レビューの目次に戻る
Analog Science Fiction and Fact, September 2005
Novella
-
Sanctuary / Michael A. Burstein
ウィッカム神父は、宇宙ステーションでのミサの途中、異星人の娘に神の名の下の保護をもとめられる。彼女の種族は常に双子で生まれ、宗教上、双子の片割れしか子孫を残せないことになっているのだという。そして、双子が既に子供を持っていたのだが、彼女は新興宗教の熱烈な信者だったので、妊娠したらしい。そこで、父親の大使に中絶を迫られているのだという。ウィッカムはなんとか彼女を助けたいと考えるのだが……。
~16000語。地球人が異星種族との交易のために建造した宇宙ステーションに赴任している神父という設定になっている。宗教を前面に出したSFで、異星人に魂があるかという問題についてカソリックはどう対処したか、新概念(たとえば、天動説とか)を宗教はどのように許容していったかなどが語られる。概念的にはおもしろいSFなのかもしれないが、あまり私の趣味ではなかった。
Novelettes
-
Search Engine / Mary Rosenblum
主人公は初老の情報収集エージェント。今度の仕事相手は政府の捜査官タイプで、違法な社会運動に関わっているある若者を捜してほしいという。その若者は身を隠したつもりのようだが、最近の情報システムはそんなことを許さない。若者に姿を消した息子を重ねあわせた主人公は、彼に警告しようとするのだが……。
~7800語。人や商品にはほとんどすべてチップやタグが埋め込まれ、情報が管理されるようになった近未来を描く。物語は三人称で語られ、それなのに腕利きの主人公にも見つけられないように姿を消した息子のことを回想しているので、話がちょっと分かりづらいところもあった。
-
Give Up the Ghost / Grey Rollins
駐留部隊の指揮官としてある新しい植民惑星の赴任した主人公。彼の赴任以前に、前の総督が数十人の植民者たちを虐殺して自殺したという事件が起こっている。それ以来、悲劇の現場で幽霊が目撃されているらしい。このままでは住人の士気があまりに低下して、惑星から撤退という事態にもなりかねない。主人公はその現場に向かい、土着の異星の動物の群れと出会った後で、実際に「幽霊」を目撃する。
~8900語。ミステリ風味の異星惑星SFもの。ちょっとシニカルで主人公が冷静に物事を判断して、真実を見極めていく。さほど新しさを感じるオチではないが、主人公と部下や住人たちのやり取りなどにユーモアが効いていて、楽しめる作品だった。
-
Resonance / Eric James Stone
主人公はスペースエレベーターを建設しているベンチャー企業の経営者、だが、ライバル会社がいままさにエレベーターを稼働しようとしているのを知って、ショックを受ける。最初のスペースエレベーターを建設した企業には多額の賞金が与えられるのだ。だが、さらにショックだったのは、稼働しようとしたそのエレベーターが共振のために破壊され、地上に大きな被害を与えたことだった。どうやら、環境テロリストが、その会社に入り込んでいたらしい。この事件の後は、どこの政府も領土内にエレベーターを建設しようとするのを許そうとしない。しかし、会社のエンジニアの提案により、ある場所にエレベーターの基地を建設する。しかし、エレベーターを稼働しようとしたとき、テログループが彼らのエレベーターに直接攻撃を仕掛けてきた。
評価A-。~10000語。いかにもアナログらしい、科学技術をきちんと使った近未来SF。主人公は起業家だが、エンジニアの素養を持ち、いろいろな障害を科学技術の力で乗り越えていく。環境保護テロ集団が宇宙開発を標的にするというのが、ちょっと目新しいかも。
Short Stories
-
Take Me to Your Liederkranz / Lawrence M. Schoen
国務省からやってきた男は、ある奇妙な精神疾患を抱えた少女に面会する。彼女の話す言葉はすべてあるグループの名詞になってしまっているのだ。今日はチーズの種類だけしか話せない。だが、国務省の男は、冷静に対処して、彼女が本当に言いたかったこと……というより、彼女を乗っ取った異星人が言いたかったことを明らかにする。
~1700語。一応ファーストコンタクトを扱った短篇。ショートショートのような長さなのが、ちょうど良く楽しめた。
-
Breeder Maze / Larry Niven
