ベンジャミンおじさんの家


 こんにちわ――。
 「ベンジャミンおじさんの家」にようこそ。わたしの名は、ティンカー・ベル。ジェームズ・バリの小説、「ピーター・パンとウェンディ」に出てくるピンク色の妖精です。きょうは特別にあなたの御案内役を務めることになりました。お会いできて大変うれしく思います。
 あなたは、わたしのことをご存じでしょうか。イギリスの子供たちなら誰でも知っているのですけれど。そうですか――それはどうも、ありがとうございます。日本の方たちにもわたしの出てくる本を読んでいただけてるなんて、とてもうれしいことですわ。わたしはこの「ベンジャミンおじさんの家」の中にある、「ピーター・パンの部屋」からやってきました。どうぞ、よろしく。
 あなたの肩に乗ってもよろしいでしょうか。だいじょうぶ、わたしは小さいからそんなに重くはありません――。はい、これでけっこうです。ずっとお話がしやすくなりました。それでは、さっそく説明を始めましょう。
 あなたは、ベンジャミンおじさんをご存じでしょうね。
 おじさんのことは、ニュートンやエジソンのように世界中の人が知っています。おじさんは地震の研究をしたり、雷の正体を確かめたりした人です。そして、世界中の子供たちのために、この「ベンジャミンおじさんの家」を建ててくれました。えっ? いったい、誰のことかって。あらあら、これは困った。世の中には、おじさんのことをぜんぜん知らない人もいるんですね。あんなに有名な方なのに。
 でも、まあいいでしょう。もしもうまくおじさんを捜し出せたら、あなたもきっとあの人が好きになるでしょうから。えっ、なんのことかって?
 あなたはこれから、この家の中でおじさんとかくれんぼゲームをするのです。あなたが鬼で、おじさんが隠れる人。そもそもこれが、あなたにここまで来てもらった理由です。わたしはそのためのあなたの案内役なのです。わたしと一緒に家の中を歩き回って、もしもうまくおじさんを見つけられればあなたの勝ち、見つけられなければあなたの負けというわけ。簡単でしょう?
 それでは、あなたが今いる、この家についての説明をしてあげましょう。
 目の前に何が見えますか。そう、長い廊下が三方向に延びてますね。それが「ベンジャミンおじさんの家」の奥に通じる道です。
 「ベンジャミンおじさんの家」は本と物語の世界でできています。あなたもきっとどこかで読んだことのあるたくさんの物語たち。それらの世界を集めて、一つひとつの部屋に大切におさめてあるのです。
 部屋の中には、昔から人々に読みつがれてきたたくさんのお話の主人公たちが住んでいます。イギリス、アメリカ、フランス、カナダ、そしてあなたの国、日本の物も含めて――。
 あなたはここで、さまざまな小説の登場人物たちに出会うことができるでしょう。あなたが扉を開ければ、みんなは心から歓迎してくれます。あなたはそこで、彼らの一人ひとりと直接言葉をかわすことができるのです。どんな人がいるのかは、入ってからのお楽しみ。みんないい人たちばかりですよ。あなたはきっとこの家が気にいるはずです。そして、みんなが主人公として出てくる本を、ぜひ自分でも読んでみたくなることでしょう。
 ベンジャミンおじさんは家の中のどこかに隠れています。あなたはみんなの部屋を歩き回りながら、どこかにいるはずのおじさんを見つければよいのです。でも、これでは時間さえかければ絶対にあなたが勝ってしまいますね。そこで、あなたの行動に制限をつけておきましょう。
 サイコロを一つ振って下さい。出た目に12を足します。いくつになりましたか。はい、それでは手を出して――。その数だけ、美しい銅貨をさしあげますから。(サイコロはそのまま持っていって下さい。家の中で使うこともありますから)
 きれいでしょう。これは妖精の使うお金です(メモに数を書いておいて下さい)。この家の中では、一つひとつの部屋をおとずれるときの入場料になる物です。つまり、「扉を開けて部屋に入る」とパラグラフに書いてあったら、そのたびに銅貨の数をメモから1枚減らして下さい。そうすれば、その部屋に1回だけ入ることができます。あとは中で、そこの指示にしたがえばよいのです。
 部屋の中には物語の世界が広がっており、あなたはそこに自分で参加することになります。ほとんどは登場人物になにかをお願いされることでしょうが、あなたはできるかぎりその頼みを聞いてあげねばなりません。代わりに、みんなはきっと何かのお返しをしてくれるはずです。そのあとで部屋を出るときにはお金はいりませんが、もう一度同じ部屋に入るなら、やはり入場料を払って下さい。
 場合によっては、登場人物の好意で銅貨が増えることもあります。もちろん、あなたが何かをしてあげたときだけです。でも、そんなことはめったに起きません。むしろ、あなたが物語の世界でなにかの失敗をするたびに、お金は確実に少なくなっていくでしょう。上手に使わないと、家の中を歩き回るうちに銅貨はどんどん減ってしまいますよ。
 こうして、もしもおじさんを捜す途中でお金が全部なくなってしまったら、それでゲームはおしまい。あなたの負けになります。なぜって、扉を開けられなくなるのだから。わかりましたか。
 それから、部屋によっては、あなたは買い物をすることもできます。もちろん、これにも銅貨を使って。そのときにもお金は減っていきますから、注意して下さい。むやみに不必要な物まで買わないこと。でも、ときには本当にいる物だってあるでしょうから、ケチなことばかりするのがいいわけではありませんけど。
 そうそう。できることなら、歩きながら地図を作るといいですよ。同じ部屋に何回も入ってしまうなどということを防げますから。もしあなたに迷わない自信があるのなら、わたしはどっちでもかまいませんけどね。いずれにせよ、わたしはずっとあなたの肩に乗っていきます。いいでしょう?
 さて、それでは出発しましょうか。いまわたしたちは、「ベンジャミンおじさんの家」の一番南側にいます。に進んで下さい。

