Created: April 17, 2003. Updated: July 20, 2003.

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ドイツと自転車

2003年4月13日、自転車社会学会の掲示板で「JR東日本初のサイクルトレイン」の話題が出ました。 その流れで、参考までにと「鉄道への自転車持ち込みドイツの場合」、を投稿しました。

それに対する主催者である門岡さんのコメント、「なぜ、ドイツではサイクルトレインが普通に存在しているのだろう。」に触発されて、自転車乗りの目で見たドイツを記しておこうと思い立ちました。

ドイツではサイクルトレインが普通にあること、自転車が好ましい扱いを受けていること、その背景を記しておくことは、いずれ日本がそうなる日のために参考になると思います。

ドイツで自転車は快適なのか?

こちらで生活する日本人の大半には不評です。 怖くて乗れないと口をそろえて言います。

なんで車道を走らなければならないの? すぐ隣を車が100km/hで飛ばしていくのに!

数少ない(!)自転車が趣味の知人は、乗りやすい、安心、快適と言います。

幅寄せはされないし、クラクションもならされない。 追い越すときは間隔を大きくあけてくれるし、追い越せないときはじっと待ってくれる。 左折レーン(ドイツは右側通行)だって堂々と使える。

どちらが本当なのでしょうか。

ドイツの道路

自動車の通る道

自動車の通る道は大きく分けて、アウトバーン、一般道、市街地の区別があります。

アウトバーンは、速度無制限の高速道路として有名です。 一般道は基本的に100km/h制限です。 市街地は基本的に50km/h制限で、中心部や住宅地は30km/h制限、ところにより20km/h制限になります。

自動車が通れない道

自動車社会のイメージがあるドイツですが、実は自動車では通れない道というのがたくさんあります。

住宅地の道は、「居住者およびそこに用事のある人の車のみ通行可」という制限のあるところが大半です。 通り抜けしようとしているところを見つかると罰金です。 団地の入り口にゲートが設置されているところもあります。

農道も農作業のためではない自動車の通行は禁止されています。

自転車コースの多くはこのような「自動車の通らない道」をつなぎ合わせて設定されています。

なぜそうなっているのか?

自動車の通行が制限されている道というのは、日本ではあまり考えられません。 本当にみんなそれを守っているのか? 交通渋滞は起こらないのか? 疑問はいくつも出てきます。

通行の制限はたいてい守られます。 警察のチェックがわりと頻繁に行われているのと、常習者は地元の人に通報されてしまうからです。

ドイツの町と町は互いに独立していて、大都市への一極集中がそれほどありません。 道路もそれを反映して幹線 - 枝道 の構造ではなく、網目状に発達しています。 人の流れが分散しているので交通渋滞が起こりにくくなります。

農道や住宅地の道路は、大きな網の中のさらに細かい網にあたります。 それならわざわざ罰金の危険を冒してまで通るのは割にあいません。 ということで、ドイツに裏道ガイドはありません。

道交法

日本とドイツの道交法は基本的にいっしょです。 相違点は、道路の右を走るか左を走るかの違いくらいです。

大きく違うのは、その運用のしかたです。

規則は規則

日本では道交法はタテマエで、厳密には法律違反でも周りに合わせた運転を求められます。

これ、ドイツでは全部NGです。 守らない人は例外といっていいでしょう。 ドイツは民度の高い国なのでしょうか?

モラルに頼らない仕組

ドイツの人がルールを守るのは、そうすることでコストが抑えられるという面が大きいようです。

例) 速度違反の扱い

町の入り口にはオービスが設置されています。 そしてこれは+1km/hの超過から反応するとされています。

罰金の徴収も簡単で、後日罰金の額が印刷された振込用紙が送られてきて、それに自分の口座とサインを書いて銀行のポストにいれて終了です。 軽微な違反であれば、免許証の点数は引かれず、罰金の徴収のみです。

ほぼ例外なく違反の罰金を払わねばならないのであれば、ゆっくり走ったほうがいいですね。 速度違反が危険なのは、低速で走らなければならない所なので、理屈にも合っています。

反対に、速度の出るところでネズミ捕りをして、「運が悪かった」という気にさせるやり方は効果があるのでしょうか?

例) 弱者保護の徹底

信号の無い横断歩道に人が立っていたらどうしますか? 日本であれば停まる自動車はめったにありません。

そんなことをしたら教習所では落第でしたね?

