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Kabuki Syndrome Network in Japan Newsletter 歌舞伎ジャーナル  第88号

<<平成20年11月20日>>  平成20年11月22日修正

  カブキ症候群の勉強会

 

愛知県心身障害者コロニー中央病院の主催で勉強会が平成20年11月20日(木)に行われましたので報告します。この勉強会開催は、ホームページにも掲載されていました。当日、8家族(子供さんの参加は5名)が参加しました。はじめにご多用の中この勉強会を企画していただいた愛知県コロニーの先生方、スタッフの皆様に厚くお礼申し上げます。

  以下、講義の順に報告します。

T カブキ症候群の概要と最近の話題について

@ 症候群の定義等

  同一の原因による共通の複数の特徴を有する体質や疾患で、小児の症候群の数は2,000以上あるとされる。

Aカブキ症候群とは

小児科医が診察する症候群の件数順位・・・意外にも、カブキ症候群は4番目に多い

  ※参考 診療実績愛知県コロニー中央病院の診療実績統計埼玉県立小児医療センター/遺伝科の診療実績

1. ダウン症候群 2.プラダーウィリ症候群 3.ソトス症候群 4.カブキ症候群 5.ヌーナン症候群 

6.22q11.2欠失症候群 7.Russell Silver症候群 8.ターナー症候群 9.クラインフェルター症候群 

10.アンジェルマン症候群 11.Williams Syndrome・・・

日本での発生する確率が1/32,000と多くはないが、専門医にとって少ないわけではない。

  何故、日本で発見されたか

 東洋人はどちらかというと目が細い、カブキ症候群は目がパッチリしている。欧米人は元々目がパッチリしているので見つけにくかったのかもしれない。

 原因は今もって解明されていない。体質的には遺伝子ではないか。原因不明な症候群の中では最も発生頻度が高い。

B成長障害(低身長)

 出生時の身長や体重は正常範囲内

 身長の伸びるスピードはゆっくりしている。-2SD程度の成長障害を示し、最終身長は日本人患児で152p。成長ホルモンを使う場合もある。

 ※-2SD程度…同じ歳の同じ性の子供を100人並んで前から1人目か2人目の身長

Cカブキ症候群は検査で見つけることの出来ない症候群

 体の特徴で診断に至るケースもある。

 小指が短い。

 中指、薬指に間接の皺がない子がいる。

 関節が柔らかい。

 一人歩きのことで装具をつけることがある。

D聴力検査が必要性

 約50%に難聴がある。

 伝音性難聴と感音性難聴と混合性難聴がある。

 中耳炎も多い。耳の形が変形で分泌物がたまりやすいことや免疫的に弱いことが原因として考えられる。

E口と歯

 1番多いのが歯の欠歯。切歯、犬歯の1本少ない子供が多い。

 歯列不正や咬合異常は今年から先天性疾患が原因の場合保険が利くようになった。

F眼科的合併症

 斜視⇒あれば必ず分る。

 屈折異常⇒検査は難しいことはない。

G精神運動発達の遅れ

 一人歩き開始⇒1.5歳〜5歳ぐらいの幅がある。

 知的発達もかなりの幅がある。大きくなっての社会適用はカブキの場合は良好が多い。

 ことばの理解の全体のバランスはそんなに悪くない。

Hことばの特徴

 口輪や口腔の筋の低緊張に由来する不明瞭さや鼻声がみられることがある。⇒言語療法が有効な場合がある。

 同程度の精神遅滞の子供と比べて音声の抑揚、ピッチ、声の大きさなどで特徴がある。下表参照

 American Journal of Medical Genetics 116A:338?341 (2003) Speech Characteristics in the Kabuki Syndrome

 

