VOX V847 MOD :イタリアンVOX V846サウンドを目指して

1969年イタリア製V846とV847の違い

1969年イタリア製のV846と現行のV847では音色に明らかな違いがあります。V846が甘めの音色で「クンワァー」となるのに対してV847ではがさついた音色で「ケロ」「ケロ」とカエルの鳴くような音色しか得られず、イタリア製V846を100点とすると30点。 周波数ピークのスウィープで音楽を表現するというところからは程遠いものになっています。そこで使用部品ほか違いについてまず比較してみました。

1969 イタリア製 V846 現行品 V847
インダクター L Filmcan トロイダル(ドーナッツ状)コイル コアキシャル(同軸)コイル
トランジスタ Tr1, Tr2 2N5172 型番消されていて不明
インダクターの並列抵抗 Rl 36KΩ 33KΩ
0.01μFコンデンサーCin, Cf (アルミ)スチコン 積層セラミックコンデンサーと思われる
初段トランジスターのエミッター抵抗 Re1 470Ω 510Ω
0.22μコンデンサー Cc1, Cc2 誘電体不明フィルム?コンデンサー 積層セラミックコンデンサーと思われる
ボリュームPOT ICAR POT Jim DunlopオリジナルPOT
電解コンデンサー Cl 4μF BP 4.7μF 極性有り

以上のように何箇所かで使用部品、回路定数が異なっていますので現行V847の音色をイタリアンVintage V846に近づけるべく改造してみます。

インダクター交換

写真左からV847のコアキシャルインダクター、Jim DunlopのリイシューRed Fasel、Yellow Fasel
Faselのライセンスを得てJim Dunlopから発売されているFaselリイシューのトロイダルコイルインダクターをV847のインダクターと交換してみました。Jim Dunlopから発売されているFaselリイシューにはRedバージョンとYellowバージョンがあり、Redがトロイダルコア、Yellowがカップコアとなっています。Antique Electronic Supply からOnline購入可能($17.95)です。まずRed Faselから取り付けてみました。 音色が甘い感じになり、踏み込んだときのサチュレーション(飽和)を起こした感じがイタリアンV846っぽいです。 次にYellow Faselを取り付けてみました。 V847よりはましですがなんだか面白みのない音になってしまいました。 ということでトロイダルコアのRed Faselが良さそうです。 トロイダルコアのインダクターさえ使えばVintageサウンドになるというものでもありませんがトロイダルコアのインダクターを使わないとWAH MODは始まらないと言う感じです。

写真右側はwww.wah-wah.co.ukのHALOレプリカインダクター。こちらもトロイダルコアのインダクターでFaselインダクターと同じように甘い音色とサチュレーションが得られますがFaselとQの高さが違って出るようなのでそれぞれ微調整が必要になります。KOUCHIさんインダクター購入のご協力ありがとうございました。
最近ではwww.wah-wah.co.ukのHALOレプリカとほとんど同じものが国内Garrettaudioからも通販で購入できるようになりました。

103アルミスチコンを銅箔スチコンに、224コンデンサーをERO 1862に交換

高音域に濁りがあること、中音域がやややせた音色になっているので103のアルミスチコンを秋葉原 海神無線で購入した銅箔ポリプロピレン(右)に交換、224をやはり海神無線で購入したEROの1862のポリカーボコンデンサー(左)に交換しました。高音域の濁りが無くなり、中音域に厚みが出てだいぶイタリアンV846に近くなりました。インダクターとコンデンサーの種類で基本的な音色は決まっているようです。オーディオ的に高域まできらびやかなコンデンサーより、おとなし目のしっとりした澄んだ音色のコンデンサーが合っているようです。

トランジスター交換

イタリアンV846で使用されていた2N5172は現在セカンドソース品としてFairchild製とCentral Semiconductor製を入手することができます。どちらもMouserからOnline購入可能です。Central Semicondutor製はFairchild製の約10倍の値段ですが、Central Semicondutor製を10個とFairchild製を100個買っても$8しません。pin互換がありませんので注意が必要ですが正体不明のV847のトランジスターを2N5172と交換してみます。V847のトランジスタを外す前にPCBに印をつけておかないと向きがわからなくなってしまうのでマジックで「EBC」と書きました。V847のトランジスターは正面左からEBC(エミッタ/ベース/コレクター)の順です。Fairchildのもの、Central SemicondutorのものはECBの順なのでCBの順番を入れ替えないと挿入できません。トランジスタの足をショートしないように空中で交差させました。まずFairchildのものを取り付けてみましたがほとんど変化がありません。Central Semicondutorの2N5172を取り付けてみると、おおっ!「くわぁ」と言い出しました。まだ可変レンジが広く、開ききった時にゲロゲロした感じは残っていますが、中音域がやや膨らんでナチュラルなサチュレーションを起こしている「んわぁ」が出だし、Vintageな雰囲気も出てきました。