ドイツでは、急ブレーキになろうとも停まります。 追突の危険は? と思うでしょうが、横断歩道で停まるのが当たり前の社会ではそんなところで追突するほうがおかしいのです。

車道を自転車が走っていたらどうなりますか? 日本であればクラクションを鳴らされたり、幅寄せの意地悪をされたりするのは、珍しいことではありません。

日本では車両を追い越すとき、"道路交通法 第四節 第二十八条" において、「できる限り安全な速度と方法で進行しなければならない。」とされています。

自転車で車道を走行中、怖い目にあうということは、十分にこの法律が守られていないか正しく認識されていないということでしょう。

ドイツでは追い越せるところまで待って、十分な間隔をあけて追い抜いて行きます。

これらのことは自動車運転者のモラルが高いわけではなく、対人事故のペナルティが大きいからです。 それは軽微な速度違反だと小額の罰金だけで、赤信号無視は高い罰金と免許の減点があることからも伺えます。

自転車とはいえ車両である

自転車とはいえ、立派に一つの車両として扱われます。 たとえば横断歩道に人がいる場合、自転車であっても停止しなければなりません。 ほかにも、

一方通行、進入禁止、歩道は「自転車を除く」の但し書きが無い限り、自転車にも有効です。 日本ではあいまいに扱われるところですが、ドイツではきっちり注意を受けます。 赤信号無視の自転車の人から罰金を徴収している場面をテレビで見ました。 運転免許証の提示も求められていましたから、点数も引かれるというのは本当のことのようです。

規則を守らないことに対して、自転車であっても「見逃し」てくれません。 警察だけでなく、一般市民が注意をしてきます。 悪質な場合は通報されることもしばしばあるとか。

小学生までは例外で、自転車に乗っていても歩行者扱いになります。 歩道を走っても良いことになっています。

小さい子供の自転車には旗がついていることが多いです。 これは規則ではありませんが、いい習慣です。

教育の成果

この辺りでは親子連れでサイクリングをしているのを良く見ます。 親が自転車の走り方を子供に教えている光景は珍しくありません。 学校でもたびたび道交法の教育をするそうです。 ADFC(全ドイツ自転車クラブ)やADAC(全ドイツ自動車協会)でも定期的に自転車の乗り方を指導しています。

自転車の立場を明確にすることは、自動車を運転するときにも役立ちます。 弱者保護の原則を徹底できるのです。 日本で車道を走る自転車に対し、少なからず嫌がらせをする自動車の運転者がいます。 その大半は自転車が車道を走ることを知らない上での行動のように思います。

ヘルメットの重要性も理解されており、7割程度の子供が着用しています。 大人であっても半数は着用しています。

感心するのは、子供でも老人でも乗車姿勢がきちんとしていることです。 足がべったりと地面につくようにとサドルを下げている人は見かけたことがありません。

公共交通との連携

ドイツでは自転車を鉄道にそのまま乗せることができます。 自転車持ち込みはこんな感じです。

列車の種類 (日本で相当するもの) 状況 持ち込み料金
市街鉄道 (地下鉄) 自転車の固定具は何もなし。 自転車を持ち込む人は出入り口のあたりで自転車と一緒に立つ。 通勤時間帯は持ち込み禁止、出入り口あたり二台まで、という制限がある。 地域、運営組合によって違う。 通勤時間以外は無料というところが増えてきた。 有料であっても大人運賃の半額 = 子供・犬と同額というところが多い。
近距離鉄道 (普通列車) 跳ね上げ式の椅子のついた車両があり、自動車のシートベルトの先にフックをつけたような固定用のベルトがある。 3Euro(360円くらい)
遠距離鉄道 (急行、特急) 座席が半ぶんくらい無い車両があり、駐輪場にあるような前輪を入れるタイプのラックが設置されている。 駐輪場で良く見る互い違いに高さを変えてあるものや、自転車をぶら下げるように置くタイプもあり、10台くらいは余裕で乗せられる。要予約。 8Euro(960円くらい)、国際鉄道は 10Euro(1200円くらい)
クーリエ 自転車を自宅から引き取り、指定した時間に目的地に送ってくれる。 もちろん分解せずに送れる。 基本料金24.1Euro、3台目以降は割引。

ちなみに、ドイツの超特急ICEでは自転車は分解して袋に入れなければなりません。 どの列車でも日本のように自転車を分解して輪行すれば別料金は取られません。

バスへは基本的に自転車をそのまま持ち込めません。 たまにOKのこともあります。

駅舎の対応

自転車利用者は健常者だから自分の自転車くらい担げるという理屈? 駅に改札が無いのは、自転車持ち込みにはプラスに働いています。 。

ADFC(全ドイツ自転車クラブ)の活動

パンフレットによると以下のようなことを行っています。

Radwegの調査

Radwegとは自転車ルートという意味です。 ADFCでは自転車で利用しやすい道の調査をして、地図を発行したり看板の整備をしています。 看板は15cm角くらいの小さなもので、要所要所に設置されています。

