Kabuki Syndrome Network in Japan Newsletter 歌舞伎ジャーナル  第75号

<<平成19年11月1日>>

  歌舞伎症候群における低身長と肥満について

T 歌舞伎症候群の数ある診断基準の1つに「低身長」があります。

北米ネットワークが実施したアンケートでは74%が低身長と回答しています。

  (表1)

 しかし、ここでは低身長の定義と具体的な尺度が表されていません。統計学的に考えても、ステレオタイプ的ではあるが、アメリカ人の気質から考えても後述する医学的な見地から低身長とは判断せず、単に平均以下の身長を以って低身長と判断していると推測します。平均より少しだけ身長が低くても、低身長ではありません。

 医学的に低身長と判断するにはルールがあります。 まず低身長は相対的であること(基準になる値が年齢によって異なっていること)です。具体的には次の2つです。

 @「同性・同年と比較して平均値よりもマイナス2SD以下」

 A「1年間の伸びが平均値の80%以下が続く場合」

 @を理解しやすくしたのが(グラフ1)と(表1)です。 日本人では下のグラフ1の−2SD以下を低身長と判断し、低身長の具体的数値は、左の表(表1)のとおりとなります。グラフは(ファイザー社のホームページから無料で成長曲線のグラフがダウンロードできます。)(グラフ1は、女の子用のグラフで我が家の娘の記録をプロットしました)

 

 SDとは標準偏差(Standerd Deviation)の略です。簡単に説明すると標準的な身長からどれだけ差があるかをこのSDという数値で表します。プラスであれば標準よりも身長が高く、マイナスであれば標準より低いということになります。   

  以前国内で行ったアンケートによると男子5人のうち1人が一時低身長(グラフ)に該当した人がいます。3人が低身長より少し背が高いという結果が出ております。

  わが家の状況をグラフ(グラフ1)にあらわすと次のとおりです。一時低身長に該当した時期がありましたが、今はそうではありません。

 

 

U 低身長とは一種の成長障害です。

 低身長を主訴に受診する児童のうち、95%は原因不明であり、特発性低身長 (ISS:idiopathic short stature) と呼ばれる。家族性と孤発性があるが、遺伝的要因はあまり高くない(一般的に身長に対する遺伝子の影響は20〜25%といわれています。→親が小人症だからといって子供も小人症になるというわけではない)。

V 低身長の人がどの位の割合でいるか。

  歌舞伎ジャーナル  第68号で知能指数の分布は正規分布を成すと説明しました。(グラフ2)

  人の身長や体重など多くのものがこの正規分布に該当し、(グラフ1)の−2Dより下が低身長に該当し、全体の約2.3%占めるとされています。(※グラフ2のm-2Sとグラフ1の−2Dとは同じ意味と理解していただいて結構です。)

W 低身長の原因と種類

@家族性低身長・体質性低身長[小人症]

 遺伝的なもの、体質的なものによる低身長。低身長の原因の約半分がこれにあたる。正常低身長とも呼ばれ医学的には低身長とはならず、ホルモン治療の対象とはならない。

A思春期遅発症

 「おくて」と呼ばれる発育の遅れによる低身長。治療は必要なく、通常は正常な身長に戻る。

B思春期早発症

 思春期遅発症とは逆に早熟なために成長が早く止まってしまうことで起こる低身長。

C成長ホルモン分泌不全性低身長症[下垂体性小人症]

 成長ホルモンの不足によって起こる低身長。10歳までの早い時期にホルモン治療を受けると治療効果が高い。

D甲状腺機能低下症[クレチン症]

 甲状腺ホルモンの不足によって起こる低身長。10歳までの早い時期にホルモン治療を受けると治療効果が高い。

Eターナー症候群

 染色体の異常による低身長。X染色体の問題で起こるため女性だけに起こる。

F軟骨異栄養症

 骨軟骨の問題による低身長。

G低出生体重性低身長[子宮内発育不全]

