Kabuki Syndrome Network in Japan Newsletter
歌舞伎ジャーナル 第64号<<平成19年4月3日>>
歌舞伎症候群患者の障害者自立支援法が定めるサービスの利用について
平成19年3月23日付け、障発第0323002号にて、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長より「介護給付費等の支給決定について」(確定版)が各都道府県知事、指定都市市長、中核市市長あてに 発出されました(本来であれば平成18年10月1日施行分が約半年後に確定版として出ること自体おかしい)。障害者自立支援法(以下「自立支援法」という)の「障害福祉サービス」「地域生活支援事業」の利用に的を絞り説明します。
U 障害福祉サービスの支給基準
V 地域生活支援事業
自立支援法の5つの目的の1つとして「従来、身体・知的・精神の障害者に対する福祉サービスがバラバラであったものを3障害を1本化し、市町村が責任を持ってサービスを提供する。」があります。そして、サービスの内容を左図のように再編するものです。
平成18年4月1日に自立支援法が一部施行され、利用者の原則1割負担や自立支援医療などが始まりました。
平成18年10月1日からは自立支援法が本格施行され、事業所の新体系への移行(平成24年3月31日までの経過措置があります)や地域生活支援事業などが始まりました。
今回の歌舞伎ジャーナルでは、利用者負担等について記載するのではなく、歌舞伎症候群の患者が受けられると思われる障害福祉サービス(介護給付・訓練等給付)と地域生活支援事業に限定して記載します。
障害福祉サービスを受けるには、18歳以上の人は、106項目の調査を市町村の調査員に受けなければなりません。調査内容は調査時から1年位前の範囲のことを聞き取り調査します。調査時間は普通1時間前後かかります。
障害福祉サービスのうち(介護給付)の利用を希望する18歳以上の人は、認定審査会(非公開…公開すると適正な審査ができない)で区分1〜区分6(区分6が最重度)までの障害程度区分の判定を受ける必要があります。
障害福祉サービスのうち(訓練等給付)の利用を希望する18歳以上の人は、認定審査会で区分認定を受ける必要はありません。
18歳未満の人は、年齢が低いため、障害の程度が変化する可能性が高いということで、審査会で障害程度区分を決めるのではなく、国が作成した基準で認定調査員が判断することとなっています。
国は、
@障害程度が重い人は、障害程度の軽い人よりたくさんのサービスが必要として、サービス受給条件に相当する部分(例…重度訪問介護サービスを受けられる人は区分4以上が必要)は厚生労働省令で定め、そのサービスの支給基準を各市町村で作成すること(自立支援法第22条第4項)としています。
A障害福祉サービス費の50/100を国が義務的経費として市町村に支払う(自立支援法第95条第1項)と明記していますが、厚生労働省令で訪問系サービスには国庫負担基準(…障害程度区分に応じて国が上限額を設け、国庫負担基準以上のサービスの支給決定をした場合、かかった費用の全額を市町村で負担させるという制度)を設けています。障害程度区分が重い人が一律にたくさんの障害福祉サービスが必要と言い切れないところがあり、障害程度区分が中程度の人で、重度の人よりたくさんサービスが必要な人もいらっしゃいます。
Bまた、国はサービスの支給決定を国庫負担基準にとらわれる必要はないとしていますが、財政力の弱い市町村はどうしても支給基準を国庫負担基準以内に収めざるを得ません。
C本来、障害者施策は国が責任を持って実施すべきものですが、自立支援法の施行により、サービスの責任は市町村に押し付け、法律で定めた国の負担分も政令で歪曲させてしまいました。
国は片方で「全国どこでも同じサービスが受けられる」とし、もう片方で「市町村で支給基準を作る」としています。すでに国は矛盾を露呈させていることは明白です。
U 障害福祉サービスの支給基準
各市町村が障害福祉サービスの支給基準を定めなければならない根拠…自立支援法第22条第4項「市町村は、支給決定を行う場合には、障害福祉サービスの種類ごとに月を単位として厚生労働省令で定める期間において介護給付費等を支給する障害福祉サービスの量(以下「支給量」という。)を定めなければならない。」となっています。
