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Paladin of Souls / Lois McMaster Bujold
Paladin of Souls / Lois McMaster Bujold
EOS, Harpercollins, 2003.
魂の守護者 / ロイス・マクマスター・ビジョルド
SFマガジン 2005年 3月号 掲載
ロイス・マクマスター・ビジョルドは、《マイルズ・ヴォルコシガン》シリーズでもうおなじみだろう。そのビジョルドによるファンタジイの新しいシリーズの作品が、ヒューゴー賞や世界幻想文学大賞の候補に挙げられていたThe Curse of Chalionと、今回紹介するその続編で、ヒューゴー、ローカス両賞をダブル受賞した Paladin of Soulsである。
この二作品の舞台は、十五世紀のスペイン統一前のカスティーリャを思い起こさせる王国だ。前作The Curse of Chalionでは、騎士カザリルが主人公で、異国でとらわれの身であった彼が故郷にようやく戻る場面から始まっている。彼は王国の将来を担う若いイセル王女を守る役目をまかされるのだが、国を我がものにしようとする輩から王女を守るだけでなく、王家にかけられた呪いを解放する使命をも課せられてしまう。この作品中で、もう一人の「神々に選ばれたもの」として登場したのが、本作の主人公、イセルの母のイスタ王太后である。イスタはオーラを見る力を神によって与えられたのだが、王家の呪いによって精神の平衡を失っていた。だが、カザリルによって呪いが解かれたとき、彼女も呪いと使命から解放されたのだった。
それから三年後。娘のイセルは国の新しい指導者として立派に成長している。貴族の娘として、王妃として、王位継承者の母として、さらに神々の駒として、自分の意志とは無関係なところで運命を支配されてきたイスタは、今度こそ自分の人生を歩きたかった。そこで、彼女はわずかな供の者だけ連れて、巡礼の旅に出かけることにする。
気楽な巡礼の旅になるはずだった。だが、王国に侵入してきた隣国の部隊が突然現れ、イスタたちは捕虜にされそうになる。それを助けたのは、まるで狂戦士のような戦いぶりをみせるポリフォスの領主だった。イスタたちは国境に近い城に招かれるが、そこで彼の異父弟イルヴィンが奇妙な病で臥せっていることを知る。領主の若い妻によると、イスタらに襲いかかった問題の隣国の王女が少し前に城を訪れたのだが、同行してきた貴族の一人が王女を殺し、イルヴィンに怪我を負わせて逃げたらしい。イルヴィンは一日のわずかな時間だけ意識を取り戻すだけで、だんだんと衰弱しているというのだった。
そんなとき、イスタは夢の中で、再び神に使命を与えられる。その使命はイルヴィンの病に関係しているようなのだが、神の言葉はまるで謎めいていて、彼女が何をしなければならないのかよくわからない。だいたい、なぜ彼女はまた神に選ばれなければならなかったのだろうか。どうやら、亡くなった隣国の王女は悪魔に取り憑かれていて、魔力を使っていたらしい。そうだとしたら、王女の死後、悪魔はどこにいったのだろうか。隣国の侵略の危機が迫る中、イスタは自分に課せられた運命に立ち向かっていく……。
主人公イスタは前作では呪いのためにまるで亡霊のような存在だったが、ここでは自分の意志を持ち、自分自身として生きていこうとする女性である。ごく普通の貴族の娘だった彼女は、つらい記憶や欺瞞、後悔にみちた人生を送ってきた。神々による試練をこなすうちに自分自身も見つけだしていく姿が、彼女の視点からイメージ豊かに描かれている。周りの登場人物もそれぞれに魅力的で、イスタの侍女に雇われる早馬飛脚便の少女の元気のよさや、イスタの護衛をつとめる聖騎士団の隊長兄弟のユーモア、そして、おいしい料理と女性に目のない司祭といった、巡礼に同行する仲間たちが、死や悪を扱っていて暗くなってしまいそうな物語に明るさを加えている。そして、ポリフォスの領主とその妻とイルヴィンの三人の複雑な関係や、彼らに関わりがあることが明らかになるイスタの過去の出来事が、物語に奥行きを与えている。
ビジョルドには魔法が息づく中世ヨーロッパを舞台にしたファンタジイ『スピリット・リング』(創元文庫)もあるが、今度のシリーズはもっと大人向きのファンタジイだ。ぜひ多くの人に読んでいただきたけたらと思う。シリーズの三作目The Hallowed Huntも今年刊行されるそうだ。
(2005年8月1日)
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