 子宮内での栄養不足による低身長。妊娠中の母体の栄養不足、喫煙などによって起こる。

H愛情遮断性低身長

 家庭内の問題や社会的な問題などにより精神的なストレスから起こる低身長。

Iプラダー・ウィリー症候群

 15番染色体の異常による遺伝病。

J慢性腎不全

 腎臓に問題があり、尿が正常に作られない場合、発育不全となり低身長となる可能性がある。

X 低身長の治療方法

  治療方法も今のところ成長ホルモンの注射しかありません。治療開始はなるべく年少時から始めると効果的であり、思春期を迎えると骨が固くなり治療の効果が薄いとされています。しかし、ここに大きな問題があります。

@年少時から始めると効果的だが、年少時ほど検査の誤差が大きい。

Aボーダーラインの人はどうしても『もう少し様子を見ましょう』になり、治療開始が遅れる。

B成長ホルモン投与により確実に身長が伸びる保証がない。

C長い間、毎日注射する必要がある。

D高価である。

  北米ネットワークでも定期的に成長ホルモン投与の記事が掲載されます。治療効果があったとか、なかったとか。効果があった人で15歳の男の子が1年ちょっとで15.2cm伸びた。治療を止めたらどうなるか。肥満は治るのか などがあります。

  以上のことにより歌舞伎症候群の判断基準としての低身長という表現方法は誤りであり、正確に表現するのであれば『平均より低い身長』とすべきであり、今後はこのように表現します。

Y 平均より低い身長と肥満

  前述の北米ネットワークが実施したアンケートでは15%が肥満と回答しています。15%と意外に低い値にもかかわらず、肥満に対する関心は高く、成長ホルモンの投与と同様、ネットワークを定期的ににぎわせます。後段で記載しますが、アメリカと日本では肥満の基準が違います。日本のほうが基準は厳しくなっています。言葉を返すと、日本のほうが肥満の率が高いと言えます。

  肥満がもたらす健康への問題(主なもの)は

@糖尿病の元となる

A高血圧の元となる

Bひざ等の関節に負担が大きく、将来の歩行困難の原因となる

C高脂血症の元となる

D動脈硬化の元となる

  肥満を測る尺度として『BMI』と『ローレル指数』があります。 BMIの計算式は、 身長をt[m]、体重をw[kg]としたとき、

 BMI=w/tの2乗 で表されます。

 tはm単位であって、cm単位ではないので注意が必要です。

  日本肥満学会によると、BMIが22の場合が標準体重で、BMIが25以上の場合を「肥満」とし、BMIが18以下を「やせ」としています。

  BMIの計算式は世界共通ですが、肥満の判定基準については国により揺らぎがあります。アメリカでは25以上を「標準以上(overweight)」、30以上を「肥満(obese)」としています。

  次にローレル指数ですが、これは主に小中学生の発育状態を表すために用いる指数です。

  ■計算式:ローレル指数=(体重(kg)/身長(cm)の3乗)×10の7乗

  発育状態  ローレル指数

  やせすぎ 100以下

  やせぎみ 101〜115

  標準   116〜144

  太りぎみ 145〜159

  太りすぎ 160以上

 (グラフ1)よりわが家を当てはめると

  6歳;身長104p; 体重19s; ローレル指数 165; 発育状態 太りすぎ

  8歳;身長115p; 体重23s; ローレル指数 151; 発育状態 太りぎみ

  10歳;身長127p; 体重30s; ローレル指数 146; 発育状態 太りぎみ

  11歳;身長136p; 体重34s; ローレル指数 135; 発育状態 標準

  簡単にわが家の履歴を紹介すると

  1歳   保育園入園

  4歳6月 独歩が可能となった…運動の絶対量が少ないため肥満傾向と判断した。

  6歳7月 小学校入学(当時:特殊学級)…運動量が増えたため、現在(11歳)肥満傾向が解消しつつある。

Z 歌舞伎症候群=平均より低い身長=肥満 か???

 上述のデータ等により、歌舞伎症候群と肥満の関係は薄い。ただし、歌舞伎症候群の中には、『満腹中枢が壊れていることにより、終わりなき食欲』を示す人もいます。また、食は細いけれども肥満傾向にある人がいることも忘れてはならないでしょう。

参考 体重が気になる人は次のサイトからBMIと標準体重のページBMI、ローレル指数、カウプ指数(乳幼児)の肥満指数を確認するにはこのページから!!!

 ※出典:「身長事典 平均身長・低身長・身長を伸ばす方法」について

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