Radwegは自動車が通れない道や交通量の少ない道をつないで設定されています。 走りやすい道に自転車を誘導することで自動車と自転車の交通を分離することに成功しています。

よくドイツの自転車政策として話題になる自転車レーンは、車と並走せざるを得ない都市部の限られた部分に設置されています。 車道に線を引いただけの簡単なものが大半です。 (Stuttgart周辺の状況。町によって対応がさまざま。)

公共交通機関との連携の改善

最近のドイツ国内の長距離列車のダイヤ改正は、自転車旅行者には不利になるものでした。

自転車持ち込みのできる長距離列車の本数が減り、そのぶんICEに格上げになった列車が増えました。 ICEだけは自転車をそのまま持ち込むことができません。

ADFCでは、ICEへの自転車持ち込みを認可するか、自転車持ち込みのできる長距離列車の本数をもとにもどせ、というキャンペーンを行っています。

駐輪場・放置自転車

ドイツで放置自転車はあまり問題になっていません。

ドイツはまだまだ小売店が健在で、パンはパン屋さん、肉は肉屋さんで買う人が多いです。 一つ一つの店が小さいので、路上に駐輪してもそれはすぐに次の店へと移動していってしまいます。 商店街ではあちこちに数台ぶんずつのスタンドが置かれています。

日本で問題になるのは、駐輪時間が長く一箇所に集中するからです。 路上に駐輪するのが問題なのではなく、長く一箇所に集中してしまうのが問題なのです。それがどうしてそうなのかに目をつぶっていては解決には至りません。

自転車駐輪が問題になっているところもあります

その街は、大学町ということもあって自転車の利用が非常に盛んです。 さらに、市街地から自家用車交通を締め出しているので自転車利用に拍車がかかっています。

そういうわけで人の集まるところにはたくさんの自転車が停められています。 人の歩く場所に「不適切に」駐輪した自転車容赦なく撤去されていました。

駅前の駐輪場

ドイツにもあることはあります。 利用者は少ないです。 もちろん駅前の歩道が自転車で一杯になることもありません。

  1. 長時間、目の届かないところに自転車を置くのは危険である。
  2. バス・鉄道の料金が一本化されていて、接続も考えられているので、駅までの移動はバスが一番便利である。
  3. 列車に自転車を乗せられるので置いていかない。

個人専用の駐輪場所を貸している駅もあります。 それは鍵のかかる自転車専用ガレージとでもいうものでした。 駅まで自転車を使う人が少ないからできることです。

バスと鉄道の連携

近距離鉄道とバスは共通の乗車券で利用できます。

地域をゾーンにわけて、目的地までのルートが何ゾーンを通過しているかで運賃が決定されます。

目的地までのルートにはバス、鉄道を好きなように組み合わせることができます。 いくら乗り換えても「初乗り料金」は発生しません。

日本では、バス-鉄道-バスと乗り換えると乗り換えのたびに運賃が別に徴収されます。 そのため、駅まで自転車という人が多いのでしょう。 駐輪場問題は、駐輪場の整備ではなく、公共交通機関の運賃一本化で解消できるという良い例です。

ドイツ人の趣味

ドイツ人にポピュラーな趣味に、「散歩」があります。 お年寄りから家族連れまで、ほんとうによく歩きます。 公園の道、川に沿った小道、森の中の道を利用している人がたくさんいます。

つまり、そういう道の整備に税金を投入することが望まれているのです。 自転車も散歩と同様、ポピュラーな趣味です。 自転車道の整備もそんな感じで望まれています。

自転車はお金がかからないものという認識の一方で、1000Euro(12万円)の自転車は珍しいものではありません。 良い物は高いという当たり前のことが良く知られています。

まとめ

道交法が形骸化していない
規則を守れば安心して走行できる。
公共交通機関が工夫されている
駅の駐輪場問題が発生しない。 自動車の無軌道な利用を減らしている。
Radwegの整備
コストをかけず自然な分離交通。 自転車レーンをつくりゃいいってモノじゃない。
大きな駐輪場は不要
自転車は移動していくはずのもの。 長時間移動しない自転車はどこか他のところに問題がある。
散歩、サイクリングがポピュラー
ハイキング・サイクリング道路に税金を使える。
自転車に関する教育
自転車が正しく理解されている。 → 自動車を運転するようになってもそれが生かされる。
とくにハードウェアを整備しなくても鉄道への自転車持ち込みは可能
列車が空いていれば、自転車をそのまま持ち込んだってなんの危険も無い。

お国柄、国民性の違いはありますが、お手本にしていいところがたくさんあるというのが実感です。


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