 ここはスタート地点の三叉路です。東に行きますか(12へ)、西に行きますか(へ)、それとも北に行きますか(へ)。

 あなたは、緑色の扉の前に出ました。道は東に延びているだけです。扉を開けてみましょうか(へ)、それとも東に行きましょうか(へ)。ただし、扉を開けて部屋に入るなら、さっきわたしが言ったように銅貨を1枚減らして下さい。

 扉を開けると、ここはどこか田舎の村のような所です。目の前には大きな家が建っていて、集まった少女たちがなにかをしています。おや? 真っ赤な髪の女の子が屋根に登っていますね。なにをしてるのかしら。そばにいる一人に声をかけてみましょうか(へ)、それともさっさと部屋を出ましょうか(へ)。

「何をしているのですか」
「アン・シャーリーが、ジョシー・パイと賭けをしているのよ。あの屋根を渡れるかどうかでね」
 どうやらここは、赤毛のアンの部屋みたいですね。どうしましょうか。危険だからと言ってとめるなら
へ、黙ってみているならへ。

「じゃあ、あなた代わりにわたってみなさいよ」
 これはジョシー・パイの声です。しかたがない。屋根に登って下さい。サイコロを振って出た目が偶数なら
へ、奇数ならへ。

「あっ!」
 あなたが見ている前で、アンが屋根から落ちてしまいました。
「誰かっ、お医者さまを呼んで!」
 アンの友達のダイアナが叫んでいます。でも、誰がお金を払うのかしら。ここには、子供たちしかいないのに――そう、わかりましたね。あなたの持っている銅貨を3枚だけ誰かに渡して下さい。黙って見過ごしてはいけなかったのです。そのあとで部屋を出ましょう。
へ進んで下さい。

「あっ!」
 あなたはものの見事に、屋根から落ちてしまいました。そのひょうしにポケットから財布が飛び出して、銅貨があたりに散らばってしまいます。急いで探したけれど、最初より3枚だけ少ない数しか見つかりませんでした。がっかりです。メモから銅貨の数を減らして、扉を出て下さい。
へ。

「やったあ!」
 あなたは女の子たちの前で、見事に屋根を渡りきりました。
「ありがとう」
 アンがそういって、あなたにパンを1切れくれました。それを持って部屋を出ます(メモに書くこと)。
へ。

 ここは真っ青な冷たい扉の前です。道が南に延びています。扉を開けて部屋に入るなら10へ、道を南に行くのならへ。

10

 入るときに、銅貨を1枚支払うのを忘れないように。はい、けっこうです。さてここは真冬の街角です。雪が降りつもる道を、人々が忙しく行き来しています。あら、あれは誰でしょう。小さな女の子がマッチを売っています。そう、ここはアンデルセンの部屋なのです。彼女からマッチを買ってあげるなら11へ、このまま外に出てしまうならへ。

