Kabuki Syndrome Network Japan Newsletter 歌舞伎ジャーナル  第5号

 平成12年12月愛知県武豊町で3歳の女の子が自宅で餓死する事件がありました。殺人罪で起訴された母親は「発育不良でなつかないから疎ましかった」と供述したといいます。

 この事件は、地元愛知県で大変な話題となり、ご記憶の方もあると思います。平成14年10月30日名古屋地方裁判所にて判決が言い渡されたので、その関連を『歌舞伎ジャーナル第5号』に掲載いたします。

 児童虐待と知的障害者  --被害者か 加害者か--

 愛知県武豊町で平成12年12月、3歳の女の子が自宅で餓死する事件がありました。殺人罪で起訴された母親は「発育不良でなつかないから疎ましかった」と供述したといいます。「呼びかけにも反応しない」「ハイハイしかしない」など、女の子には何らかの発達障害があったと思われています。悲惨な事件が相次いでいる児童虐待。被害者の中には知的障害児が多いことはあまり知られていません。

段ボールの中で餓死

 「これが本当に3歳の子の顔か……」。通報で駆け付けた救急隊員は亡くなった谷川依織ちゃん(3歳)を見て言葉を失ったそうです。依織ちゃんの家庭は会社員の父(21歳)、母(21歳)、弟(1歳)の3人家族。警察の調べでは、両親は1カ月ほど前から十分に食事を与えず、体が衰弱してからも病院に連れて行かずに餓死させたといいます。母親らは「依織がタンスの中身を外に出すなどのいたずらをするようになったので、部屋に閉じこめたり、段ボール箱に詰め込むせっかんをしていた。1日にパンを一口分与えたり、ミルクを飲ませたりはしていた。死亡する4日前から食事を取らなくなったが、死ぬとは思わなかった」と供述しました。

 実は、依織ちゃんはその2年前に外傷性の脳内出血を起こし病院に搬送されています。母親らは「旅行に行った時にベッドから落ちてこぶができた」などと説明しましたが、これについても虐待が疑われています。その後、両親は依織ちゃんの発育が遅れていることに気付き、「歩かなくなった。笑顔を見せない」などと周囲に漏らすようになりました。衰弱がひどくなった依織ちゃんを心配した近所の人の通報がきっかけとなり、町保健センターは保健婦を派遣しました。この時、母親は「弟が生まれてから歩かなくなった。いつもハイハイで困る。お腹がすくと泣くが、ふだんは笑わない。笑うのは食べているときだけ。頭をなでても反応しない」と説明しました。保健婦の印象では、腕と足にはほとんど筋肉がついておらず、やせ細った状態で、おむつかぶれもひどく、泣き声は生後10カ月の赤ちゃんのようだったといいます。

 依織ちゃんは自宅の3畳間に閉じこめられ、両親と一緒には食事をせず、パン以外には何も与えられていませんでした。依織ちゃんの体重は亡くなる4カ月前には11・0キロあったのに急激に減り、死亡時にはわずか5キロしかありませんでした。3歳女児の平均体重は1215キロといわれ、どれだけ悲惨な状態だったのかが分かろうというものです。父親は育児に無関心で母親の言いなりでした。

<幼女餓死>愛知県武豊町の父母を殺人罪で起訴 名古屋地検

 愛知県武豊町の社員寮の一室で谷川依織(いおり)ちゃん(3)が餓死した事件で、名古屋地検は28日、父親の会社員、千秋容疑者(21)と妻万里子容疑者(21)を殺人罪で名古屋地裁に起訴した。2人は今月11日、保護責任者遺棄致死の疑いで愛知県警半田署に逮捕されたが、名古屋地検は2人が依織ちゃんを段ボール箱に閉じこめて餓死させた行為や、その後の供述内容などから殺意を認定したとみられる。いわゆるネグレクト(育児放棄)事案で殺人罪に問われるのは極めて異例で、最近では今年8月に山形県米沢市で、我が子を餓死させた25歳と23歳の両親の例がある。

 起訴状によると、両被告は以前から疎ましく思っていた依織ちゃんを今年11月中旬ごろから段ボール箱に押し込めるなどの虐待を続けた結果、同月下旬に依織ちゃんは極度の栄養失調になった。医者の治療を受けさせなければ死んでしまうとの認識がありながら「それでも構わない」と決意。ほとんど食事を与えず、病院にも連れていかないまま12月10日、依織ちゃんを餓死させた。

 2被告は当初、「食が細かったので、量は少なかったが食事を与えていた」「死ぬとは思わなかった」などと愛知県警半田署の調べに供述していたが、その後の調べで、依織ちゃんには死亡する4日前から全く食事をさせていなかったことが判明。さらに、2被告は「(依織ちゃんが)疎ましかった。死んでもいいと思った」などと供述したことから、2人が段ボール箱に閉じこめたり、食事を与えなかったのは明確な殺意によるものと認定したとみられる。

 平成12年11月に児童虐待防止法が施行された直後に発覚した今回の事件では、通報を受けた児童相談所が依織ちゃんに何らかの異変が起きていることを知りながら、積極的に介入できないまま最悪の結末を招くなど、システム的な問題も浮き彫りになった。事態を受けて愛知県は各地の児童相談所に通報を受けている事案の再評価を命じたほか、医療機関向けに虐待防止マニュアルを配布するなど、再発防止に向けての取り組みを始めた。

 ◆起訴事実の要旨

 被告人両名は、長女依織ちゃん(当時3歳)を養育する立場にあったが、かねてせっかんのため依織ちゃんを段ボール箱内に閉じ込めて、適切な食事を与えずに放置していた。今年11月下旬ごろには極度にやせ衰えた状態に陥り、医師による治療を受けさせるなどしなければ死亡することを認識しながら、それもやむなしと決意し共謀のうえ、適切な食事を与えず、医師による治療を受けさせることなく段ボール箱に入れたまま放置して12月10日、愛知県武豊町北中根4の社宅の自宅で、飢餓の状態にして殺害した。

<児童虐待>幼女餓死させた両親に殺人罪で懲役7年 名古屋地裁 (毎日新聞)

 愛知県武豊町の自宅で平成12年12月、谷川依織ちゃん(当時3歳)を餓死させたとして殺人罪に問われた父の無職、谷川千秋(23)、母万里子(23)両被告に対し名古屋地裁は平成14年10月30日、いずれも懲役7年を言い渡した。裁判長は「死んでも構わないと共謀して放置、飢えさせて殺害した」と判断、両被告に殺人罪を適用した。

 

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