また、 障害者自立支援法要綱 … 第二−二−2支給決定等−(4) 支給要否決定等− ウで「市町村は、支給決定を行う場合には、障害福祉サービスの種類ごとに月を単位とする期間において介護給付費等を支給する障害福祉サービスの量を定めること。(第二十二条第四項関係)」としています。
これらに従い、 市町村は、認定結果が通知された申請者の支給決定を行うために、申請者の介護給 付に対するサービスの利用意向を聴取します。
次に、 市町村は、障害程度区分やサービス利用意向聴取の結果等を踏まえ、市町村が定め る支給決定基準に基づき、支給決定案を作成します。
支給決定通知には、不服申し立てに関する教示をしなければなりません。不服申 し立て先は都道府県知事となりますが、決定についての疑問等は、第一義的には結 果を通知した市町村が対応します。 詳しくは厚生労働省ホームページへ
具体的に各市町村は支給基準を設けています。その支給基準をインターネットで公開している自治体もあります。概ね、次のような表を設けています。なお、この表には歌舞伎症候群患者が利用可能と思われるサービス内容を私が付け加えました。このページに記載されているからと地元の自治体に申し出されても相手にされないケースがあることを申し添えます。
V 地域生活支援事業 市町村事業のため、自治体の財政力や障害者施策によりサービス内容に地域格差がすでに発生している。また、どうしても小さな自治体は、大きな自治体より選択できるサービスメニューが少ない。
<必須事業>…国は次の5つの事業を必須事業としている。
1.相談支援事業
事業概要:障害者等からの相談に応じ、必要な情報の提供等の便宜を供与することや、権利擁護のために必要な援助を行うことにより、障害者等が自立した日常生活又は社会生活を営むことができるようにするために相談事業を行う。
利用者負担:相談事業に1割負担をどうやって払うの。相談にどうしてお金を支払わなければならないの→無料のところが多い。
2.コミュニケーション支援事業…聴覚障害者又は音声言語機能障害者及び聴覚障害者等と意思疎通を図るための事業のため、歌舞伎症候群の患者はほとんど該当しないので省略
@手話通訳者派遣事業
A要約筆記者派遣事業
B手話通訳者設置事業
3.日常生活用具給付等事業…重度の障害者としている。
@一般的な日常生活用具…特殊ベッドや杖など広範な範囲をさす。知的障害のみの歌舞伎症候群にはあまり関係ない。
Aストマ、紙おむつ等…紙おむつのみ重度の知的障害者に提供している自治体があると聞く。ただし、1割負担
B居宅生活動作補助用具(住宅改修費)…バリアフリー化のためであり、知的障害のみの歌舞伎症候群にはあまり関係ない。
4.移動支援事業…自治体によって、支給時間、利用者負担等に差がある。
事業概要:屋外での移動が困難な障害児・者について、社会生活上必要不可欠な外出(官公庁や金融機関への外出、公的行事への参加、生活必需品の買い物など)及び余暇活動等社会参加のための外出の際の移動を介護員が支援する。…歌舞伎症候群患者が利用可能な場合が多いと思われる。
事業者は居宅介護の指定事業所であり、移動支援事業のみ営業する事業者は聞いたことがない。
利用者負担:原則1割負担が多い。上限額は自治体によって差がある。
5.地域活動支援センター事業…旧デイサービス事業者が介護給付事業(新体系)の「生活介護」へ移行できなかった場合、地域活動支援センター事業へ移行したケースが多い。
事業概要:ほぼデイサービス事業と同じである。
利用者負担:原則1割負担が多い。上限額は自治体によって差がある。
<任意事業>…次のような事業が考えられるが、支給内容・量、利用者負担などについても自治体によって差がある。
・訪問入浴サービス事業…身体と知的の両方の重度の障害者であり、歌舞伎症候群の患者はほとんど該当しない。
・更生訓練費支給事業…利用者像を身体障害者の授産施設利用者を想定しているため、歌舞伎症候群の患者はほとんど該当しない。
・日中一時支援事業…日帰りの短期入所を想定している。歌舞伎症候群は該当する。
利用者負担:原則1割負担が多い。上限額は自治体によって差がある。
・生活サポート事業…認定区分非該当の障害者の家事援助が想定される。歌舞伎症候群患者でも認定区分が被害等となった人はサービス受給の対象となる。
・社会参加促進事業…各障害者団体への事業委託や事業補助が考えられ、個人への補助等はイメージしていないと思われる。
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