アナアナ変換とは

現在の(アナログ)テレビの放送は、VHF帯(90〜220MHz)で行われている。地上波デジタル放送では、これをUHF帯(470〜770MHz)に移す計画だが、一部の地域では既存のアナログUHF局の電波が密集しているため混信が起こりやすく、十分な周波数が空いていない。そこで、図のように現在のアナログ放送局の周波数を変更して、デジタル放送のための周波数を空けるのがアナアナ変換である。これは文字どおりアナログからアナログへの変換であって、デジタル化ではない。このような無駄な作業に1800億円の国民負担と7年もの時間をかける計画は、世界にも例がない。

周波数を変更するには、テレビ局側の中継局だけではなく、家庭のアンテナやテレビのチャンネル設定などを変更しなければならない。しかし、これはテレビを買ったときには視聴者が自分でやっていることで、家庭のテレビの設定まで国費で変更するのは、いやがる地方民放を説得するためのきわめて異例な措置である。総務省は当初、この対象世帯を246万と推定して今年度予算にその対策費727億円を計上したが、実態調査の結果、対象が436万世帯に増えて経費が2.5倍にふくらみ、作業は中止されている。1800億円という見積もりも、最初に出た2000億円以上という見通しを「値切った」もので、算出根拠は明らかにされていない。これまでのずさんな計画からみると、経費は今後まだふくらむおそれが強い。

アナアナ変換なしでデジタル化を行うことは、技術的には容易である。300MHzもあるUHF帯にデジタル放送の周波数が収容できないのは、すべての中継局でHDTV用の周波数(6MHz)を取ろうとするからであり、SDTV用の周波数(1.5MHz)なら今でも空いている。またアナアナ変換が必要なのは、瀬戸内海や九州の島など一部の地域に限られており、全国平均ではUHF帯は120MHz以上も空いていると推定される。大阪や名古屋などは今のままデジタル化できるので、すべての地方民放を同時にHDTVに移行するという方針を変更すれば、アナアナ変換は必要ない。法律のどこにも「既存局をすべて移行する」とは書かれておらず、デジタル化は権利でも義務でもないのである。

わずか7チャンネル(実質42MHz)に300MHzも必要になるのは、UHF帯に点在するアナログ局の電波を避けて、中継局ごとに異なる周波数を使わなければならないためである。デジタル放送では、複数の中継局で同じ周波数を使えるSFN(単一周波数ネットワーク)という技術があるので、効率的に置局すればVHF帯(70MHz)でもデジタル化できる。また最新の無線技術では、空いている周波数を自動的に検知して通信を行う「オーバーレイ利用」が可能なので、アナログ局を集約する必要もない。未利用の周波数を無線LANに利用することを認めれば、今すぐにでも数百チャンネルの「デジタル放送」が可能である。

戻る