Kabuki Syndrome Network in Japan Newsletter 歌舞伎ジャーナル  第11号

《平成15年4月19日》

 ヒトゲノムの解析完了は私達にどんな福音をもたらすか

尾関敏伸

 既にご存知の方も多いと思いますが,4月15日付けの新聞に『ヒトゲノム解析完了』の記事が掲載されました。また、ほぼ時を同じくして,米国のネットワークからも新しい情報がもたらされたので併せて報告させていただきます。歌舞伎症候群の子を持つ親としてこの報道について考えてみました。

 ヒトゲノム解読完了、国際チームが宣言

 人間の全遺伝情報(ヒトゲノム)の解読を進めてきた日米欧などの国際チームは14日、現代の技術で解読不能な1%を除く解読完了を宣言した。ヒトゲノムは人間の生命活動の設計図で、解読結果から、構成する化学物質(塩基)の数は約30億7000万個、人間の遺伝子の推定総数は3万2615個とわかった。20世紀後半に飛躍的に進歩した生命科学研究の集大成で、これを土台に、今世紀は医薬品開発や生命の神秘の解明が大きく進むと期待されている。

 分子レベルで生命現象に迫る研究は、1953年4月、米英の研究者がDNAの「2重らせん構造」を解明したことから、新たなスタートを切った。

 国際協力による解読は1990年に始まり、日米欧など6か国で3000人以上の研究者が参加。予算の推計は5000億円を超え、生命科学研究では未曽有の大規模な体制で進められてきた。

 半世紀を経て「DNA設計図」解読という、新たな記念碑が建てられたことになる。解読に参加した日米欧など6か国の首脳は共同宣言を出し「人類の歴史で画期的な偉業」とたたえた。

 日本からは、理化学研究所や慶応大学などの研究チームが参加。米国が全体の約59%を読み取り、続いて英国の約31%、日本の約6%となっている。

 ヒトゲノム解読を巡っては、2000年6月、国際チームと米セレラ・ジェノミクス社がそれぞれ全体の9割の解読を発表。国際チームは残りの部分も含め高い精度で読みとり、生命活動の理解に必要な解読対象のうち、99%を解読。残るのは、現在の技術では解読できない部分とされている。

歌舞伎症候群が残る1%の現在の技術では解読できない部分に入っているかどうかは未定

 

 米国のネットワークからも新しい情報

 最初に原文を掲載し,次ぎに日本語で概略を記載します。

 Dear Members,

  KSN recently received a phone call from Dr. Jeff Milunsky from the Boston University School of Medicine. He is the Director of Clinical Genetics and Associate Director of Molecular Genetics and is caring for several children with Kabuki. He and his colleagues have been using some of the latest molecular cytogenetic technology and have found a potential similarity on the chromosome of two of their Kabuki patients. In order to verify that it is real, and therefore a potential diagnostic discovery, he is looking for additional clients with Kabuki.

  Your child must have a confirmed Kabuki diagnosis. Participation would require a blood sample, signing an informed consent, and completing a detailed clinical history (KSN's questionnaire can be used for this).

  Dr. Milunsky is not at liberty to discuss the specific findings at this time but would be happy to discuss any questions you may have. He asks that you contact him for specific instructions.

  On a personal note, I'm excited about it and will certainly be participating. Here's what we've been waiting for - a way to diagnose Kabuki! I encourage you to help Dr. Milunsky make that possible!

  To contact Dr. Jeff Milunsky:

  Boston University School of Medicine

  700 Albany Street, Suite W408

  Boston, MA 02118

Tel: (617) 638-7083

Fax: (617) 638-7092

Email: jmilunsk@bu.edu

  概略

 会員各位: 歌舞伎症候群ネットワークは,ボストン大学薬学部のジェフ・ミルンスキー博士より,最近電話を頂きました。博士は臨床遺伝及び遺伝分子の責任者であり,数名の歌舞伎症候群の子供達を診察しています。博士と仲間の研究者は最新の分子細胞遺伝学の技術(細胞遺伝学の手法は,先天性代謝異常,Down症候群のような遺伝的異常などに用いられる)を駆使し,2人の歌舞伎症候群患者の染色体より潜在的な類似点を発見されました。そのことが事実であると証明する為に,潜在的な診断に役立たせる為に博士はもっと多くの歌舞伎症候群の患者さんを探しています。

 貴方のお子さんは本当に歌舞伎症候群と診断されなければなりません。これに参加するためには,血液のサンプルとインフォームド・コンセントのためのサイン、そして今までの病院に罹った詳細な内容が必要となります。(歌舞伎症候群ネットワークで行ったアンケート(日本語版はホームページのアンケートのボタンをクリックすれば取得可能)で代用可能)

 ミルンスキー博士と今、特別な発見について議論する時間はありませんが,貴方が抱いている疑問な点について喜んでお話をしていただけることでしょう。博士とコンタクトを取れば特別な指示が頂けると思います。

 個人的な覚えとして,私は興奮しています。そして私はおそらく参加することになるでしょう。歌舞伎症候群を明確に診察する方法を待っていました。私はこの診断方法を確立させる為に一人でも多くの人が参加されることを望みます。

 皆さん上述した2つの記事からどんなことを連想されましたか。

 私は,現在歌舞伎症候群を明確に診断する方法が無いこと。特効薬が無いことを承知しています。しかし、歌舞伎症候群が治癒した後のことが想像できません。治ったらどうなるか。治るとはどういうことか。精神遅滞が解消するか。急に賢くなるでしょうか。脊柱側弯症が治るでしょうか。

 この2つの記事が朗報であることには間違い有りません。科学的な診断方法が確立すれば,原因がわかります。原因がわかれば治療方法も解り,ヒトゲノムの解析完了がその治療に大いに役立つことは明らかです。希望を持ってもう少し待ちたいと思います。

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