著者は、かつて『良い円高 悪い円高』という本で、「日本の閉鎖的な貿易慣行が円高を招いた」という大学1年生でも書かないような珍説を展開し、小宮隆太郎氏にボロボロに論破された。それでも、何が論破されたのか理解できないらしく、いまだに「ISLM教は間違いだ」とか開き直っている。カエルの面に小便というやつだろう。
この本の中心的なテーマとなっている「国債は後の世代の負担にならない」という議論も、もう30年ぐらい前のラーナーの議論を誤って引用し、しかも中立命題がまぎれこんで、文章としても支離滅裂でわけがわからない。そして結論は「バラマキ公共事業でも何でもいいから、とにかく大型の財政政策を打て」の一点張りだ。そうやって問題を先送りしていれば、そのうち企業の「バランスシート調整」が終わって日本経済は回復するそうである。それが1年後か100年後かはわからない。
著者は米国の連銀に勤務した経歴を売り物にしているが、実際には学位もとれず、連銀もクビになって、日本に逃れてきた。野村証券の田淵元会長のスピーチ・ライターとしてバブルをあおり、親分の失脚とともに追い出された植草一秀*といい、野村総研は「落第難民」の避難所なのだろうか。こんな人物が「人気アナリスト」になる日本の貧しい知的状況を知るには格好の本かもしれない。
*植草は、女子高生のスカートをのぞいた事件で有名になったが、日本の「エコノミスト」業界の水準をよく示している。彼は、かつて番組で使ったことがあるが、「政府が株を買い支えろ」と主張して驚いた。彼を京大に呼んで世に出したのは、佐和隆光氏である。類は友を呼ぶのだろう。