CIAに国を売った自民党や右翼の「愛国者」たち

ティム・ワイナー『CIA秘録』文藝春秋

CIA(米中央情報局)が謀略にかかわったのではないかという疑惑は、これまでにもいろいろ噂されてきたが、本書はそれを実名の情報源で明らかにしたものだ。著者はニューヨーク・タイムズで20年以上にわたってCIAを取材してきた記者で、本書は昨年の全米図書賞を受賞した。  

CIAは戦時中の諜報機関を改組して世界の情報を収集する組織として作られたものだが、次第にスパイ工作に重点を置くようになり、さらに外国の政権を転覆する工作を行なうようになった。その実態を知ることなしに、戦後の国際政治は理解できない。CIAの情報収集は失敗の連続で、キューバ危機に際してもソ連の出方を見誤り、ウォーターゲート事件やイラン・コントラ事件など多くのスキャンダルを起こした。最近ではイラクに大量破壊兵器があるという報告を出して、イラク戦争の泥沼の原因となった。  

他方、秘密工作ではベトナムのゴ・ジンジェム政権やチリのアジェンデ政権などを転覆したが、キューバのカストロ議長を暗殺する工作は失敗し、ケネディ大統領が逆に暗殺された。こうしたCIAの工作の中で、最大の成功を収めたのが日本である。CIAは岸信介を工作員として自民党に送り込み、岸はCIAの巨額の資金援助によって政治家を買収し、首相になった。岸の他にも、児玉誉士夫や正力松太郎もCIAの工作員だったことが、米政府の公開した文書で確認されている。  

日米安保条約の改定や沖縄返還にあたっても、CIAの資金が大きな役割を果たした。資金供与は1970年代まで続き、「構造汚職」の原因となった。CIA東京支局長だったフェルドマンは「占領体制のもとでは、われわれは日本を直接統治した。その後は、ちょっと違う方法で統治してきたのだ」と語っている。岸や児玉は極右の保守主義をとなえて「愛国者」と自称していたが、実際には米国の資金提供を受けて国家の最高機密を売る「売国者」だったのだ。だから不幸なことに、日本の戦後史を理解する上でもCIAの活動を知ることは不可欠である。

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