レビューの目次に戻る
Analog Science Fiction and Fact, July/August 1999
Serials/Complete Novels
-
The Quantum Rose (Part 3 of 3) / Catherine Asaro
三回にわたって連載されていたのだが、まとめてレビューする。
ケイモジはある領地の世襲領主だが、彼女の領地は豊かではなかった。そこで彼女は近隣の有力な領主のジャックスと結婚し、領地を統合して、貧しい暮らしから領民を助けようとしていた。ところが、彼女の領地にある古城をしばらく前から借りていたハビールが、彼女に膨大な持参金をプレゼントして結婚を申し込む。ハビールや彼の周囲の人々はケイモジから見ると非常に変わっていたが、それもそのはず、ハビールは異星のスコーリア家の王子だった。ケイモジは膨大な持参金を断わり切れず、ハビールと結婚する。だが、そんな結婚ではあったが、彼女は彼を心から愛するようなる。彼は非常に優しく、領地のために異星の優れた技術力による援助を考えてくれる。問題があるといえば、彼が悪夢に悩まされ酒に溺れることだ。戦争中に心の傷を負ったためらしい。だが、彼もケイモジへの愛のために立ち直ろうとする。
そんなある日、ハビールの留守中にジャックスがケイモジを誘拐する。ハビールは彼女を取り戻そうとするが、領民を人質にとられた信じ込まされたケイモジは逃げられない。ジャックスはハビールとケイモジの結婚を無効にしようとし、調停者役の政府の士官の前にジャックスとハビール、ケイモジが集められる。ケイモジはジャックスの虐待と監禁された環境の悪さから疲れ果てていた。彼女は本当はハビールの元に戻りたいのだが……。
評価5。『スコーリア戦史』の一冊。どうして物理用語を挿入しているのかいまいちわからないが、こういうロマンスは大好きである。人物描写もいきいきしているし、アサロが人気があるのがよくわかる。こういうのが好きではない人には、この良さは全然わかってもらえないだろうけれど……。
Novellas
-
The Astronaut from Wyoming / Jerry Oltion and Adam-Troy Castro
宇宙人そっくりの容姿で生まれた少年の一生を、友人が回想するスタイルで描かれている。タブロイド紙などのマスコミに追い掛けられつつ宇宙飛行士に憧れた少年時代、自身も病魔に犯されつつ一緒に宇宙をめざす親友との出合い、実際に宇宙飛行士になって初の火星有人飛行のミッション中に英雄的な死を遂げるまでを、タブロイド紙のインチキ記事を間に挟みながら描いている。
評価5。宇宙をめざす少年の話というだけで、私の涙腺は緩みそうだ。うまくまとめてある。ネビュラ賞の候補作に選ばれた。
-
Emperor Penquins / Joseph Manzione
地球にやってきた異星人の交渉役として働く弁護士の主人公は、故国で離婚されることになった異星人の一人に助けを求められる。離婚されると彼らの慣習では子供にあう権利が失われるのである。自身も離婚して子供と引き離されて苦しんでいる彼は、地球の法律に基づいて訴訟をおこし、彼の代理人として子供を連れて異星に赴くこととなる。慣習の違いにもかかわらず、彼はこちらの要求をある程度認めさせることに成功するが……。
評価4。異星人側がいろいろ分裂していたりするともっとそれらしいのではないかと思う。タイトルは、皇帝ペンギンは雄が子育てすることからきている。
Novelettes
-
As Time Goes By / Amy Bechtel
ハワードと彼の怪獣の登場するシリーズ五作目(らしい)。主人公の獣医はハワードから怪獣の何匹かが雪の上で奇妙な行動をしていることを聞き、かけつけるが、怪獣は特に体調が悪い訳ではないらしく……。
このシリーズはそれなりにおもしろいが、この短篇だけ取り上げるとちょっと物足りない。
-
E-Mage / Rajnar Vajra
Emagia を名乗るやり手のハッカーのシャロンは身分や財産をすっかり他人に盗まれてしまった夫婦の相談を受ける。叔父が開発して彼女に残したバーチャルリアリティ装置を用いてコンピューターネットワーク上に潜り込んだ Emagia は、戦士の姿で知恵を使いながら戦うはめになる。
そんな最高機密に相当するバーチャルリアリティ装置が主人公の手許にあるのが都合よ過ぎる感じだ。フリズナーの女性戦士を主人公にしたユーモア・ファンタジー・アンソロジーにいいのではと思ってしまった。
-
Live Bait / Shane Tourtellotte
植民惑星に暮らすクイン捜査官は、明日は人工子宮に子供を移す大事な日だというのに、ダイバーたちが土着生物を危機にさらしているという訴えがあって海岸に赴くことになる。彼はダイビングツアーに潜入してジェット鯨に囲まれるダイビングを楽しむ。化学薬品を身体中に塗ってジェット鯨に飲み込まれても大丈夫のはずが、ツアーの経営者が鯨にかみ殺される事故がおきて……。
評価4。クイン捜査官の出てくる前の話があったはず。短篇だが、きちんと書き込んであるので安心して読める。
Short Stories
-
GCEA / Laurence M. Janifer
何でも屋のクネイブの今度の仕事は、情報部に頼まれた調査だ。ある惑星の情報提供者からの報告が敵に傍受されているらしいので、どこからもれているのかこっそり調べてほしいのだという。情報提供者はサーカス、ではなくて、カーニバルを経営していた。クネイブはカーニバルにしょっちゅう出入りしている犬を連れた女性客に目をつけるが、どうやって通信を傍受しているのかわからない。彼女か犬か、それとも……。
評価4。途中ででてきたウクレレが解決の鍵になる……のかも。タイトルはウクレレの4つのキーが GCEA だからだと最後に説明してある。ということは、ウクレレSF? 語り口がおもしろいし、軽い読み物としては十分な作品。
-
Out of Warranty / Gordon Gross
保証期間が過ぎるととたんに壊れるように思える家電製品には理由があった。ひょんなことからその秘密に気づき、保証期間を延長するための装置を調べようとした主人公は自分自身にも「保証期間」がつけられてしまう……。
これがショートショートなら私にとってはもっとおもしろかったかもしれない。それに、こういう中途半端にうらぶれた主人公ってどうも好きではない。
-
Tempora Mutantur / H. G. Stratmann
孤立して暮らす変わり者の主人公の元に、巨大企業の経営者である彼の弟が相談に訪れる。どうやら最近奇妙な人たちが彼を観察しているというのだ。彼らはタイムトラベラーで、タイムマシンの発明者である彼の様子を楽しんでいるらしいのだが、もちろんそんな発明をした覚えはないという。その場所にもタイムトラベラーたちがやってきたことに気づいた彼は主人公の目の前で車道に飛び出し車に跳ねられてしまう……。
主人公がこれまで何をしてきて、これからどうやってタイムトラベラーたちをさばくのか良くわからなかった。読み足りないだけだとは思うのだけど。
(2000年4月16日)
レビューの目次に戻る