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Analog Science Fiction and Fact, January/February 2004
Novelettes
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Inherit the Vortex / Ramona Louise Wheeler
地球人レイ・ハリス船長とウォザーン人ロッキーの二人組のシリーズの五作目くらい。二人はとあるいざこざから、追っ手に追いかけられ、宇宙船の修理のためにある惑星に着陸する。ところが、その惑星には奇妙で巨大な知的生命体が自意識を獲得しようとしていた。二人の宇宙船に興味を持ったその生命体にとらえられそうになるが、危機一髪脱出する。その後、二人は旧友の紹介で、ある植民惑星の植民開始時からの旧家に数百年以上一族の秘密として隠されていた、宇宙船の墜落跡に残されていた異星人の遺物の鑑定に赴く。しかし、その物体を見たロッキーは驚愕した。ウォザーン人は銀河系を支配する2つの長命種族の一方だが、実はロッキーはその王族の一員だった。ある事情から追放されたのだが、彼の人生を一変させる……どころか、銀河系全体を戦争に巻き込みかねない重大な秘密が、その遺物には隠されていたのだ。
約17200語。冒頭は、レイとロッキーたちのパートと意識を持ちはじめた生命体のパートが交互に描かれている。それが、途中からロッキーたちが植民惑星で遺物を調べて(ロッキーはもともと研究者で、大学の学長かなにかしていたらしい)、ロッキーが自分の過去の真実を見つめ直す話に変わっていく。最後にまた惑星の知的生命体が登場し、植民惑星での遺物と関係する。シリーズの一作であるが、他の短篇とは独立して読める。
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Private Eyes / Grey Rollins
私立探偵のジャック・ソウヤーは、以前保険会社の調査員だった時に殺されてしまい、クローンにこれまでの記憶を移植して復活したという過去を持つ。その時いろいろあって、彼にはコンピュータ・ネットワーク上に彼のコピーという相棒ができていた。彼が今回依頼されたのは、人工眼球の会社につとめるストレイカー博士の調査だった。彼女は事故で重傷を負って、クローン移植を待つ間に、あまりの苦痛から苦痛を快楽と感じる違法な手術をうけて、その苦痛/快楽の中毒になってしまったらしいのだ。ソウヤーはコピーの相棒とともに、彼女を苦境に追い込んだ相手を追い込んでいく。
評価A-。約12700語。Analog2001年2月号 Or Die Trying の続編にあたる。けれど、前作の存在を知らなくてもまったく問題なく楽しめる。ハードボイルドっぽい雰囲気がいきていて、コピーの相棒との会話もユーモアがかなり効かせてある。
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Caged / Kyle Kirkland
バイオ法医学局の専門家のダントンは、孫娘デリアが勤めていたデータ会社の窃盗事件の容疑者になったと聞いて驚く。デリアが会社で突然暴れ出し、その混乱の最中に重要な顧客のデータが盗まれてしまったのだ。デリアの無実を信じるダントンは、こっそり調査を始める。デリアは子供時代にある薬を常用していて、何者かがその後遺症を悪用してデリアに発作を起こさせたに違いない。だが、誰がどうやって、彼女にその発作を起こさせたのだろうか。
評価A-。約10100語。生化学を重視した法医学の専門家を主人公にしたSFミステリ。捜査/謎解きが、ちゃんとバイオの知識を使ってちゃんとしたSFのミステリになっている。家族より仕事優先の家族に反発して家を出た孫と、過去を反省して今はその孫を遠くから見守っている男性が、事件をきっかけに家族としてやり直そうとするのを描いて、物語に深みを出している。タイトルは、デリアが発作を起こした時に閉じ込められたと感じたことと(たぶんダントンが子供時代のデリアを閉じ込めていたと悔やんでいることと)薬品がデリアの体内でわずかしか見つからなかった原因となった状態をさしている。
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Short Line Loco / Stephen L. Burns
ケイジは、かなり小柄の女性だが、建設中の月面コロニーと月面貯水池を結ぶ月面機関車の運転手として誰もが認める存在だ。貯水池にテロリストの爆弾が設置され、このままでは月面コロニー全体が壊滅の危機という。ところが、シャトルも燃料に細工されて使えず、一番早く向かう手段は彼女の月面機関車らしい。そこで、彼女は爆弾を解除できるフリードマン大佐と、超特急の列車の旅を開始する。
評価A-。約11800語。通常の手段ではどうしても間に合わないからと、主人公は機関車を宙に飛ばしている。もちろん、機関車といっても、レールがあるわけではないけれど、なんだか銀河鉄道999みたいだ。なんとか爆破予告時間以前にたどり着くが、それだけでは間に合わなくて、彼女が小柄だというのが役立つというおまけつき。非常にいきいきとした女性が主人公で、その勢いだけでも読ませてくれる。
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Weapon of Mass Distraction / Richard A. Lovett