I内分泌学的合併症

 女児で幼少期からの思春期早発⇒治療しない

 成長ホルモンの使用⇒検査が少々やっかいである。

 甲状腺ホルモンの検査⇒検査は数年に1回行う。

 ※甲状腺ホルモンが低いと身長の伸び、知的の伸びが少ないと言われる。

 元々カブキ症候群とオーバーラップして分りづらい。

 すべての症候群で甲状腺は悪い傾向にあるようだ。

J腎臓尿管系と心臓血管系

 両方とも1回検査してOKであれば問題ない。将来的に発生するものではない。

K神経系合併症

 てんかんは10%〜30%の割合で発生する。カブキ症候群は薬に良く反応するので通常の治療で充分である。

 感覚過敏⇒素足で砂の上に立ったり、手や足を触られるのを嫌う子がいる。

L生活の中で

 「1番得意なところを伸ばしてやる。そうすれば後からついてくる」という考えが必要。

 カブキ症候群の子は症状が出てくるのがゆっくりしている。

 診断も早くて1歳ぐらい。ゆっくりの子は小学校入学前ぐらい。

 

U 脳の機能の特性に基づく療育

  目的は「得意なところを使って不得意なところを補う」

  対応方法は「子供の凸凹を見つけ出す」「病気には大まかな傾向があり、それを把握する」

  カブキ症候群の研究は進んでいない。

  試行錯誤の療育ではなく、科学的な療育が必要。

  カブキ症候群の精神発達の特徴について

  ・ 知的障害の程度は軽度から重度まで幅がある。

  ・ 言語の獲得は遅れる。話が出来ることは多い。

  ・ 話すことより言語理解が得意(本人が何を話しているかわからないが、こっちが言った内容の理解度は高い)

  ・ 自閉傾向などといわれている。

  ・ ルーチンワークが得意

  ・ 視空間認知の障害⇒この結論を出すにいたった引用は下の文章より(カブキ症候群とWilliam Syndromeに共通したこととして「優れた記憶力をもつ」に着目)

この論文のweb化はオーストラリアの家族会が行いました。

 (上の意訳)数人の患者 に自閉症または自閉症の症状に似たふるまい(「コミュニケー ション」と「仲間との交流」の両方が苦手)があることがわかりまし た。 (上記ホー ムページの末尾に引用論文の出典紹介があり、その8,26番引用) しかし、最近、27人のカブキ症候群患者を調査したところ、 「よい社会性を備えている」、「見知らぬ人にも人当たり がよい」、「アイ・コンタクトが乏しいにもかかわらず自然な 愛想よさがある」があり、(訳者注:「この点においてカブキ症候群は自閉症と本質的 に違う」と言いたいのか?) (引用13番) 加えて、これらのカブキ症候群患者の親たちは 子供が 「顔の認識」、「音楽の歌詞」、「イベント」、「日付」にお いて、長期間忘れないという優れた記憶力があると報告してい ます。特に音楽については、やみくもに音楽が好きではなく、 音楽的な適正が伴って音楽が好きという患者が 多くみられます。 いくらかの患者にとって音楽は新しい概念や技術を 教える上で大変効果的な道具となるでしょう(ミュージック・ セラピー)。 これらの事を知ることは、両親や学校の先生がカブキ症候群患 者の教育をより有効的に展開していくための手助けになります 。 (尾関訳)

  ・ 記憶力が意外と良い。⇒顔は1回会うと覚えている。

  ・ 歌をくちづさむ。

    Williams Syndromeと「視空間認知の障害」で似ている。

  ・Williams Syndromeは Dorsal pathwayは障害があるが、Ventral pathwayは得意である。

  ここをもう少し他の文献を引用して説明すると「Know脳 Now !!-Everybody is Brain-Scientist !- ?Issue 22 (2001.07」より

  視覚情報の二つの経路

  一つは「背側経路(ハイソクケイロ)(dorsal pathway)」と呼ばれる経路です。これは脳の背側、つまり後頭部から頭頂の方(頭の上の方)へ向かっている。

  これまでの研究から、この経路には「動き」に関する視覚刺激に反応するニューロンが多いことがわかっていて、視覚情報の中でも「場所・位置」に関する情報を優先的に処理していると考えられています。