ある日ドラコ酒場を訪れたジョーカー種族の異星人はペットらしい2体の動物をつれていたが、本当はペットではなかった。繁殖期だけ知的能力が向上する異星人だったのだ。相手の知性をはかるゲームのために身を隠した恋人を探して、昨日は動物のようだった異星人は酒場にやってくるが、どうもジョーカーがなにかトラブルを仕掛けたらしい(だからこの種族はジョーカーと呼ばれるのだ)。酒場のオーナーの語り手は、恋人を捜すその異星人を手助けするのだが……。
~3900語。最近のアナログ誌ではおなじみの<ドラコ亭夜話>シリーズの一作。少しミステリがかっていて、こんな異星人いるわけないでしょうと思いはしたけれど、このところのシリーズ作品の中ではおもしいほうだった。
-
The Speed of Understanding / Carl Frederick
異星言語学者のポールたちは新しい惑星を調査している。海岸のそばにある調査隊基地のちかくには犬のような人なつこい動物ケイノイドが棲息しており、海にはおどろおどろしい姿をした魚ルシフィッシュが棲息している。ケイノイドもルシフィッシュもたいていは草食なのだが、死期が近づくとケイノイドはルシフィッシュに、ルシフィッシュはケイノイドに食べられるという不思議な習性を持つ。ある日、ポールはルシフィッシュが集団で行動し、太陽光線をレンズのように集めて反射させ、調査隊を攻撃しようとするのを見る。ルシフィッシュは知的生命体なのか? ポールたちはルシフィッシュとケイノイドの関係に隠された、ある秘密に気づく。
~6300語。ファーストコンタクトSFの一種。短篇にいろいろ詰め込んであり、この内容ならもう少しだけ長くしてもいいのでは思った。知性がどこにあるのかという秘密の部分や、ルシフィッシュとケイノイドの不思議な関係は、なかなかユニークだった。
-
The Best-Laid Plans / Jerry Oltion
二人の宇宙飛行士たちは宇宙ステーションで火星を植民するための遺伝子操作植物の研究を行っていた。だが、半永久的に宇宙開発をやめる決定がなされる。彼らはわずかでも抵抗しようと、完成間際だった植物を火星に向けて送り出した。彼らの子孫はその伝説を語り継ぎ、火星への有人探査をおこなおうとするが、数百年間、人々はまったく宇宙に興味を示さなかった。しかし、緑が広がった火星によそからやってきた宇宙人が植民をはじめたと知るや否や……。
評価A-。~2400語。遺伝子操作植物や宇宙開発や火星への植民などをまとめてブラック・ユーモアたっぷりにしあげた作品。この結末は、こんな風になってほしくないと思いつつ、だからといって笑い飛ばせなくてため息をついてしまいそうな、コミカルながらいろいろ考えさせた。
-
Paradox & Greenblatt, Attourneys at Law / Kevin J. Anderson
有人と事務所を立ち上げた弁護士の主人公は、タイムトラベルが専門だ。今回は、過去に戻ってある男性の両親の出会いを邪魔しようとして、殺人罪に問われた男性を弁護する。依頼人は悪いことをしていないと思っているから厄介だ。どうやら、依頼人の母親は彼が存在を抹殺しようとした地元の名士と不倫をし、そのために彼の家族は不幸になったとうらんでいるらしい。主人公はある事実に気づき、依頼人を守ることに成功する。
~5400語。タイムトラベルSFとしてはまあごく普通の展開だったが、主人公が弁護士というのがおもしろい作品。
Essays/Articles
-
Editorial: Softening Us Up / Stanley Schmidt
20年前、今の空港のセキュリティを見ることができたら、どう思うことだろう。それが必要なことだという人もいるかもしれない。しかし、少しずつすすめられていくうちに、感覚は麻痺していないだろうか。
-
Science Fact:
Water World, Glacier World, Dust World / Kevin Walsh
ほかの恒星では、どんな惑星が存在するだろうか。地球に似た惑星で、どのような環境が実現できるのか、シミュレーションがおこなわれている。
-
The Alternate View: Allure-Free Strings / Jeffery D. Kooistra
超ひも理論研究者Brian Greeneによる"The Fabric of the Cosmos"を読んで。
-
The Reference Library / Tom Easton
-
Upcoming Events / Anthony Lewis
(2006年5月25日)
レビューの目次に戻る