Kabuki Syndrome Network in Japan Newsletter 歌舞伎ジャーナル  第60号

《平成18年12月30日》

  特別支援教育―障害児教育の未来は?

 最新のニュースを紹介した後、本題に写ります。

 厚生労働省は平成18年12月20日、日本の総人口が2055年には、現在より約3800万人少ない8993万人まで減少すると予測した「日本の将来推計人口」を公表した。前提となる50年後の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子供数の推定値)は、05年実績と同じ1.26と設定。前回推計(02年1月)では1.39まで回復するとしていたが、大幅に下方修正した。

 55年の年代構成は、65歳以上が約41%、14歳以下は約8%。一段と少子高齢化が進む予測で、社会保障や日本経済への影響は必至。

 推計は、国立社会保障・人口問題研究所が国勢調査などを基に約5年ごとに実施。晩婚化や子供数の減少など最近の社会情勢を反映させて、将来の出生率と死亡率を、標準的な中位推計と、高めの予測の高位推計、低めの低位推計の3通りにそれぞれ設定し、組み合わせて算定した。

  (私見)現在、65歳以上人口は日本の人口の約20%を占めています。極端な見方をするとまだ、『マイノリティー』ですが、50年後は『メジャー』になっています。そして50年後の社会を勝手にひとつ、ふたつ想像すると・・・

  @ 鉄道車両に高齢者専用車両が現れ、車内の広告も高齢者対象となり、車両のスピードも少し遅くなるかもしれない。

  A 障害者専用の駐車スペースが増え、より近い駐車スペースを確保するため、争いが発生する    など。

 

  『ノーマライゼーション 障害者の福祉』が財団法人 日本障害者リハビリテーションセンター協会 情報センター より出版されています。平成18年12月号の特集で『特別支援教育―障害児教育の未来は?』― があり、要点をかいつまんで紹介したいと思います。

 平成19年4月1日から「学校教育法等の一部を改正する法律」が施行される。法改正により、従来の盲・聾・養護学校の役割や仕組みが変わる。障害児教育はどのように変わるのだろうか・・・

 日本と海外先進国の現状紹介

 ◎日本…盲・聾・養護学校数 約1,000校

     特殊学級数     約30,000学級

 ◎平成6年 ユネスコによるサラマンカ宣言

 万人のための学校をうたい、包み込む教育(=インクルージョン教育)の提唱

 通常の教育環境の中で障害のある子どもの特別なニーズにこたえる。

 ◎アメリカでは特別の場を含め10%以上の子どもが特別の支援を受ける。

 ◎イギリスやカナダでは20%を目標に整備している。

 ◎日本は、特殊教育の制度を利用する児童生徒の割合は、義務教育段階のすべての子どもの1.6%に留まっている。

 理由 インクルージョン教育を意識し意図的に通常学級を選択する。

    本人も学校も支援の必要性を気づかずに通常学級へ通級する。

    文部科学省の実態調査で児童・生徒の6.3%に達する報告があった。

 平成15年「今後の特別支援教育の在り方について」による新しい理念として提言された。

 平成18年6月成立の学校教育法の一部改正

 特別支援教育の推進のための学校教育法等の一部改正法の解説について−文部科学省初等中等教育局特別支援教育課では

  青文字…文部科学省のホームページより(http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/05120801/g001.htm)

  黒文字…『ノーマライゼーション 障害者の福祉』より

 T.特別支援教育の理念と基本的な考え方

  ○障害のある幼児児童生徒の教育の基本的な考え方について、特別な場で教育を行う「特殊教育」から、一人一人のニーズに応じた適切な指導及び必要な支援を行う「特別支援教育」に発展的に転換。

 障害者基本計画において、「一人一人のニーズに応じた適切な指導及び必要な支援を行う」が基本方針として盛り込まれており、それを受け、学校教育法第75条で、小中学校では「教育上特別の支援を必要とする児童、生徒及び幼児」に対して「障害による学習上または生活上の困難を克服するための教育を行うものとする」としている。  通常学級に在籍している子どもも支援の対象とする。  インクルージョン教育への大きな前進。

 

 U.盲・聾・養護学校制度の見直しについて

  @幼児、児童及び生徒の障害の重度・重複化に対応し、一人一人の教育的ニーズに応じて適切な指導及び必要な支援を行うことができるよう、盲・聾・養護学校を、障害種別を超えた学校制度(「特別支援学校(仮称)」)に転換。

 盲・聾・養護学校在籍の約43%が重複障害学級に在籍しており、障害の重複化に一層適切に対応する観点から。

 障害の種別によって就学指導がなされていたために遠くの盲学校に就学せざるを得なかった子どもが、近所の知的障害の養護学校に入学することが可能になれば地域化がさらに一歩前進する。

 しかし、19年4月からすべてが転換されるわけではなく、学校設置者が判断することとなる。

  A 「特別支援学校(仮称)」の機能として、小・中学校等に対する支援を行う地域の特別支援教育のセンターとしての機能を明確に位置付ける。

 国は、「すでに盲・聾・養護学校では、特別支援教育コーディネーターとして指名し、地域の幼稚園、保育所、小中学校に出向いてコンサルテーションを行っている」としている。問題点の1つとして、コーディネーターは加配ではなく指名のため、元の学校の教育が手薄になる可能性がある。

