中国の産業構造をミクロ的に分析し、対応するための戦略を考える

藤本隆宏・新宅純二郎編著『中国製造業のアーキテクチャ分析』東洋経済

中国は脅威か、巨大市場か、それともパートナーか――その位置づけをめぐって、いろいろな議論が交錯しているが、おそらく中国は、そのどれでもあるのだろう。問題は、どういう部分が脅威で、どういう部分ではパートナーになれるのか、といった仕分けだ。それは一部の産業だけを見ていてもわからないし、貿易統計でもわからない。本書は「アーキテクチャ」という概念を手がかりにして、その仕分けを行ったものだ。

日本はインテグラル(統合的)な製品に強いのに対して、中国はモジュラー(分散的)な製品に強いが、この関係は単純ではない。たとえば、日本ではインテグラルな製品であるオートバイは、中国では部品ごとにモジュール化されて模倣され、モジュラー型の製品になっている。他方、エアコンやテレビのように周辺部品がモジュールとして出回っている製品でも、コンプレッサーやブラウン管などの中核部品だけはインテグラルな輸入品である。

全体として、高度な技術の必要な製品ほどインテグラルで、それを中国の企業が模倣するうちに標準化され、モジュラーになって大衆化する、という過程が繰り返されている。このような「モジュール化圧力」から逃れることはむずかしいが、日本企業がインテグラルな製品だけにこだわっていると、巨大な中国市場のなかの「すきま商品」に終わってしまう。著者は、製品の性格に応じてアーキテクチャを使い分け、日本の得意分野に「牽引」する戦略を推奨している。

本書では、インテグラルやモジュラーという概念は、所与の分類尺度として使われているが、現実に中国にも見られるように、アーキテクチャは産業構造や技術水準によって内生的に変化する。ところが、こうした概念は標準的な経済学のなかでは理論的に位置づけられていない。これは本書の欠陥ではなく、経済学の怠慢である。評者は近く、この間隙を少しでも埋めるべく『情報技術と組織のアーキテクチャ』(NTT出版)という本を上梓する予定である。

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