Kabuki Syndrome Network in Japan Newsletter 歌舞伎ジャーナル  第69号

<<平成19年7月1日>>

  障害者が授産所等で取り組む作業は「労働」なのか、自立のための「訓練」なのか-

厚生労働省が標題の判断基準を示しました。

  ・平成19年5月17日付、基発第0517002号 厚生労働省労働基準局長名で都道府県労働局長宛へ「授産施設、小規模作業所等において作業に従事する障害者に対する労働基準法第 9 条の適用について」の通達が発出されました。

  …労働基準法第9条の労働者と認定されると最低賃金法の適用を受けたり、社会保険料を負担しなければなりません。

 この通達は、次の4項から成り立っています。

1. 基本的な考え方。 

 なお書きで、「当該小規模作業所等における事業収入が一般的な事業場に比較して著しく低 い場合には、事業性を有しないと判断される場合があることに留意すること」 としています。

2. 訓練等の計画が策定されている場合

  条件を満たすことで 労働基準法第9条の労働者ではないものとして扱われることになります.

3.訓練等の計画が策定されていない場合

  条件を満たすことで労働基準法第9条の労働者ではないものとして扱われることになります.

4.その他 

  昭和 26 年 10 月 25 日付け基収第 3821 号「授産事業に対する労働基準法の適用除外について」は、本通達をもって廃止することとし、今後は、 本通達に基づき判断すること。

新たな問題点…今まで「障害者の居場所として必要な観点から授産所の存在の意義」もありましたが、この通達には、「障害者の居場所」が謳われていないとの指摘もあります。

 【授産所】とは

  (身体・知的・精神)の障害をもつ人が社会復帰するために、病院や施設からすぐ実社会へ出て就労することは非常にむずかしいことです。そのための中間施設のひとつが授産所です。そこで軽作業を通して社会復帰を目指す通所型の施設です。

  【厚生労働省が判断を出すにいたった背景】

  2007年2月18日の報道で、

  神戸市内で知的障害者作業所を運営する社会福祉法人「神戸育成会」が、最低賃金法に違反しているとして、神戸東労働基準監督署が立ち入り調査し、近く改善指導を検討していることが明らかになった。補助金を支出する立場の神戸市や作業所関係者の間に、戸惑いと波紋が広がった。

  神戸市障害福祉課によると、同市内の障害者作業所は休止中も含め計百三十四カ所あり、そのうち百二十カ所の利用者一人当たりの工賃は、平均月額一万円。年額に換算すると十二万円になる。今回、労基署が改善指導をするとしている神戸育成会の作業所は、その倍以上の年間約二十五万円を支払っていた。

  市の担当者は「(金額について)個々の利用者には不満を持つ人があるのかもしれない」と話す。同時に「作業所の工賃は、そもそも労働法規から除外されていると思っていたが」と戸惑いを隠せない。

 今回の問題について、同課の担当者は「特定の作業所だけの問題ではなく全国的な課題」と指摘する。

  障害者の労働自立を目指す「障害者自立支援法」と労働関連法規の整合性が取れていないとし、「障害者の工賃をどう引き上げていくのか。関係者は苦悩している。国は労働法に準じた法律など、何らかのガイドラインを示すべきだ」と強調した。

  一方、兵庫県内のある作業所は「作業収入から職員の人件費を払う(労働法規の適用除外条件からはずれる)作業所はあると聞いている」と打ち明けた。

  その背景には、自治体からの補助金だけで作業所を運営するのは難しいという構造的な問題がある。この作業所は、作業収入から必要経費を除いた全額を障害者に支払っており、一人当たりの平均工賃は月額約七千円。一方、職員の給料支払いは、自治体からの補助金では賄えず、障害者からの利用料月額一万円に年間約四百万円のバザーの売り上げ金を加えて、補てんしているのが実情という。

  2007年4月19日の報道で

  障害者に「労働」と認定

  神戸市の社会福祉法人「神戸育成会」(小林八郎理事長)が運営する知的障害者らの就労を支援する3つの作業所で、自立訓練の範囲を超えて「労働」をさせたとして、神戸東労働基準監督署は19日までに、神戸育成会に最低賃金支払いなどの改善を指導した。

  作業所の障害者は一定の条件を満たせば労働法令の適用外となる。しかし、3作業所では作業時間を決めて指導したり、タイムカードも導入しており、作業者が労働基準法上の労働者に当たると認定されたとみられる。

  同日会見した神戸育成会は「現状の収入で最低賃金分の支払いを続けると運営が不可能になる。作業所の運営は現状のままで続けていくしかない」と説明している。

  神戸育成会は知的障害者の就労支援のため、クッキーを作ったり、特別養護老人ホームのクリーニングを請け負う作業所を神戸市内で運営している。

  これに対して、同会は「障害者の作業は『労働』ではない」として、指導書の受け取りを拒否した。

  同会は19日に記者会見し「タイムカードは、遅刻という概念を教えるためで、訓練の一環。全国の作業所に影響する問題なので、指導書は受け取っていない。今後の対応は弁護士と相談する」と説明した。

 

 障害者の就労支援に関する今後の施策の方向性

 平成16年7月9日 障害者の就労支援に関する省内検討会議の4ページ「福祉部門から一般就労への移行支援施策の確立」で

 現行の福祉部門の課題として次のように列挙しています。

1 盲、聾、養護学校高等部卒業者の進路は、2割が就職、6割弱が施設・医療機関

2 施設体系の見直しの必要性

 ・施設種別が縦割りで複雑であり、機能も混在化している。

 ・社会資源として未だ充分でなく、かつ、地域的に偏在。

 ・福祉工場が増えていない一方で、小規模作業所は急増している。

などの問題があり、現状では授産施設から一般就労への移行率は1.1%、工賃は1万8千円弱(人・月)となっている。 

3 授産施設で多額の工賃を得ても、労働法規の適用がない。

 

 現実に背を向けた国の就労支援の方針

 障害者自立支援法の柱の1つとして『就労支援』がありますが、本当に実現できる施策でしょうか。

 この法律は、平成17年10月に成立、平成18年4月1日一部施行していますが、上記は平成16年7月9日に作成された国の省内検討会議です。国の資料でさえも次のように否定的な面をさらけ出しています。「最も就労移行の機会が多い盲、聾、養護学校高等部卒業者の進路は、2割が就職、6割弱が施設・医療機関」、「授産施設から一般就労への移行率は1.1%」と報告しています。誰が考えても1年3ケ月で状況が激変するわけではなく、この法律の就労支援策は暴挙と言わざるを得ません。この法律は、利用者の利用料の1割自己負担をはじめ多くの問題を抱えていることは周知のとおりです。 例示として省内検討会議の資料を掲げましたが、障害者が働く意欲が低いという現実を無視し、実現の可能性が低いにもかかわらず、余りにも性急な変革を求めすぎているのではないでしょうか。  

 

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