これまでの旅行先やクレジットカードの記録やコンサート会場での服装など、さまざまなデータからテロリストであるかどうかチェックされるようになった近未来。テロリストとはまったく関係のない一般市民が、さまざまな偶然から危険人物にさせられてしまう。さて、ここにそのセキュリティ・システムをつくりあげた政府当局のプログラマと、そのシステムのせいで動きが取りにくくなったテロリストたちの「コンサルタント」がいた。ある事件が起こった時、「コンサルタント」はそれを利用して……。
約6800語。前半は、3人の一般市民が無実の罪で危険人物にされてしまう様子を、ブラックユーモアを交えて描いている。後半はそのシステムのエラーから関連していって、あるテロリストがシステムを逆手に取っていく様子を描く。非常にブラックで風刺のきつい作品。タイトルはもちろん "Weapon of Mass Destruction" をもじったもの。
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Deletion / Steven Bratman
家族や国といった制度がなくなった未来。歴史学者のスーザンは、たまたま生物学的父親でもあるセラピストに、自分の遺伝子には欠陥があることを見つけたと語っていた。すべての遺伝子が簡単に修正される現在、そんな欠陥があり得るはずはない。彼女が発見したのは、すべてのヒトの遺伝子が修正されていたのに誰も気づいていないという事実だった。二人はそれを修正するドラッグを使って、その基本的な感情を司るはずの遺伝子が、どんな役割を果たすのかを突き止めようとする。だが、彼らは思いがけない欲求に突き動かされることになる。
約11400語。Analog誌2003年5月号 The Immortality Plagueのさらに未来を舞台にした作品。ただし、前作とはほとんど関係ない。家族愛や愛国心などがすっかりなくなり、そのかわりに友情と恋愛と賞を得ることに重きを置くようになった、驚くような未来の姿を淡々と描いている。
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Inversus / Alec Nevela-Lee
ある日、立て続けに家が破壊され、住人が残酷な方法で殺されるという事件が多発する。驚くことに、被害者のうち男性はすべて内臓が左右逆転している人物だった。唯一事件から生き残ったのハモンドは、ヘブライ語への翻訳家で、『鏡の国のアリス』を翻訳していた。ライム捜査官は逃げ出した彼を追いながら、この奇妙な事件の謎を探るのだった。
約15400語。超能力が出てくるミステリSF。超常現象を扱うのは、アナログには珍しいような気もする。けれど、事件の原因を科学的に追求していこうとする部分がちょっとハードSFなのかもしれない。ヘブライ語は右から左に書く逆転した文字で、アリスやカバラが出てくるなど、逆転のイメージにちょっとおどろおどろしい要素が混じっているようにも見えるが、実はそれは妄想に関係している程度。
Short Stories
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Swings / Marie Ming
主人公ヘイドンは、もうすぐ卒業を控えた医学部進学課程の学生。一緒に育った兄弟同然の異星人マックにはラヤという親友がいるのだが、彼女が重傷の精神疾患にかかっているらしい。そのせいでマックも精神的に不安定となり、命までもが危険な状態となった。ヘイドンは自分の夢だった医学校への進学ができなくなることを覚悟して、許可なしにラヤのDNAを調べ、病気の原因とその治療法をつきとめるのだが……。
約7200語。Analog2001年1月号 A Singular Cloneの続編にあたるが、独立して読める。異星人と共に暮らしている未来の宇宙が舞台のはずなのに、精神疾患の扱われ方はあまりにも現在の様子と変わらないようにみえた。友情や愛情や将来への不安など若い主人公たちの感情はうまく描けていたし、病気の対処法の部分やラヤを救うために彼らがとった手段などもよくつくりこんでいると感じたが、この舞台設定である必要があったのかがよくわからない。
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Shed Skin / Robert J. Sawyer
生身の体から意識をコピーしてロボットに移植できるようになった未来。もしロボットに意識を移植して不老不死の体を手に入れるならば、コピー元の意識を持ったもともとの肉体は人権をはく奪され、隔絶された施設で余生を送ることになっていた。だが、そうしてGR-7と呼ばれるようになったジョージは、自分を取り戻そうとして危険な法の抜け穴をみつける。一方で、ロボットの体を持つジョージは、自分が本当に人間として生きている証を得ようとしていた。
約6800語。生身の主人公は肉体も精神も備わっているのに人権だけは抜け殻として扱われるようになったことを苦しみ、ロボットの主人公はかえって生きる喜びを知ってより人間らしくなる。この二人がそれぞれ自分のアイデンティティに悩み、選択をする。どちらがより人間らしいといえるのか、自分だったらどんな選択をするのか。意識をコピーしたロボットなんていくらでもある設定かと思ったが、意外に考えさせられた。
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Decisions / Michael A. Burstein