11

「ありがとう。マッチの値段は銅貨1枚です」
 少女はうれしそうに、あなたからお金を受け取りました。マッチを持ち物に加えて下さい。そのあとで部屋を出ます。
へ。

12

 古風な木の扉の前に出ました。銅貨1枚を支払って入るなら13へ、扉の前の道を行くならそれは西に向かっていますのでへ。

13

 部屋に入ると――。
「おや、これはこれはティンカー・ベルがお客を連れて来たようだ。ワトスン君、珍しい人が来たぜ」
 この人はあのイギリスの名探偵、シャーロック・ホームズさんです。おや、なにかを頼んでますよ。
「すみません。タバコに火をつけたいのでね、ライターかマッチを貸してくれませんか」
 あなたはどこかでマッチを買いましたか。買ってあるなら
14へ、なければしかたありませんから部屋を出ましょう、15へ。

14

「ふう。いや、これはどうもありがとうございます。ワトスン君、この人になにかお礼はできないかな。ええと、あなたはどこに行くのですか」
「ベンジャミンおじさんを探しているのです」
「それなら、どこかにある石の扉の中でしょう。もしも石の扉にぶつかったら、アリババの使った呪文をとなえなさい。きっと開きますから」
 さあ、部屋を出て出発です。
15へ。

15

 ホームズさんの部屋には、出口が二つあります。西から出るなら12へ、北から出るなら16へ。

16

 ここは茶色い木の扉の前です。開けて入るなら13へ、前の道を北に向かうなら17へ。

17

 わたしたちは南北に延びる道の真ん中にいます。東側に、日本の木戸のような扉があります。これを開けるなら18へ、南に行くなら16へ、北に行くなら20へそれぞれ進んで下さい。

18

「吾輩は猫である。名前はまだ無い」
 おやおや、古風な造りの日本間に出たと思ったら、言葉をしゃべる猫が出てきましたね。なにか言っていますよ。
「実は吾輩、ひどく空腹でな。なんぞ、食べ物をくれないか」
 食べ物をあげるなら
19へ、そんな物を持っていない、あるいは持っていてもあげる気がないなら、外に出ることにして17へ。

19

 ではメモから、渡した食べ物を消して下さい。猫は喜んで食べはじめます。代わりになにかをしてくれないのかしら。
「ときに、お礼がわりに教えてさしあげたいことがあるのだが」
 ほうら、やっぱり。
「ローラという名の少女に出会ったら、その部屋の南の扉は開けないほうがいいぞ」
 覚えておきましょう。そのあとで出発です。
17から外に出て下さい。

20

 三叉路に出ました。西に行くなら21へ、南に行くなら17へ、北に行くなら25へ。

21

 ここはきれいな草色の扉の前です。開けるなら22へ、道を東に戻るなら20へ。

22

 ここはアルプスの牧場です。向こうで声がします。
「クララ、がんばって!」
 あれはハイジが、友達のクララの歩く練習を手伝っているところです。クララは長い間、車椅子で生活していました。さあ、わたしたちも行って手を貸しましょう。サイコロを振って下さい。1、2、3が出たら
23へ、4、5、6が出たら24へ。

23

「だめ、できないわ、ハイジ」
 残念。どうやら、わたしたちの手伝いも無駄に終わったようです。悲しいことですが、クララが歩けるようになるには、まだ少し時間がかかるのでしょう。あきらめて戻りましょう。もしも、もう一回手伝うなら、一度外に出てここに入りなおす必要があります。もちろん、入場料を払って。
21へ。

24

「やった! できたわ、ハイジ」
 とうとう、クララが歩き出しました。わたしたちも少しは役に立てたのでしょうか。ハイジがとっても喜んでいます。
「ありがとう、お礼にこれをあげるわ」
 おいしそうなチーズをくれました。それを持って外に出ます。
21へ。ただし、またここに来てもハイジとクララはいなくなっています。それを覚えておいて下さい。

25

 わたしたちは曲がり角に来てしまいました。西に行きますか(26へ)、南に行きますか(20へ)。

26

 こんどは深い海の色の扉の前です。開けるなら入場料を払って27へ、戻るなら東に向かって25へ。

27

 まぶしい! ここは海辺です。真夏の太陽がギラギラ輝いています。でも、向こう岸には行けそうもありません。わたしの体の粉をあなたに振り掛ければ空を飛べるようになるのですが、それは反則です。どうしましょう。しばらく歩き回るなら28へ、あきらめて外に出るなら26へ。

