Kabuki Syndrome Network in Japan Newsletter 歌舞伎ジャーナル  第19号

<<平成15年8月17日>>

 遺伝子治療の関係記事を紹介します

  エイズの遺伝子治療、中国で臨床開発 タカラバイオ 

 遺伝子治療の有力技術を持つタカラバイオ(本社・大津市)は、エイズの遺伝子治療の商業化に向けた臨床開発を、中国で始める。日本は行政当局、医療現場とも遺伝子治療の導入に消極的なこともあり、患者数の多い中国を先行させることにした。

 イタリアのベンチャー企業、モルメドが考案した治療法の実用化を目指す。この治療法は、エイズウイルスの増殖に不可欠なたんぱく質の合成を妨げる遺伝子と、ウイルスの外殻づくりを阻害する遺伝子を、「運び役」のレトロウイルスを使って造血幹細胞に組み込むことで、ウイルスの増殖機能を二重に遮断することが期待されている。

 タカラは、レトロウイルスを使って標的細胞に効率良く治療用遺伝子を組み込む技術「レトロネクチン法」を、米インディアナ大と共同開発。米国国立衛生研究所など世界7カ国30カ所以上の研究施設や病院が、遺伝子治療の開発に向けて活用する中核技術になっている。タカラはこの技術を01年12月にモルメドに供与。今年2月、モルメドが考案したエイズや白血病、がんの遺伝子治療をアジアで独占実施する権利を取得していた。

 すでに中国では、北京近郊のハイテク工業地区などで拠点の用地探しを始めており、トップには米国の大学の博士号を持つ中国人研究者を起用する方針。できるだけ早く中国当局の承認を得て、医療機関などとの契約にこぎ着けたい考えだ。

 中国で臨床開発を先行させる理由について、加藤郁之進タカラバイオ社長は(1)対象となる患者が日本は5000人程度だが、中国は100万人以上とみられる(2)多様な民族が住んでおり、詳細な臨床データが得られる(3)日本の行政当局や医療現場は新しい医療技術に極めて保守的で、他国で実績が上がってからでないとなかなか認めない――を挙げている。 

 現在の抗HIV薬を使った治療法は、エイズウイルスが変異しやすく、薬剤耐性をつくりやすい特性を持っているため限界がある。2種類以上の薬を同時に大量に飲み続けなければならず、様々な副作用も伴う。

 遺伝子治療も未知の部分が多いが、欧米では研究が進んでいる。タカラが中国での先行開発を決めたことで、日本でエイズ患者が遺伝子治療を選べる機会の到来は、アジアの中でも遅れることになりそうだ。 (2003/08/15)

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