Created: August 23, 2003. Updated: July 22, 2006.

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タンデム自転車とブレーキ

経験談

Timmelsjoch(2491m)からの下りで、リムブレーキが過熱してパンクしました。

状況

休み休みリムを冷やしながら降りてきいたが、まだいけるかな? と思ったところで前輪の空気が抜ける。 ちょうど停まろうとしていたところだったので大事には至らなかった。

パンクまでの過程

  1. リムテープ(粘着布テープのタイプ)の糊が熱で溶ける。
  2. リムテープがズレて、スポーク穴が露出する。
  3. スポーク穴の角でチューブに穴が空く。

補修後の不思議な経過

  1. チューブにパッチを当て、予備のリムテープに張り替えて再スタート。 しばらくするとまた空気が抜けた。
  2. パッチが完全に接着できていなかったのかと確認。 空気漏れは無し。
  3. 不思議だと思いつつ、また下り始めるとまた空気が抜ける。 こんどはパッチをあてた所から空気が抜けている。

この不思議な空気漏れの原因は、パッチとチューブをくっつけているゴム糊が熱で溶けてはがれたため。 補修後一度目の空気漏れは自動的に再接着してしまったものと推測できる。

よく見るとタイヤのビード部にクラックも入っていたので、タイヤとチューブを新品に替えて修理完了。

教訓

タンデム自転車に適したブレーキは?

タンデム自転車は走行重量が大きく空気抵抗は一人乗りとさほど変わらないために、同じ坂道を下りたときに、一人乗りよりもはるかに速度が高くなります。

重量が大きく速度も高くなるタンデム自転車の速度をコントロールするには、一人乗り自転車ではあまり問題にならないブレーキ容量のことも考える必要があります。

ディスクブレーキ vs リムブレーキ

ブレーキ容量

ディスクブレーキのほうがブレーキ容量が大きいように思われていますが、ドイツのMountainbike誌のテストでは、リムブレーキよりもブレーキ容量の大きなディスクブレーキは数が限られているとの結果がでています。

テスト中にパーツが溶け出したり、ブレーキフルードが沸騰した例が報告されています。

詳しくは、 2000年3月号のテスト結果2001年4月号のテスト結果 を参照してください。

ディスクブレーキの利点・欠点

ディスクブレーキはツーリング用のタンデム自転車にはそれほど適していません。

リムブレーキの利点・欠点

ドラムブレーキ+リムブレーキ

現在のところ、Araiのドラムブレーキとリムブレーキの組み合わせが、最もブレーキ容量が大きいとされています。 車両総重量が大きく(体重の重いペア・荷物が多いなど)、見通しが悪くスピードの出せない急な坂を長く下るような状況に対応するにはこの組み合わせが最適とされています。

drag brakeとして使えるブレーキは事実上Araiのドラムブレーキだけです。 現在市販されている自転車用のディスクブレーキではそのような状況には耐えることができません。

ただし、ただつければ安心というものではないらしいです。 チェーンステーがドラムブレーキの制動力に耐え切れず曲がってしまった話や、ドラムブレーキの熱でサイドバッグが焦げてしまった話や、ドラムブレーキのパッドが炭化しきったという話も読んだことがあります。

参考文献:

小径車のタンデム

リムブレーキだと放熱面積が少ないため、リムブレーキのみでは厳しい状況もあります。その場合、ディスクブレーキという選択肢は正解だと思います。 例:おのひろきさんのViewPoint

ただし、ディスクパッドの温度上昇や磨耗は相当早いようなので、適度な休憩やこまめな点検が必要と言っていました。

まとめ

タンデム自転車のブレーキの負荷

要求されるブレーキ容量

条件:

十分長い坂道を下りるときに到達する速度

空気抵抗と重力の釣り合いから、 空気抵抗 = 車両総重量x重力加速度x斜度 。

車両重量が二倍なので、空気抵抗が一人乗りの二倍になるまで加速される。 空気抵抗は対気速度の二乗に比例するので、到達速度は一人乗りの√2( ≒ 1.4)倍に達する。

そこから停止するまでにブレーキで消費されるエネルギー

運動エネルギーは車両総重量x速度の二乗に比例する。 したがって、ある一定の高度差を下りたときに得られる運動エネルギーは、一人乗りの 2x(√2)^2 = 4倍に達する。

ブレーキはこの運動エネルギーをすべて熱に変換する。 したがって、タンデム自転車が十分長い坂道を下り、停止するときには、同条件の一人乗り自転車の4倍の温度上昇となる。

十分長い坂道を一人乗りで下り、ブレーキをかけ、リムの温度が30℃上昇するようなときに、タンデム車では120℃上昇することになる。

まとめ

この計算は細かい部分を無視した大雑把な計算だが、タンデム自転車においては予想以上にブレーキの負荷が大きいことを示している。


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