レビューの目次に戻る


Summers at Castle Auburn / Sharon Shinn


Summers at Castle Auburn / Sharon Shinn
Ace, 2001.

 薬師の孫娘のコリーは、貴族の御曹子の庶子だった。父親の死後、ジャクソン叔父が彼女を見つけだし、以来、夏の間は父の妻グレタや異母姉のエリサンドラたちとオーバーン城で夏を過ごしている。みんなと同じように、コリーは二つ年上のハンサムなブライアン王子に憧れている。エリサンドラは彼の婚約者だ。

 14歳の夏、ジャクソン叔父は、彼女とブライアンをつれてアリオラ狩りの旅にでかける。他のメンバーは、ブライアンのいとこでコリーとも仲がいいケント、そしてブライアンの毒味役のダミアンと護衛のロデリックの若者たちだ。アリオラは不思議な癒しの魔法を持ち、人と同じように会話する非常に美しい生き物だった。何人ものハンターが彼らの魅力に取りつかれ、二度と戻ってこなかったという。高値で取り引きされ、グレタの一家にも、クレシダがいる。ジャクソン叔父は有名なアリオラの捕獲人だ。もちろん、数日のハイキングのような旅でアリオラが捕まるとはコリーも考えていなかったが、ある晩、彼女は叔父がアリオラの女性と会話している姿を見かける。まるで古くからの知り合いのようだったけれども、夢だったのだろうか。

 三年後の夏も、コリーはいつものようにオーバーン城にやってくる。だが、少し大人になった彼女は、今まで見えていなかったものに気づいていく。来年戴冠する予定のブライアン王子はハンサムなあこがれの相手ではなく、暴力的で他人の気持ちを思いやらない女たらしだったし、ブライアンとエリサンドラは愛し合っているはずだったのに、互いに政略結婚としか思っていない。コリーが城で夏を過ごすのも、私生児とはいえ高位の貴族の娘として価値があるからだった。そして、アリオラたちは拘束具で捕われた奴隷なのだ。エリサンドラはコリーを愛してくれたし、ケントの友情も昔どおりで、クレシダは優しかったが、すべてが変わってしまったようだった。

 そして、次の夏、コリーが到着したオーバーン城では、ブライアンの戴冠式と結婚式の準備で大忙しだった。そんなある日、ジャクソン叔父が突然アリオラの美しい女王を連れてきて、結婚したと告げる。だが、そんなとき悲劇が起こる……。



 主人公のコリーの一人称で語られるファンタジイ。主人公が純真なので、純粋でロマンティックな物語だ。ファンタジイといっても、アリオラという種族がごく普通に物語の風景のひとつとして登場し、主人公が薬師の見習いであるということ以外、特に魔法などが出てくるわけではない。少女の成長と恋を描いた物語である。

 あこがれの対象だったブライアンが悪の権化だったかのように描かれるが、でも、実のところほかのファンタジイ作品に出てくる悪役に比べればそれほどたいしたことをしているわけではない。そういう意味では、ジュブナイルというか少女向けヤングアダルトのかわいらしい物語である。

(2005年4月17日)

レビューの目次に戻る


ホーム レビュー プロフィール リンク English