この外ではBC109も悪くはありませんでしたがVintageな感じを求めるなら2N5172かな。

POT交換

イタリアンV846で使用されていたICARのPOTは特性がリニアではなく、ペダルを踏んだときの変化の仕方が他のPOTでは出しにくいようです。FulltoneからICARの特性をコピーして耐久性を持たせたPOTが発売されていますのでこれに付け替えてみます。これもAntique Electronic SupplyでOnline購入可能です。Jim DunlopのPOTではクワァのおいしいところがあっという間に終わってしまい「クワァァァァァァァァァァ」ですがFulltoneのPOTではおいしいところを時間をかけて変化してくれます。

WAH POTS
イタリアンV846のPOT他、リプレース部品のWAH POTと特性を比較してみました。踏み始めの変化しない区間からの立ち上がりが急なほどV846のICARのPOTに近づくようです。比べた中ではFulltoneのPOTが一番!

イタリアンV846、V847のf特を比較測定

どうもV846とHaloインダクターを使ったV847は周波数特性が違うように思います。V847のほうがピークの幅が狭く感じます。そこで周波数特性が測定できるソフトウェアを見つけ比較してみました。スピーカー測定用のシェアウェアですがなかなかよくできています。ライセンス購入しましたが周波数特性を見るだけならライセンス購入しなくてもグラフ表示してくれる(グラフに試用品とおおきく表示されるだけの違い)のでお勧めです。MySpeakerというソフトウェアです

V847はHaloインダクターにして中心周波数が高いほうによっています。一番低いときにはV846では680Hz付近にピークがありますがV847Haloでは800Hz付近です。またV847Haloでは周波数の持ち上がり方が急峻です。

周波数をダウン

フィードバックのスチコンは銅箔スチコンの103ですが、103の銅箔スチコンに202の銅箔スチコンを二つ、合計3つを並列にして0.014μFにしたところ周波数の変化はV846とほぼ同じになりました。銅箔スチコンの472が手に入ればこれを一つ103と並列にして0.0147μFにしても良いかもしれません。下図参照

周波数は下がり、一番低いときにV846と同じ680Hz程度になりましたが周波数ピーク部分の持ち上がり方が急で-10dB付近で見たときの幅がV846より狭くなっています。

Qをダウン

4.7μF電解コンデンサーをV846と同じ値の4.0μF BPにしてみます。4.0μFは手に入らないので1μF BPを無理して4つ並列にしました。これですこしQが下がりますがまだまだなので、インダクターと並列の抵抗を33KΩから27KΩにします。この結果下図のように-10dBで見たときの幅はだいぶV846に近づきました。4.0μFにしたのはQを下げる目的ですので4.7μFのままにしてインダクター並列抵抗をさらに下げても同じ効果が得られると思います。

もう少しインダクターの並列抵抗を下げてQを下げてもいいかもしれません。

ゲインをUP

周波数特性的にはだいぶV846に近づきましたがQが下がった結果、踏み込んだときのサチュレーションの感じがおとなしくなってしまったので、ゲインを上げるために初段トランジスタのエミッタ抵抗を470Ωにました。これで踏み込んだときのワイルドさが戻りました。もう少し落としても良いかもしれません。

これでHaloレプリカを使った改造は完成!並列に並べたコンデンサーがちょっと窮屈そう。

Faselインダクターの場合

Faselインダクターの場合の周波数特性も調べてみます。Haloインダクターの定数のままFaselに乗せ替えてみると特性は以下のように周波数ピークの点はMax側、Min側ともHaloと変わりませんがQが高くなって-10dBで見たときの周波数の幅がHaloよりも狭くなっています。

そこでQを下げるためにインダクターと並列の抵抗を22Kオームに落としてみるとHaloのQに持ち上がり方に近くなりました。下図参照

Faselの場合はさらにゲインをUP

周波数特性的にはだいぶV846、Haloインダクターに近づきましたがQが下がった結果、踏み込んだときのサチュレーションの感じがおとなしくなってしまったので、ゲインを上げるために初段トランジスタのエミッタ抵抗を390Ωにしました。これで踏み込んだときのワイルドさが戻りました。こちらももう少し落としても良いかもしれません。

