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A Thousand Words for Stranger / Julie E. Czerneda
A Thousand Words for Stranger / Julie E. Czerneda
DAW、1997
見知らぬものへの千もの言葉 / ジュリー・E・チェルネイダ
SFマガジン 1999年 11月号 掲載
見知らぬ惑星で意識を取り戻した少女シーラには、それまでの記憶が何もなかった。だが、彼女の頭の中で「ある男を探し、彼の船でこの惑星を出発しろ」という声がひびく。なぜかわからないが、彼女は追われているのだ。彼女を捕まえようと、宇宙海賊や、銀河パトロールのような組織の捜査官たち、そして地球人そっくりだが強力な超能力を持つ〈一族〉と呼ばれる種族が動き出していた。シーラは宇宙港になんとかたどりつき、そこで地球人モーガンに出会う……。
こんな場面から始まる本作は、カナダ人女性作家チェルネイダの第一長篇である。主人公シーラの一人称で物語は進んでいくが、各章の終わりごとに彼女以外の人物の視点によるエピソードがついている。記憶喪失の主人公の一人称だけで話が進んでいたら、とてもではないけど耐えられなかっただろうから、この方法はけっこう成功しているのではないかと思う。物語に話を戻すと……。
モーガンはたった一人きりで船に乗り込む、ちょっと変わりものの星系間貨物船船長だった。シーラは頭の中の声に従って、船に同乗させてくれるよう彼に無理やり頼みこむ。モーガンもある思惑からシーラを船にのせることに同意する。あいかわらず自分のことが何一つわからないままだが、こうしてシーラは宇宙へと旅立つことになったのだった。
モーガンと何日か過ごすうちに、シーラはどんどん彼のことが気になってくる。彼に恋したのだ。だが、初めのうちモーガンはシーラの気持ちになど見向きもしない。実はモーガンは、〈一族〉には及ばないものの、地球人としてはとても強力なテレパスだった。そして、それが原因で孤独な人生を送っていたのだった。その彼がシーラの記憶を探ると、誰かに精神をいじられて記憶喪失になったことがわかる。また、どうやらシーラも超能力者であるらしいことが判明する……彼女は地球人ではなく〈一族〉の一員のようなのだ。
そうするうちに、シーラを捕らえようとする追っ手たちが二人に迫ってくる。命を助けたり助けられたりするうちに、いつしかモーガンもシーラに惹かれるようになっていた。そして、つかの間の平穏な時に、二人は心を通いあわせる……が、その時、シーラは超能力の大きな力に飲みこまれそうになる。気がつくと、彼女はモーガンと離れた場所に瞬間移動していた。なぜか超能力がかなり強力になったようで、そのうえ、大人の女性らしい姿に変化している。
困り果てたシーラは、〈一族〉の追っ手のラエルに助けを求める。ずっと年上に見えるのだが、ラエルはシーラの妹で、シーラを心配して後を追っていたのだった。だが、なぜシーラが記憶をなくしてあの惑星にいたのかは、彼女も知らなかった。今は記憶と共に力も封印されているようだが、シーラは〈一族〉の中で最も強力な超能力者だったという。そして、強力な超能力を持つ〈一族〉の女性が人生の伴侶を決めることには、何か危険をともなう秘密があるらしい。ラエルはシーラを故郷に連れ帰ろうとするが、シーラはモーガンが海賊に捕まったことを知る。彼女は罠だと知りながら海賊の本拠地へと向かった。すべてが、〈一族〉全体の運命を左右する、ある計画の一部だということを知らずに……。
なぜかあちこちから追われている記憶喪失の女性が、孤独をしいられている陰のある男性に出会って惹かれていくなんて、ロマンス小説か何かのようである。でも、それだけでなくて、かなり楽しめる冒険SFにしあがっている。主人公が記憶喪失でわけがわからない状態なので、本当のところ初めの何章かはあまりぱっとしない。だが、そこを越えると、スピード感にあふれる話はこびになる。意外な展開に、途中で何度も驚かされた。
作者の二作目 Beholderユs Eye も、異星人の女の子(?)が主人公で、大宇宙を駆け巡りながらの冒険が楽しめる物語だった。こちらにも地球人男性とのプラトニックな恋愛が出てくるのだが、今度の彼女は本体がゲル状か何かで、姿を自由に変えることができるのである……。また、三作目は本作の続篇 Ties of Power でこの十月に出版される。そのほかに、チェルネイダは学校教育でSFを用いるためのテキストの編著者でもある。
(2000年10月4日)
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