単独で有人宇宙調査船に乗り組んでいたアーロンは、六ヵ月間の任務を終えて地球に帰還する。だが、彼は隔離されてしまい、現在は彼が思っているより半年過去で、まだ彼が任務に出発する前だと知らされる。これが過去ではなく、パラレルワールドだと信じた彼は、過去の自分と入れ替わって、再び旅立つ。そして、冥王星軌道の外側で再び「異常」を見つけた彼は、そこで人類の未来をかけたある選択を迫られるのだった。
約6200語。タイムトラベルか、それともパラレルワールドかと期待させておいて、一種の夢オチだったのである意味びっくりした。こういう実は異星人のシミュレーションでしたというネタを今どき扱うのだったら、もっとおもしろいガジェットとか語り口に特徴を持たせることとかが必要だと思う。
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Annual Annular Annals / F. Gwynplaine MacIntyre
パラドックス・パトロールのカレンダー捜査官は、最上階「無限」階の上司に呼び出される。そこで彼女が見せられたのは、地球のある年……1999年……の時空間が一年だけぼろぼろになっていることだった。原因はいつもの時間犯罪者スメドレーだ。1999年に向かったカレンダー捜査官を待ち受けていたのは、動植物が全て消滅し、ただ骨だけが残る死の世界だった。そして、そこにただ一人いたスメドレーが彼女に語った、悲惨な出来事とは……。
約6400語。ダジャレと科学ネタ満載のバカSFのシリーズの新作。前作 A Deadly Medley of Smedley は2003年4月号に掲載された。宇宙論や量子論などさまざまな題材が登場してきたが、今回は無限とナノテクを扱っている。後半の調子は珍しく重苦しくて暗いのだが、いろいろなガジェットを詰め込んだおもしろさはいつもの通りだった。
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The Dragon Wore Trousers / Bob Buckley
隕石によって、全ての地表の生き物が危機にさらされることになったとき、彼は自ら作成した時間を操る装置で未来に向かった。だが、そこで彼が目の当たりにしたのは、自分達ではなく、あのやっかいな小動物の進化したものだった。その二本足の生き物は、金属板にくるまれて、四本足の別の生き物の背中に乗っていた……。
約2500語。聖ゲオルギウス(St. George)と竜の話は、本当はこういう話だったのかもしれないという短篇。なんだかとても読みにくく感じたのだが、それは異質な考え方をする竜の視点から語られているためのようだ。ドラゴンが主人公なので、少しファンタジーのような印象もうけた。聖ゲオルギウスと竜の話がもっと身近だったら、私にももっとおもしろかったのかもしれない。
Probability Zero
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Equivalence Principle / Robert Scherrer
教授からエドワードに課せられた博士課程の研究の題材は、原子時計だった。通常原子時計に使われるセシウムだけではなく、さまざまな原子を用いた原子時計をつくろうというのだ。ところが、金の原子まできたとき、どうもうまくいかなくなる。時計は予想値の二倍の速度で進むうえ、金の元素が消滅していっているようなのだ。そして、彼は新たな等価原理を発見したのだ。それは……。
約900語。ことわざをオチにした短篇。オチとしてはよくありがちなネタなのだが、このオチになるとは思っていなかったので、ちょっと驚いた。
Essays/Articles
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Editorial: preading the Word / Stanley Schmidt
科学研究の分野で、インターネットがどのように研究の方法を変えてきたかについて。
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Science Fact:
Hot-Air Balooning through Space: The Promise of Mini-Magnetospheric Plasma Propulsion/ Gary Lai
ソーラーセイルではなく、プラズマでつくられた磁気バブルで太陽風を受けるという方式で恒星間航行を行うという案を紹介している。
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The Alternate View: Odds & Ends 3/ Jeffery D. Kooistra
2003年9月号の当コラム"Only On TV"で扱ったNASAの安全対策について、2003年2月号のEditorialでの(創造論の)インテリジェント・デザイン説に対する読者の反応について、など。
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The Reference Library / Tom Easton
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Upcoming Events / Anthony Lewis
(2004年7月5日)
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