(2004年3月8日)
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