レビューの目次に戻る


Dead Witch Walking / Kim Harrison


Dead Witch Walking / Kim Harrison
HarperTorch, May 2004.

 その昔、トマトを媒介とした変異ウイルスによる疫病によって、人口が激減してしまった。以来、生物の研究や薬品の製造は違法である。インダ―ランドの住人と称される魔女や吸血鬼や妖精やシェイプシフタ―たちは、ウイルスに抵抗力があったため、いまや普通の人間と同じくらいの勢力になった。インダーランドの住人の存在が公表され、さまざまなトラブルもあったが、いまは普通の人間との間に微妙な均衡を保っている。

 魔女のレイチェルは、インダ―ランドの警察組織であるインダーランド・セキュリティに勤めていた。だが、上司にいじめられてひどい任務ばかり押しつけられていて、ある日、インダーランド・セキュリティをやめる決意をする。それを聞いた友人のアイヴィとピクシィのジェンクスも、一緒に辞めるという。アイヴィは生きている吸血鬼で、インダーランド・セキュリティの腕利きの捜査官である。裕福な一族の出身のアイヴィは、ほとんど全財産を賄賂にして、インダーランド・セキュリティとの契約を無効にした(インダーランドでは契約が重要な意味を持っているのだ)。だが、レイチェルにはそんな金がない。上司はレイチェルだけ辞めようとするのならそのまま解放してくれたはずだったが、アイヴィの辞職に腹を立て、代わりにレイチェルに仕返しを始めた。レイチェルに向かって、様々な黒魔法を仕掛け、暗殺者を送り込んでくる。

 レイチェルはアパートを追い出され、アイヴィやジェンクスの一家と共に、もと教会だった建物を住居兼事務所にして私立探偵業を始めることになる。レイチェルのインダーランド・セキュリティとの契約を白紙に戻すためには、彼らがずっと追ってきていた街の有力者トレントの犯罪の証拠をつかめばいい。レイチェルは次から次へとやってくる暗殺者から逃れつつ、トレントになんとか迫ろうとするのだが……。



 魔女や吸血鬼や妖精やシェイプシフタ―や悪魔が実在するパラレルワールドのアメリカが舞台のファンタジー。魔女で私立探偵の主人公レイチェルの一人称で物語が語られている。悲惨な目にあいつつも大変なところをなんとか乗り越えていく主人公のキャラクターが魅力的だ。ハードボイルドっぽいところもあるが、もっとずっと女性的な雰囲気がする。ただし、甘ったるい感じではない。今後はどうかわからないが、少なくてもこの作品では、ロマンスの要素はそれほどなかった。

 トレントの正体などいろいろ謎が残って、次作以降につながっている。レイチェルの能力にもなにか本人も知らない秘密がありそうで、今後がとても楽しみだ。シリーズの一巻とすれば、いろいろ興味深い物語世界が説明されて、登場人物が紹介されていて、いちおう事件のかたがついていて、納得できるものではないかと思う。

 この作品は作者のデビュー作で、シリーズ第二作のThe Good, The Bad, And The Undeadも既刊で、第三作のEvery Which Way But Deadは六月に刊行予定。 本作品はP.E.A.R.L. (Paranormal Excellence Award for Romantic Literature) AwardsのBest Science Fiction novel部門を受賞し、また、Kim Harrison はBest New Author部門も受賞した。Romantic Times Reviewers Choice awardsの候補作にもなっている。

(2005年4月26日)

レビューの目次に戻る


ホーム レビュー プロフィール リンク English