28

 あら、あれは誰でしょう。砂浜のほうから、白いひげをはやしたおじさんがやってきます。もしかして、ベンジャミンおじさん? いえいえ、全然ちがう人です。でも、なにかを言っているようですね。
「海を渡りたいのなら、手伝ってあげるよ」
「どうやってですか」
 サイコロを振りましょう。出た目が1、2、3、4のどれかなら
29へ、5か6なら30へ。

29

「これを見たまえ。私の作った大砲だ。銅貨3枚で君をこの弾丸に乗せて、撃ちあげてやるぞ」
 そんなことをしても大丈夫なのかしら。勇気を出して大砲に乗るのならお金を払って
31へ、やめて部屋を出るなら26へ。

30

「これを見たまえ。私の作った潜水艦ノーチラス号だ。銅貨1枚で君を乗せていってやるぞ」
 そうするならお金を払って
31へ、やめて部屋を出るなら26へ。

31

 わたしたちは無事に向こう岸(今はこちら岸ですけど)につくことができました。おや、今のおじさんが叫んでますよ。
「おおい、私の名はジュール・ヴェルヌ。覚えておいてくれよ」
 いつまにか、西側に扉が現れています。外に出ましょう。おや、閉めたとたんに扉が消えてしまいましたね。道はさらに西に向かっています。出発。
32へ。

32

 ここはまたも三叉路です。東に向かうのなら33へ、西に向かうのなら57へ、南に向かうのなら34へ。

33

 あなたは、ヴェルヌの部屋の扉が消えてしまったのを忘れたのですか。ここは行き止まりです。西に戻りましょう。32へ。

34

 ここは雪のように白い扉の前です。道は北に続いています。中に入るなら35へ、道を行くなら32へ。

35

 森の中に入ってしまったようです。どこからか、誰かの泣き声が聞こえてきませんか。ああ、わかりました。あそこで七人の小人が、きれいなお姫さまの亡きがらを前にして泣いているのです。あれは白雪姫? かわいそうに、毒のりんごを食べたのでしょう。でも、小人の一人がなにか言っていますよ。
「あああ、パンが1切れあれば、姫を助けられるのだがなあ」
 あなたは、パンなんか持っていましたっけ。あれば
36、なければ37へ。

36

 では、姫の口に入れてあげましょう(あなたのメモからは消すのですよ)。
「あ、あ、あ、姫」
「やった! 生き返ったぞ」
 白雪姫はぱっちりと目を覚ましました。
「ありがとう。これを持っていって下さい」
 大喜びの小人たちは、あなたに革の袋をくれました。中には――銅貨が3枚入っているではありませんか。おさいふに加えましょう。
38へ。

37

 では、しかたありません。あなたは王子さまではありませんから、キスをしても白雪姫を生き返らせることはできないのです。あきらめましょう。彼女には、いつかきっとすばらしい人が助けにあらわれますから。38へ。

38

 さて、この部屋には出口が二つあります。南から出るなら39へ、北から出るなら34へ。

39

 ここは雪のように白い扉の前です。道は南に向かっています。扉を開けるなら35へ。道を進むなら40へ。

40

 こんどは明るい水色の扉の前に出ました。それを開けるのなら41へ、前の道を北に行くのなら39へ。

41

 真昼の大草原に出ました。見渡すかぎりの、草、草、草。ほかにはなにも見えません。さわやかな風が吹いています。ところであなたは、前にこの場所で誰かを助けましたか。そんな経験があるのなら45へ、ここに来るのが初めてか、あるいは誰かを助けるのに失敗したのなら42へ。

42

 あら、あそこで誰かの馬車がみぞにはまって、動けなくなっていますよ。行ってみましょう。ああ、どうやらアメリカ人の開拓者の一家が引っ越し中なのですね。女の子が三人まじっています。真ん中の娘が話し掛けて来ました。
「わたしの名は、ローラ・インガルス・ワイルダー。どうか、とうさんを手伝ってあげて下さい」
 サイコロを振って、1か2が出たら
43へ、3、4、5、6のいずれかが出たら44へ。

