Kabuki Syndrome Network in Japan Newsletter 歌舞伎ジャーナル  第34号

<<平成16年6月24日>>

親の会と医師とのあり方について

 歌舞伎ジャーナル33号でもお知らせしたように、Dr. Milunskiの論文について賛否両論が飛び交っています。より公平を期すためにDr. Milunski以外の医師の言葉を最初に紹介します。

構成

1 フランスにおける問題提議

2 日本における研究

3 親の会と医師とのあり方について

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1 フランスにおける問題提議

 歌舞伎ジャーナル33号(Dr. Milunskiの論文発表その後)を書く原因になったことがらを紹介します。 フランス・パリのネッカー病院にDavid GENEVIEVE博士という方がいらっしゃいます。北米ネットワークのフランス人の会員さんがこの博士に『歌舞伎症候群の調査は一体全体どこで行っているのか明確にしてほしい。』という旨のお手紙を書かれました。(この背景を簡単に説明するとフランスから血液をアメリカへ送ることが容易ではなく、私にまでどうやってアメリカに送ったのかと間接的に問われました。この方はフランス人ですが返事の途中でアメリカ人に摩り替えられてしまっています。) 以下、David GENEVIEVE博士の返事です。(フランス語→英語→日本語)

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 MILUNSKI博士は、ご自分の研究成果(8番染色体における遺伝子の重複)を全米の学会で発表され、また国際的な書物としても発行されました。この『学会』『書物』において技術的なことは子細漏らさず網羅され、私たちも同じ方法を用いました。日本人チームによってなされたまったく同じ実験の論文(Rapid Publication (American Journal of Medical Genetics) On the reported 8p22-p23.1 duplication in Kabuki make-up syndrome (KMS) and its absence in patients with typical KMS (p NA) Noriko Miyake, Naoki Harada, Osamu Shimokawa, Hirofumi Ohashi, Kenji Kurosawa, Tadashi Matsumoto, Yoshimitsu Fukushima, Toshiro Nagai, Vorasuk Shotelersuk, Ko-ichiro Yoshiura, Tohru Ohta, Tatsuya Kishino, Norio Niikawa, Naomichi Matsumoto Published Online: 11 May 2004)に基づいています。

 この中の新川先生は、歌舞伎症候群を見つけ出した二人の先生のうちの一人です。

 付け加えて、CGHは5回以上行っており、Milunskiの方法より精度は高いはずです。どちらの手法がはっきりと示すのでしょうか。…

 いづれにしても、歌舞伎症候群と診断することは簡単なことではありません。専門家によるディスカッションが必要であり、8番染色体における遺伝子の重複をもつ子供たちや重複を持たないが歌舞伎症候群に非常によく似た症状を持つ子供たちに集まってもらわなければなりません。

 原因は種々の異なった性質や特徴をもつ成分から出来ているということに間違いはないでしょう。

 最近ベルギーチームから6人の歌舞伎症候群と思われる子供を紹介され、私たち(世界中の大変多くの臨床遺伝学者)にお願いされました。6人のうちの1人に奇形が見つかりました。

 たった2人だけが歌舞伎症候群でした。奇形の1人は歌舞伎症候群の様を呈していませんでした。このことは、調査結果を導き出すためには細心の注意が必要であるし、いろいろな間違いを起こさせることを物語っています。歌舞伎症候群の原因調査はいまだ途半ばであるということです。

 この答(『歌舞伎症候群の調査は一体全体どこで行っているのか明確にしてほしい。』)は、かなり明確になってくることでしょう。アメリカ人の両親が自分の子供に降りかかっている困難なことがらの原因を解明したいという欲望を幻惑の罠に落としいらせている現状をこの答は可能にしてくれるでしょう。小さな欲望を持つという本質は正しい…Dr. Milunskiの結果への執着心と私は理解している。

 真心こめて   Dr. David Genevieve.