こちらがFaselレプリカを使った場合の完成写真。

まとめ

イタリアンV846 V847 V847 MOD Halo V847 MOD Fasel
Cin 0.01μFアルミスチコン 0.01μF 0.01μF銅箔スチコン(銅箔ポリプロピレン) 0.01μF銅箔スチコン(銅箔ポリプロピレン)
Rin 68KΩ 68KΩ 68KΩ 68KΩ
Tr1,2 2N5172 正体不明 2N5172 2N5172
Rc1 22KΩ 22KΩ 22KΩ 22KΩ
Re1 470Ω 510Ω 470Ω 390Ω
Rlc 470KΩ 470KΩ 470KΩ 470KΩ
L Filmcan コアキシャルインダクター HALOレプリカ Faelレプリカ
Rl 36KΩ 33KΩ 27KΩ 22KΩ
Rg 100KΩ 100KΩ 100KΩ 100KΩ
Cl 4.0μF BP 4.7μF極性あり 4.0μF BP
(4.7μFの場合にはRlを小さく)
4.0μF BP
(4.7μFの場合にはRlを小さく)
Cc1,2 0.22μF、ARCO 0.22μF 0.22μF ERO 1862 0.22μF ERO 1862
Rs 470KΩ 470KΩ 470KΩ 470KΩ
Rc2 1KΩ 1KΩ 1KΩ 1KΩ
Re2 10KΩ 10KΩ 10KΩ 10KΩ
Cf 0.01μFアルミスチコン 0.01μF 0.014μF銅箔スチコン(銅箔ポリプロピレン)
(0.01μFと0.002μF2個の3並列)
0.014μF銅箔スチコン(銅箔ポリプロピレン)
(0.01μFと0.002μF2個の3並列)
Rf 1.5KΩ 1.5KΩ 1.5KΩ 1.5KΩ
POT ICAR Jim DunlopオリジナルPOT Fulltone POT Fulltone POT

V847 MOD ではイタリアンV846とブラインドテストされたら聞き分けるのが難しいところまで近づけたので、98点!!!ふーっ、Wahは奥が深い。POTの特性の微妙な違いが少し残っているのが完全に一致すれば100点満点なんですが....でもここまででも現行で売られているどんなWAHよりヴィンテージWAHを再現していると思います。

さらにっ!

僕のイタリアンV846は0.22μFがARCOのフィルムコンデンサーですがジミヘンのはトロピカルフィッシュといわれているMullardのフィルムコンデンサーが入っていたはずです。このMullardのトロピカルフィッシュNOS品を手に入れる事は無理だろうと思っていたら見つけました!(リイシュー品のトロピカルフィッシュはけっこう出回っているようですが)

右側がMullardのトロピカルフィッシュ0.22μF。見るからに熱帯魚ですが意外なことにカラーコードがそのまま上から赤・赤・黄なので224と容量を示しています。これを早速搭載してみるとヴィンテージワウが持っているふくよかさ、暖かみが加わります。これっ、これっ!
また、XiconのスチコンがMouserで扱われていたのを発見したので103と472を100個ずつ注文。それでも数千円でした。こちらはヴィンテージなちょっと粗野な感じがよく出てきます。これらに合わせてLの並列抵抗を24KオームにしてQを下げるともう僕の持っているItalian Wahと同等かそれ以上になってしまいます。69年のItalian WAHからオリジナルのCryde McCoy Wahの音色を目指す領域までたどり着けたのではないかな。

イタリアンV846 V847 V847 MOD with Halo & Tropical Fish
Cin 0.01μFアルミスチコン 0.01μF 0.01μFアルミスチコン(Xicon)
Rin 68KΩ 68KΩ 68KΩ
Tr1,2 2N5172 正体不明 2N5172
Rc1 22KΩ 22KΩ 22KΩ
Re1 470Ω 510Ω 470Ω
Rlc 470KΩ 470KΩ 470KΩ
L Filmcan コアキシャルインダクター HALOレプリカ
Rl 36KΩ 33KΩ 24KΩ
Rg 100KΩ 100KΩ 100KΩ
Cl 4.0μF BP 4.7μF極性あり 4.0μF BP
Cc1,2 0.22μF、ARCO 0.22μF 0.22μF Mullard Tropical Fish
Rs 470KΩ 470KΩ 470KΩ
Rc2 1KΩ 1KΩ 1KΩ
Re2 10KΩ 10KΩ 10KΩ
Cf 0.01μFアルミスチコン 0.01μF 0.0147μF XICONアルミスチコン
(0.01μFと0.0047μFの並列)
Rf 1.5KΩ 1.5KΩ 1.5KΩ
POT ICAR Jim DunlopオリジナルPOT Fulltone POT

番外編:トゥルーバイパス改造へ