43

 あなたが、ローラのとうさんと一緒に馬車を持ちあげると――それは少しずつみぞから出てきました。
「もう一息、それっ」
 やったあ! ついに馬車が動きました。お礼にローラのとうさんが銅貨を4枚もくれます。これから彼らは、大草原の小さな家に向かうのでしょう。あなたは彼らと別れて
46へ。


44

「えいっ、えいっ」
 だめですか。もう一度――「えいっ」
 どうやら、あなたとローラのとうさんだけでは力が足りないようですね。しかたがありません。ほかの誰かがとおるまで、ここで待ってもらいましょう。あなたはローラにあやまります。
「ごめんね。代わりに君たちにこれをあげよう」
 三人の女の子に銅貨を1枚ずつ。そのあとで
46へ。

45

 では、ここでは誰にも会うことはできません。ローラは、大草原の小さな家に行ってしまったのだから。46へ。

46

 さて、草原の真ん中には四つの扉があります。どれから外に出ましょうか。東なら47へ、西なら54へ、南なら50へ、北なら40へ。もしもどこかでしゃべる猫に会ったなら、彼の注意も忘れずに。

47

 ここは水色の扉のある所です。開けて中に入りましょうか(41へ)、道を東に向かいましょうか(48へ)。

48

 ここは桃色の扉の前です。部屋に入るのなら49へ、道を西に戻るのなら47へ。

49

 昔の日本の村みたいな場所に出ました。見ると、「日本一」という看板を出したおだんご屋さんがあります。店員は犬と猿ときじ。誰が開いたお店なのかは、あなたのほうがよく知っているでしょう。きびだんごを1つ銅貨3枚で売っていますけど、どうしましょうか。買うならお金を減らして持ち物に加えて下さい。実はチーズ1切れと交換してもいいのですけど。もちろん、買わなくてもけっこうです。そのあとで48から外へ。

50

 ここはきれいな水色の扉の前。ここから入るのなら41へ、道を南に行くのなら51へ。

51

 さあて、真っ黒な扉がありますよ。なんだか怖そうですね。勇気を出して入るなら52へ、北に戻るなら50へ。

52

 ここはいったい、どこなのでしょう。真っ暗で何も見えません。外に出るしかなさそうです。53へ。

53

 ここは今の黒い扉の前――あら、どうかしましたか。え、財布が軽くなった? 中を見ると――銅貨が5枚も減っているではありませんか! 代わりに名刺が入っていますね。そこにある名前は――「アルセーヌ・ルパン」
 では、今の部屋はルパンの住処だったというわけ。残念ですが、銅貨はもどってこないでしょう。ルパンに取られたのだから。とにかく北に戻りましょう。
50へ。

54

 さて、わたしたちは明るい水色の扉の前にいます。道は西へ。扉を開けますか(41へ)、道を行きますか(55へ)。

55

 曲がり角に来ました。東に行くなら54へ、北に行くなら56へ。

56

 さてここは、ふわふわしたミルク色の扉の前です。道が一本南に延びています。扉を開くのなら58、道を行くのなら55にそれぞれ進んで下さい。

57

 わたしたちはやわらかいミルク色の扉の前にいます。道は東に一本。これを行くなら32へ、扉を開けるなら58へ。

58

 おやおや、ここはどこなんでしょう。いすやテーブル、壁の絵、なにもかもが小さな部屋のすみっこで、見上げるように大きな女の子が泣いています。
「どうしたの。あなたは誰?」
「あたしの名はアリス。体が大きくなってしまって動けないの。なにかを食べれば縮むんだけど」
 パンをあげるなら
59へ、おだんごをあげるなら61へ、チーズをあげるなら60へ、なにも持っていないか、あってもあげないで出ていくなら62へ。

59

「きゃあ!」
 失敗。アリスは逆に大きくなってしまいました。あなたはあわてて外に飛び出します。もう一度ここに来て、別の食べ物をあげるしかないでしょう。
62へ。

60

「きゃあ!」
 失敗です。アリスは逆に大きくなってしまいました。あなたはあわてて外に飛び出します。もう一度ここに来て、別の食べ物をあげるしかないでしょう。
62へ。

61

「うわあ!」
 アリスが嬉しそうに叫びます。彼女の体がみるみる縮んで行くのです。
「ありがとうございます」
 あら、今までアリスの体で見えなかったけど、北側にかわいらしい扉がありますよ。ここから向こうに行くなら
63へ。ほかの扉から出るなら、62へ。