 

 V.小・中学校における制度的見直しについて

  @通級による指導の指導時間数及び対象となる障害種を弾力化し、LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥/多動性障害)を新たに対象とする。

 「多様なニーズに対応すべくさまざまな工夫や配慮がされている」と国は表現している。

  A特殊学級と通常の学級における交流及び共同学習を促進するとともに、特殊学級担当教員の活用によるLD、ADHD等の児童生徒への支援を行うなど、特殊学級の弾力的な運用を進める。

 

  B「特別支援教室(仮称)」の構想については、研究開発学校やモデル校などを活用し、特殊学級が有する機能の維持、教職員配置との関連や教員の専門性の向上等の課題に留意しつつ、その法令上の位置付けの明確化等について、上記の取組の実施状況も踏まえ、今後検討。

 (注) 「特別支援教室(仮称)」とは、LD・ADHD・高機能自閉症等も含め障害のある児童生徒が通常の学級在籍した上で、一人一人の障害に応じた特別な指導を必要な時間のみ特別の場で行う形態。

 

 W.教員免許制度の見直しについて

 @盲・聾・養護学校の「特別支援学校」(仮称)への転換に伴い、学校の種別ごとに設けられている教員免許状を、障害の種類に対応した専門性を確保しつつ、LD・ADHD・高機能自閉症等を含めた総合的な専門性を担保する「特別支援学校教員免許状(仮称)」に転換。

 特別支援学校への転換を受け、教育職員免許状についても従来種目別であったものを1種類の免許状とすることとし、重複障害やLD・ADHD 等を含めたさまざまな障害についての総合的な知識・理解を担保することとしている。

  A「当分の間、盲・聾・養護学校の教員は特殊教育免許の保有を要しない」としている経過措置を、時限を設けて廃止。

 たとえば、大学において視覚障害と知的障害についての所定の単位を修得すれば、視覚障害の児童生徒等と知的障害の児童生徒等に対して教育を行うことができる免許状が授与される。

 また、当初の免許状を取得した後に、都道府県教育委員回答が実施する認定講習などにおいて異なる障害の種別に関する所定の単位数を取得すれば、教授可能な障害の種別を追加することができる。

 (参考)特別支援教育の推進のための学校教育法等の一部改正について(通知)18文科初第446号 平成18年7月18日http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/06072108.htm

ここで我が家の現状を報告する。

 我が家は地元小学校の特殊学級に通学している。現在4年生。なぜ、地元小学校を選択したかと言うと、いったん養護学校へ通学すると普通小学校へは戻れない。様子を見て考え、慌てて養護学校へ行くまでも無いと考えた。就学前に養護学校へ普通学校と交流しないかと問い合わせたとき、「そういうことはしていないし、今後も考えていない」と言う返事であった。親としては何とか半々ができないかと考えたが、組織の壁は厚かった。その当りのことはhttp://www003.upp.so-net.ne.jp/kabuki_j/school.htmに記載してある。

 現在日常生活にどうしても必要な、用達し、着替え、靴を履くことは自力ではできない。養護学校へ入れていれば、おそらくこのあたりのことは時間をかけてきっちり習得させたであろう。それでは普通学校へ通学のメリットは何かと言われても同時に2つのことは経験できないため、即答できない。友達がいるかと聞かれてもコミュニケーションができないので友達はおそらくいないであろう。ただし、元気はあるし、丈夫で長い距離も歩けるようになった。パソコンに対する関心も非常に高い。学校へ行くことが楽しそうである。担任の先生や校長先生やほかの先生に朝挨拶することを生きがいにしているようだ(すでに学校が特別な支援を実施していることの裏付け)。これはすばらしいことだと思う。また、本人がいることによって特に妹が嫌がっている様子も無い。当然このことは妹へのいじめの対象に成り得ると考えている。

 教育と福祉と就労の連携

 義務教育の期間は9年間ですが、実際の教育期間は高校就学を含めもっと長くなります。また、1日の中でも、「教育のサービスを受けている時間帯」と「障害福祉サービスを受けている時間帯」と「家族等と過ごす時間帯」に大別されます。法律改正が教育のみに終始することなく、暮らしとの連携も理念に含まれていることを期待します。

 障害者自立支援法の柱は、「障害福祉サービスの3障害(身体・知的・精神)一本化」と「就労支援」です(利用者の原則1割自己負担の制度は特例措置を設けるなどして今後どうなるかわからないような状態です)。

 「障害福祉サービスの3障害一本化」と「盲・聾・養護学校を、障害種別を超えた学校制度(「特別支援学校(仮称)」)に転換」は同じコンセプトのように感じるのは私だけではないでしょう。本当に旧身体障害者施設で精神障害者を受け入れできるでしょうか。同様に盲学校で知的障害児を受け入れできるでしょうか。これらのことが実現できれば本当にすばらしい社会になると思いますが、現在の税制や財源で可能なのでしょうか。実現を期待するものの1人として『絵に描いた餅』にならないように祈っています。

 文責 尾関敏伸

 

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