Kabuki Syndrome Network in Japan Newsletter 歌舞伎ジャーナル  第25号

《平成15年12月13日》

 11月7日に全米遺伝学会でDr. Milunsky が発表された内容の要約(一般向け・和文)

 お約束したとおり翻訳を試みました。やっては見たものの一般用語と医学用語が混在し,原文に明らかな誤りもあり,私なりに修正を入れたりしました。多分どこかに誤訳もあるかもしれませんが一度読んでみて下さい。原文は、マーゴットさんというKSのお母さんがかかれたものです。最後に簡単に私が読んでそのまとめを書いておきます。(訳 尾関敏伸)

要 約

 ミルンスキー博士と同僚の研究者は,歌舞伎症候群(以下KSという。)の最初の血液サンプリング調査により,8番染色体の一部に同じものを見つけました。正確に言うと8番染色体上肢22-23.1のところです。最初の6人の患者のうち,2人のお母さんにも協力してもらいましたが,両方のお母さんとも8番染色体上肢23.1(以下823.1という。)に逆位が見られました。(図4参照) もっと詳しく調査すると6人全てのKSにお母さんの823.1逆位を受け継いでいることが明らかとなりました。お父さんについては誰も823.1に異常はありませんでした。

染色体/遺伝子について

 人には各々の細胞に46個(23組)の染色体があります。そのうち23個はお母さんから,23個はお父さんから受け継いでいます。学者は,染色体の大きい方から小さい方に向けて1番から22番まで番号をつけました。この22組の染色体は,一般に『常染色体』と呼ばれています。最後の1組は,性染色体と呼ばれています。(図1参照) 染色体は短い腕(上の部分で"P"腕と呼ばれている)と長い腕(下の部分で"Q"腕と呼ばれている)から成り立っています。2つ腕は『動原体』というものでネクタイのように縛られて,別けられています。(図2参照)

 それぞれの染色体は,DNAの長い糸によって作られています。その糸は遺伝子と呼ばれています。遺伝子は染色体上の決まった位置にいます。(図3参照) 染色体は""でいます。同様に遺伝子も""でいます。細胞には約3万組の遺伝子が存在するといわれています。

   図 1               図 2

 

 

     図3                                                図4

 それぞれの遺伝子は情報をパッケージしており、私達の体の本質的な構成要素,あるいは機能のレシピとなっています。遺伝子により,アミノ酸と呼ばれるものやアミノ酸のかたまりが鎖状になってタンパク質と呼ばれるものを作っています。細胞が特定のタンパク質を必要とするとき,関係する遺伝子がその必要というメッセージを読み取ります。次ぎにそのメッセージを理解したり翻訳したりして特定のタンパク質を提供することとなります。例えば,髪の毛の元となっている角質をなしているあるタンパク質は,特定の構造になっています。他には、食物を消化するために化学変化を誘発する触媒としての酵素があります。まだ他にも細胞間のネットワークに情報伝達を行うものもあります。

 肉体は,筋肉,心臓,脳など多くの異なる形の細胞を持っています。全ての細胞が正確な機能を働かせる為に同じタンパク質を要求しているわけではありません。必要な遺伝子だけが特定の細胞を活性化させたり,刺激したりします。ある遺伝子は,私達の成長の一時期のみ活躍します。もちろん胎児の成長期のみ働くものも有ります。それらの機能が役割を終えたとき,遺伝子としての働きを終えます。

 遺伝暗号が変異により変えられたとき,変わりのメッセージが細胞に伝えられます。変異により変えられ、誤ったメッセージが伝えられたにもかかわらず変化を起こさないものも有ります。また、本来のメッセージを正確に読みこめなかったり,全く読みこまなかったりすることも引き起こします。これらの欠陥のある遺伝子は,いろいろな体の機能や成長のシステムに問題を発生させ,遺伝子が原因の症状を引き起こします。

KSにもどって

 ミルンスキー博士の発見のケースは,8番染色体のほんの小さな一部に重複したデータがあったことです。8P22-23.1をよく調べてみると付け加えられた(重複した)染色体の物質が8番染色体の対の片方に、正確に言うと8P22-23.1のあたりに取って代わっていました。ということは、ここが重複しています。染色体のこの部分に遺伝子が過多になっているのです。すなわち、特にこれらの遺伝子により,メッセージが正確に細胞に伝えられていないことを意味しています。KSの特徴として遺伝子の並びに普通とは違う並びを持つことです。KSの子供、全員が8p22-23.1に正確に同じ遺伝子が重複しているというわけではありません。(訳者の考え:個人によって違う…だから症候群) もっと研究することにより,どの遺伝子がどこに入りこんでいるのか見分けがつくでしょう。そして、希望的観測として,私達はどの種の特徴が,それぞれの子供にどんな影響を与えるかもっと明確に予測できるでしょう。

染色体逆位について

 染色体逆位の説明は次ぎのとおりです。染色体の1節内に2個の切断を生じ,その切断間の断片が180度回転し再融合した結果生じる異常です。結果,その染色体節間での遺伝子順序の逆転を生じさせます。(図4参照) ほとんどのケースにおいて,遺伝子の中で物質がなくなったり,分裂したりはしていません。(その遺伝子の機能をいじくったりする) 個々の逆位においては、遺伝物質がそこにいる限りは何も問題はありません。しかしながら、個々の逆位の子孫は,染色体の物質のアンバランスにより,異常の危険率が高くなります。

再びKSにもどって

 2組の協力していただいたご両親の染色体を分析したことについて論文は次ぎのように物語っています。両方のお母さんに8p23.1の逆位がありました。逆位は対の8番染色体の1つにとって変わっていることを如実に示しています。その後、既に示した6人全てのKSをもっと詳しく分析したところ, 8p23.1にお母さんと全く同じ大変小さい逆位を受け継いでいました。

ミルンスキー博士のコメント

 私達は最初の発見に興奮しました。またKSネットワークの協力していただいた家族の方々に大変感謝しております。次のステップは,KSを染色体のエリアとしてではなく,ピンポイントで調査すること。KSの様々な医学的発見をもとに重複している特定の遺伝子を同定することです。このことを成し遂げるには,私達の研究に協力していただけるKSの家族が必要です。これらの研究は,研究室での調査が残っており,もっと実証が得られ,正確な説明が成し遂げられるまでは,すなわち、今のところは,医学的な原理は提供できないでしょう。私達の研究をKSの家族と一緒に続けていくことに意義を感じています。あなたの手助けが必要です。

・・・以上です。

染色体/遺伝子レベルでわかったこと

@遺伝子の過多

A染色体逆位

今まで,KSは遺伝とは無関係と知らされたけれど本当か。

文中、何度も「お母さんの・・・を受け継いで」と出てきました。KSは遺伝するのか

答えはNOだと思います。

理由

@KSの確率・・・日本の新生児に対して発生する確率は1/32,000

A日本人の27パーセントに8p23.1の逆位があるそうです。ヨーロッパでは26パーセント(本当の論文に出てくるそうです)

@÷A=1/32,000÷27/100=1/8,640

これが遺伝といえるかどうか。あとは,お医者様が答えを出していただけるでしょう。

 

 

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