  第二の経路は「腹側経路(フクソクケイロ)(ventral pathway)」です。これは脳の腹側、つまり後頭部から側頭の方(脳の横側の方)へ向かっています。

  この腹側経路では、「物体の形・色」に関する情報を優先的に処理していると考えられています。例えば、サルを対象にした研究から、ある特定の図形や顔といった「形」に関係する視覚刺激をサルに見せたときによく反応するニューロンが、この経路の視覚野にあることがわかっています。

  ということから、カブキ症候群は視空間認知は苦手だけど人の顔を覚えるのが得意と仮定できる。

  William Syndrome の人は下図のとおり3次元模写は得意でない。下図は前述の「Williams Syndromeと視空間認知の障害」より引用

 

  William Syndromeと同様にカブキ症候群も「模写が不得意」と仮定し、カブキ症候群の日常の療育に生かす目的で、カブキ症候群患者に試したところ、(3次元や白黒・グレースケール=不得意/色を使った場合=得意)の結果が出た。

  カブキ症候群の療育に「色を使うこと」は有効と思われる。

  なおこの図は勉強会で実際に使用されたものではなく、説明を聞いて想像して描いたものです。

 

  白黒は「背側経路」、色がついているほうは「腹側経路」

  漢字の模写(森)も上手にできなかった。「どこにあったか」がうまく認識できない(「何」は比較的得意なようだ)ので、例えばマスを書いて示すなど、方法に工夫を凝らせば可能となった。

 

  写真を元にブロックパズルを試みても、上手にできない。⇒(裏づけ)療育手帳更新時に児童相談所の先生の指示によりチャレンジしたがまったくできなかった。

 

V 質疑

@ 現在保育園へ通っています。靴を履くときに左右間違えます。そのため、左右で色分けしたところ、間違いなくはけるようになりました。大きくなれば、サインなしで間違いなくはけるでしょうか。

回答 まず、左右の色分けのアイデアはすばらしい。こういうことが大事です。将来、サインなしで大丈夫かは、かなり難しい。

A説明で「応用が可能かどうか調べなければならない」とあったが、調べた結果が分かった後、「できないことをできるようにさせるべきか」保護者はどうすればよいか。

回答 かなり哲学的な話で、ケース・バイ・ケースで保護者が対応すべきであろう。

B成人した後どのような生活を送っておられますか。

回答 最年長で30歳ちょっと。成人の情報は少ない。自宅から福祉の作業所へ送迎つきで通っておられる。生活の範囲が 自宅←→職場+本人が楽しめる場所があるとよい。

C言葉が出ない。口の筋緊張はトレーニングで直るか。

回答 言語の先生のもっとも得意としている分野です。言語のレベルが4〜5歳のレベルになった段階で介入すべきであり、二語、三語の段階で介入しても効果は薄い。口の周りの筋肉を動かす運動はシャボン玉など遊びの中で行ったほうがよい。ただし、「うまくいったらめっけもの」程度と考えてほしい。

D「カブキ症候群」と医師や周りの人に伝えるべきか

回答 相手が子供にとってよい対応をしてくれるか?上手に理解してくれるか?…すべての疾患に共通する問題である。

  教育をする先生には話しておいたほうがよいのではないか。理由は

  今までの知的障害に対する認識は、ことば、文字、計算、記憶など相対的にフラットに考えられていた(言葉が分からなければ文字も読めない等)。しかし、実際そうではなくて、凸凹があることが分かった。このことが理解されなければ、異様に難しい課題が与えられたり、逆パターンも発生する。結果として、保護者のほうで得意、不得意を伝えるなど工夫が必要ではないか。もはや、親一人で悩む時代ではない。

  W 自己紹介・記念写真(いずれコロニーのホームページで紹介されるでしょう)

 わが子以外のカブキ症候群のお子さんと親御さんと会うのも今回が初めてでした。下表のとおり皆さん外見的に、めじり、まゆ毛、耳の形に特徴がありました。単に患者同士が会うだけでも絶大な効果をもたらしました。「百聞は一見にしかず」とは、当にこのことです。大変有意義な時間をすごすことができました。ありがとうございました。

 

このときの記念写真がコロニーのホームページで紹介されました。このページの一番下に映っています。 (2008年12月5日)

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