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Shadows of Myth / Rachel Lee


Shadows of Myth / Rachel Lee
January 2005, LUNA

 意識を取り戻したとき、まわりには多くのむごたらしく殺された死体があった。だが、彼女にはこれまでの記憶がなく、自分が誰かもわからない。他にただ一人生き残っていた少女も、彼女の腕の中で死んでしまう。謎めいた黒衣の剣士アーチャーは、戦士ギリとラサ兄弟と旅する途中、彼女テスを見つけ、街道ぞいの村に連れていく。

 村では早すぎる冬がやってきていて、狩りをするにも動物や川の魚も姿を消していた。このままでは住人たちは飢えてしまい、この冬を乗り切れない。アーチャーたちは異常の原因を調べるために、テスがやってきたと思われる街へ向かって旅に出ることになる。自分の素性を探そうとするテスや、交易ができないか交渉しようとしている村の宿屋の娘サラと門番の息子トムも、彼らに同行することになる。

 旅を続けるうちに、どうやらこの異常には邪悪な魔法がかかわっていることがわかる。テスは夢の中で何者かが彼女に呼びかけるのを聞く。そして、サラは邪悪な存在を感じとっていた。6年前に行方がわからなくなったサラの母親も、魔法の力を持っていたらしい。伝説では、イルドウィンと呼ばれる強い魔力を持った女性たちが存在したという。テスとサラはその魔力を持っているのだろうか。何者かがイルドウィンの血をひくものを集め、邪悪な魔法に利用しているらしいのだが……。



 中世ヨーロッパ風の異世界を舞台にしたファンタジーのシリーズ第一巻。運命に導かれるようにして、6人の仲間が旅立っていく。イルドウィンの女性が十二人集まるまで続くのではないかと思う。サラの母親の謎は明らかになり、アーチャーの正体や邪悪なものの正体も読者にはわかるが、テスの過去は結局謎のままである。サラの恋人になるトムだけが普通の人のようだが、将来の賢者になりそうなだけでなく、もっと何か彼にも起こるのかもしれない。

 テス、アーチャー、サラ、トムや悪い魔術師らそれぞれの視点から物語が語られている。登場人物が記憶喪失であるということ以外、とりたてて新鮮な設定があるわけでもないが、うまく描きこまれていて読みやすかった。なにより、ショッキングな導入部は、とても印象的だった。

 作者レイチェル・リーはSue Civil-BrownとCristian Brownのチームのペンネームらしい。Sue Civil-Brownという筆名でも本が出ている。LUNAで作品を出しているロマンス作家は、ロマンスといってもパラノーマルものやヒストリカルものの作家であることが多いようだが、この作者はミリタリーやサスペンス、カウボーイものなどの、どちらかというと普通のロマンスをメインに活躍してきたようだ。でも、この作品だけ読んだらとてもそうは思えないだろう。

(2005年5月13日)

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