62

 では、この部屋にある二つの扉のうち、どちらをくぐりましょうか。東なら57へ、南なら56へ。

63

 さっと、外に出ると――わたしたちの後ろで、さっきのジュール・ヴェルヌの部屋と同じように、扉が消えてしまいました。もう北に進むしかありません。64へ。

64

 あなたは南北に延びた道の真ん中に出ました。西側に、木の板でできた粗末な扉があります。これを開けるなら66へ、南に行くなら65へ、北に行くなら67へ。

65

 あらら、行き止まりですね。よく考えたら、ここはさっき扉が消えた場所でした。引き返しましょう。64へ。

66

 中に入ってみると――今の扉と同じような、木の板塀の前です。なんだかそばかすだらけの、きたない男の子がその塀を塗っています。
「やあ、ぼくの名はトム・ソーヤー。塀塗りを手伝ってくれないか。代わりに銅貨を2枚あげるよ」
 もちろん、そうするでしょうね。では、銅貨を2枚増やしてから外に出て下さい。ただし、ふたたびこの部屋をおとずれても、トムはいなくなっています。
64へ。

67

 曲がり角に出ました。北側に扉があります。角を東に行くのなら72へ、南に行くのなら64へ、扉からそこの部屋に入るのなら68へ。

68

 ここは大きな森の入り口です。そばで、むぎわら帽子をかぶった男の人が、なにかを探しています。
「なにをやっているのですか」
「いやなに、蜂をつかまえているんだ」
「あなたは、どなた?」
「アンリ・ファーブルという」
「では、『昆虫記』の作者ですね」
「そうだよ。ところで君たち、私の仕事を手伝ってくれないか」
「蜂をつかまえるんですか。なんだか怖いなあ」
 手伝うなら
69へ、ことわって外に出るなら67へ。

69

 サイコロを振って下さい。1、2、3、4のどれかが出たら71へ、5か6が出たら70へ。

70

「ありがとう。これで次の『昆虫記』が書けるよ。お礼にこの虫をあげよう」
 なんでしょう。きゃっ! 蜘蛛ではありませんか。えっ、持っていくのですか。わたしは蜘蛛が大嫌いなのに。でも、しかたありませんわね。それを持って外に出ましょう。
67へ。

71

「うわあっ!」
 あなたは蜂に刺されてしまいました。そのひょうしに、財布がポケットから落っこちて――あらあら、銅貨が3枚減っていますよ。どこかにころがっていませんか。そうですか。ならば、しかたがありません。あきらめましょう。がっかりして外に出ます。
67へ。

72

 わたしたちは、真っ赤な色をした無気味な扉の前に出ました。いつものとおり、開けて中に入るなら73へ、道を西に戻るのなら67へ。

73

 なんだか、気味の悪い所に出ましたね。いやな臭いがします。目の前に見えるのは――ひげをはやした恐ろしい男が、深い血の池の中で苦しんでいるようすです。ここは、地獄なのです。男がうめいています。
「わしの名はカンダタ。大泥棒だったのが、地獄に落ちてしまった。蜘蛛の糸が下りてくれば助かるのだが」
 あなたは、蜘蛛を持っていますか。あれば
75へ、なければ74へ。

74

 では、カンダタを助けることはできません。部屋を出ましょう。72へ。

75

 あなたの手から、細い蜘蛛の糸がそろそろと下りていきます。カンダタはそれにつかまりました。とたんに――血の池が消えて、カンダタはしっかりとした大地に立っているではありませんか。お釈迦さまが許して下さったのです。同時に、向こう側に新しい扉が現れました。この扉から外に出るなら76へ、さっきの入ってきた扉から出るなら72へ。

76

 扉は後ろで消えてしまったようです。わたしたちは東に進むしかありません。77へ。

77

 さあ、いよいよゴールは近いようです。わたしたちは、頑丈そうな灰色の扉の前に来ました。開けてみるなら79へ、いやいや、一度戻って考えなおそうというなら78から東に向かって下さい。

78

 道は行き止まりでした。どうやら、今の扉を開けるしかなさそうです。77に戻って下さい。

79

 扉を開けると――なんてことでしょう。もう一枚の、石の扉があるではありませんか。あなたはシャーロック・ホームズさんから、この扉の開け方を聞いてきたでしょうか。もしも聞いてあるのなら80へ、聞いてなければ81へ。

