所得税の定率減税が段階的に廃止されるなど、いよいよ増税時代がやってきた。こういうとき、増税に対する批判としてよく出てくるのが「景気を冷え込ませる」とか「景気が回復すれば、自然増収によって財政赤字は解消する」とかいう類の議論だ。しかし日本の財政は、そんな議論のできる状態ではない。最大の問題は、国・地方・年金をあわせると1300兆円を超える政府債務が無限大に発散するのではないかという「持続可能性」なのだ。
本書の計量分析(第2章)によれば、このまま放置すると、財政は持続不可能だ。消費税を10%台にするなどの抜本的な税制改革とともに、政府支出を思い切って削減する必要がある。巨額の財政赤字の根本的な原因は、各省庁ごとにシェアの固定した予算配分システムだ。その背景には「割拠的」な官僚機構、非流動的な人事システム、予算管理ルールの欠如など、戦前から受け継がれてきた「国のかたち」の機能不全がある。
これを是正するには、首相官邸の権限を強化するだけでなく、官僚機構の「縦の仕切りを横に紡ぐ」新しい発想が必要だ。たとえば住宅供給については、不動産は国土交通省、住宅産業は経済産業省、住宅ローンは財務省が所管するというように、消費者から見るとバラバラになっているが、これを「住宅供給システム」と考え、各機能を「モジュール」として分離し、再結合するしくみが必要だ、と本書は主張する。
しかし、その改革の道は遠い。本書は、独立行政法人・経済産業研究所(RIETI)の所長だった青木氏を中心とする研究プロジェクトの成果だが、04年3月、青木氏は所長を辞任した。それにともなって常勤・非常勤の研究員の半数以上(評者も含む)が辞め、本書の分担執筆者も14人中8人がRIETIを去った。国際的にも高く評価されていたRIETIが、改革を恐れる霞ヶ関によって事実上解体されたという事実が、国のかたちを変えることがいかにむずかしいかを示している。