 というように、Dr. Milunskiの論文をケチョンケチョンに批判しています。個人的に思うのですが、『遺伝(子)学は、経済学なり』という意識が最も強いアメリカという国の中で、Dr. Milunski(http://gg.bu.edu/people/faculty/milunsky.htm)は今まで数々の功績を上げてきた人です。こんな命取りに繋がるような墓穴は掘らないと思うのですが…

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2 日本における歌舞伎症候群の研究

 英文歌舞伎症候群のホームページの論文の項目(http://www.kabukisyndrome.com/articles.html)があります。ここに1981年-2003年までの間の英文で書かれた論文が131本紹介されており、そのうち32本が日本人の先生が著わされたものと想像します。当然のことながら最初は黒木先生であり、次は新川先生です。32/131が多いのか、少ないのか判りません。また、保護者にとってそれが重要なのかそうでないのかも判りません。

 残念ながら、論文の中身は、保護者にはまったくわかりません。論文を書いた人は、臨床医でないため、なかなか保護者と会う機会もないのでしょう。意識の中に患者本人とか,その家族のことはどの程度配慮されているのでしょうか。研究者→臨床医→保護者という流れになっています。恐らく、歌舞伎症候群のみならず、他の多くの症候群もこういう流れと思料いたします。本当にこれでよいのでしょうか。最初のほうで紹介した2004年5月11日にオンラインで公表された「On the reported 8p22-p23.1 duplication in Kabuki make-up syndrome (KMS) and its absence in patients with typical KMS (p NA)」ではWe analyzed a total of 26 Japanese and 2 Thai patients with KMS and 52 phenotypically normal controls regarding such duplication and inversion by FISH using 15 BAC clones covering 8p22-8p23.1 after obtaining written informed consent and with the approval by IRB of Nagasaki University.の件があります。「26人の日本人と2人のタイ人の歌舞伎症候群患者による解析…」(どのようなインフォームド・コンセントをとられたのかは判りませんが。因みにこれとは関係なく、私もインフォームド・コンセントにサインしたことがありますがA4サイズ1枚に半分くらいしか文字が書いてなかったことを記憶しております。)こういうことを主治医から聞かされるのではなく、フランス人から下手な英語で教えてもらうということに、日本の閉鎖社会を痛切に思い知らされます。はっきり言って「いや!」です。

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3 親の会と医師とのあり方について

 Dr. Milunskiは、北米の歌舞伎症候群のネットワークを利用し、世界中に向けて『スプーン一杯の血液ボランティア』と看板を掲げ、目的を明確に表し、条件としてA4サイズ6枚にわたる細かいアルファベットのインフォームド・コンセント用紙に記入し、また29枚にわたる問診表のようなものに記入し、血液を送っていただいた人には、結果をお知らせします。と公約して検査用血液を集められました。この手法は、直裁的で判りやすく保護者の同意は得やすい。比較的短期間で80人を超える協力者が集まったと知らされております。検査結果も想像以上に早く通知がありました。反面、結果を知らされる側としては、覚悟を要するケースも発生し、次元の違う問題も発生しました。

 また、この手法はさすがアメリカ流と感心する面もあります。話はそれますが、アメリカは片方で戦争をしています(していました??)。もう片方でハリウッドやディズニーに代表されるような娯楽を生み出しています。両方に通ずるのは××××です。Dr. Milunskiのやり方も××××に通じるものがあります。私の娘が、歌舞伎症候群のキャリアであると通知があってから北米の歌舞伎症候群のネットワークの代表者にその旨報告すると相手から"Congratulations! It's nice to have a very official diagnosis, isn't it? No more wondering."と返事がありました。これも××××です。××××って何でしょうか。自分で解答を見つけ出してください。

 さて、トップページにも記載してありますが「親の会だけでは,何の解決にも繋がりません。医師との強力なパートナーシップが必要であることは言うまでもありません。親の会,医師とそれぞれ明確な役割が存在しています。」医師と患者の関係は『医師が勝っていて、患者が劣っている』と一般的に思われがちです。しかしこれは大きな、大きな誤りです。医師と患者の関係はイーブンでなければなりません。患者は変にへりくだる必要はありません。明確な役割とはなんでしょうか。親の会は正確な情報提供です。医師は正確な情報公開です。この関係が成熟して行くと『豊かな信頼関係』という果実がなるわけです。また、親の会の役目は,情報を収集し,それをフィードバックして、困っている家族の支えとなり,少しでも患者の自立の一助とならなければなりません。親の会は,一つの組織です。ですから、組織を構成するメンバーの心得として,@諦めないこと。A開き直らないこと。B現実を直視しすること。C常に「夢」を持つこと。が必要となってきます。 1 フランスにおける問題提議 で書きましたが,日本人グループの論文についても、全く知りませんでした。医師の方々に強く情報公開を望みます。

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