80

 ホームズさんは、なんと言ってたかしら。たしか、「アリババの呪文」とか。では、叫んで下さい。
「開け、ゴマ!」
 とたんに、ガラガラと音を起てて、石の扉が上がります。中へ。
85に進んで下さい。

81

 では、どうしましょうか。おや、よくみるとこう書いてありますよ。
「この扉を開けるなら、横の穴に銅貨1枚を入れること。ただし、必ず開くとは限らない」
 これをやるしかないようですね。銅貨を1枚入れたあとで、
82へ。

82

 それでは、サイコロを振って下さい。1か2が出たら83へ、3、4、5、6のいずれかなら84へ。

83

 やったあ! ガラガラと音を起てて、石の扉が上がっていきます。中に入りましょう。85へ。

84

 あれ? 扉はうんともすんとも言いませんね。どうやら失敗のようです。でも、ほかに方法はありません。もう1枚銅貨を入れて、82へ。

85

 ここは木でできた小屋の中です。外では雨がザアザア降っており、雷の音が聞こえます。あら、あそこにいるのは誰かしら。どこかで見たような――まあ、ベンジャミンおじさん! こんなところにいらしたんですか。ずいぶん探したんですよ。え? なんですって。86に進め。はい、わかりました。そうすることにいたしましょう。







































86

「ごくろうさん。どうやら、私の負けのようだね。よく見つけられたものだ。ティンカー・ベルの案内があったにしても、この家の中を歩くのはさぞ大変だったろう。でも、楽しかったかな。私の作った家には、いろいろな面白い連中が住んでいる。君は、その中の何人に出会えたかね。
 いま私が何をしているのかを教えてあげよう。それにはまず、外を見てもらわねばならない。雷が鳴っているね。私は、あの雷という物は、実は電気の作用ではないかということに気づいたんだ。君たちの時代には常識かも知らんが、それは、私が証明してみせたんだよ。
 これを見たまえ。なんだかわかるかね。そう、凧だ。私は雷が鳴っている最中に凧を上げて、その糸に電気をつたわらせようとしたんだ。この実験は大変にうまくいった。糸を伝わって下りてきた電気は、見事に下のライデンびんにためることができたというわけだ。なに? ライデンびんなど知らぬ? 君たちの時代にある『コンデンサー』の旧式なやつさ。『POPCOM』の読者なら、なんのことだかわかるだろう。
 しかしまあ、この実験は絶対にまねをしてはいかんぞ。あとで考えると、私は運が良かっただけらしい。普通にやったら、まずまちがいなく感電して死んでしまうからな。夏に凧など上げないことだ。
 さあ、私が誰だかわかったかね。私は、この『ベンジャミンおじさんの家』の創始者だ。この家は世界中の本を集めて作ってある。みんなにもっと本を読んでもらおうと思ってな。いまでは街角のどこかに、必ずこの『本の家』が見られるはずだ。人々はこれを、『図書館』と呼んでいるがね。
 そう、凧を上げて雷の正体を確かめ、世界で初めての図書館を建てた私の名は――。
 ベンジャミン・フランクリンというのだ。興味があったらどこかで、私の書いた本も読んでみてくれるといい。『フランクリン自叙伝』といって、たいていの図書館にはおいてあるはずだから。
 では、またどこかで会うとしよう。私の名前をよく覚えておいてくれたまえよ。きっと、歴史の授業で君におめにかかるだろうから。でも、今はとりあえず――。
 さようなら……」

◆    ◆    ◆

 このゲームを制作するにあたり、以下の人々の著作を参考にさせていただきました。(アイウエオ順・敬称略)
 芥川龍之介、ハンス・クリスチャン・アンデルセン、ジュール・ヴェルヌ、ルイス・キャロル、グリム兄弟、ヨハンナ・スピリ、アーサー・コナン・ドイル、マーク・トウェイン、夏目漱石、ジェームズ・バリ、アンリ・ファーブル、ベンジャミン・フランクリン、ルーシー・モウド・モンゴメリ、モーリス・ルブラン、ローラ・インガルス・ワイルダー、そして、「桃太郎」と「アラビアン・ナイト」の名もない作者たち。
 非礼をおわびするとともに、ここに深く感謝いたします。願わくば、このゲームの読者の方々にも、これらの人たちの小説が広く読まれることを祈って――。


初出:月刊「POPCOM」1986年9月号、小学館




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