「食べるな危険」by日本子孫基金(講談社)


 この本は、読め。

 かつてこの手の、残留農薬や動物抗生物質への警鐘を鳴らした本は多数あった。例えばあの「買ってはいけない」などである。だがそう言った手合いの殆どは、「ならばどうすればいいのか」を我々に示してはくれなかった。現代の生活が如何に危険で、我々に隠された毒物がどれほど多数存在するか、ただそれだけを延々と示されたのでは、私たち一般生活者はもう、うんざりしてしまって終わりである。そうか現代の生活は汚染されているのか、みんな汚染されているんだ、しょうがないよ。そう言って、これまで通りの生活を続けるより他ない。

 今度出たこの本の特徴は、「だからどうすればいいのか」を個々の事例ごとに、事細かに示しているところにある。例えば。

 きれいなオレンジが、スーパーの入口近くに並んでいる。爽やかなオレンジ色はまさにカルフォルニアの太陽のイメージで、日本の柑橘類よりずっとあか抜けて見える。だがこれに手を出してはいけない。 アメリカでは、オレンジをまずブラッシングする。これで表面に付いた色々なものが削り取られて綺麗な色になるのだ。この処理によってオレンジの表皮は傷だらけになる。細胞膜が壊れているから、このままでは直ぐカビが発生する。そこでカビが生えないよう処理が施されるのである。殺菌剤をスプレーし、次に白カビを殺すOPP入りワックスを掛けて熱風で乾燥させ、更に緑カビを殺すTBZやイマザリルをスプレーする。こうして果皮の表面が綺麗に見えているわけだが、ぴかぴかするのは農薬入りのワックスが光っているのである。こうして処理されたオレンジは、幾ら置いてもカビは生えない。風呂場に発生するカビを、混ぜるな危険と書かれた強力なカビ落としてせっせと落としても、数週間もすれば又生えてくるのは皆さんご存じだろうが、このオレンジはいつまで放置しても、カビの一本も生えないのだ。

 ここで用いられるOPPは発ガン性、TBZは催奇形性が見つかっている。またイマザリルは発ガン性や遺伝毒性があるのみならず、アメリカでは男性用経口避妊薬の特許が取られていることも判明した。かつて、日本ではこの様に収穫後に改めて農薬を使用する(ポスト・ハーベスト)という発想はなかった。だから元々これらが検出された農産物は、旧厚生省によって違法添加物として摘発されていた。ところが、アメリカが様々に政治的圧力を掛けた挙げ句、日本の厚生省はこれらを添加物として許可してしまったのである。

 次に、アメリカから輸入されるレモン、例えばサンキストのレモンなどは、総て収穫後に2・4-Dと呼ばれる発ガン性のある農薬が掛かっている。これは、ベトナム戦争で用いられた枯れ葉剤の主成分だ。これをレモンの木に掛けると枯れてしまうので、収穫してから掛けるのである。このサンキストの2・4-Dレモンについて、1998年日本政府が出した見解は次のようなものである。
「2・4-Dについては、その使用目的が収穫後のへた落ち防止である場合には、ご指摘の「保存を目的」とした添加物には該当しない」・・・食品衛生法の定義では、添加物は「保存を目的」に使用するものとなっているのである。だが目的がなんであれ、2・4-Dが発ガン性を持つことに替わりはない。その後我が国は柑橘類に含まれる2・4-Dの残留基準値を定めたが、これは総てのサンキストレモンの輸入を容認するよう、非常に緩く定められたものだった。現在でも、2・4-Dレモンは事実上野放しで我が国に輸入されているのである。

ここから導き出される我々の行動指針はただ一つ、
「アメリカ産柑橘類は買わない」。サンキストのレモンは買ってはいけない。レモンに限らず、サンキストの果物は基本的に手を出さないのが賢明だ。ではどうすればよいのか。オーガニックレモンや国産レモンからは農薬が検出されていないので、これらを最優先する。同様に、国産柑橘類にはポストハーベストは使用されていないので、よりましな選択となるだろう。

 家庭用の小麦粉には、様々な殺虫剤が含まれている。何故か。アメリカで、小麦粉を保管する過程で殺虫剤を混入させるからだ。小麦粉畑に撒くのではない。収穫し、粉にして倉庫に保管している小麦粉、つまり我々が口にするそのものに、直接殺虫剤を噴霧して混ぜ込むのである。これらの殺虫剤は総て、口に入れてはいけない、吸い込んではいけないと言う注意書きが書かれているものばかりである。神経に作用して虫を殺すその機序が、人間にも作用して微量でも頭痛、めまい、倦怠感、違和感、不安感、下痢、腹痛、嘔吐、視力減退などの神経症状を引き起こすからだ。そもそもこんな注意書きが書かれていようがいまいが、目の前で殺虫剤がたっぷり振りかけられた小麦粉で、誰が天ぷらを揚げようと思うだろうか?
 こうした殺虫剤入りアメリカ産小麦粉は、様々な用途の専用粉に多い。例えばパン用、天ぷら粉、ホットケーキミックス、唐揚げ粉、だまにならない、粉が飛ばないを謳い文句にした薄力粉などである。従ってこれら種々の専用の用途別になった小麦粉は買ってはいけない。国内産を選ぶべきである。

 だがこうした様々な衝撃的な事実の中で、私がもっとも腰を抜かす程驚いたのは、お茶である。
「日本のお茶の多くには、生産段階で味の素の代表とする化学調味料のグルタミン酸ナトリウムがたっぷり振りかけられていたり、農薬山盛りのものがある」、この事実を、あなたは知っていただろうか?化学調味料入りのお茶、そんなものがあるんかいなとスーパーの棚を眺めてみても無駄である。これらは一切表示されていないからだ。こんなものを添加したのに、原材料名に表示しなければ「食品衛生法違反」である。だが、農家がお茶を出荷するときの出荷表には、原材料名に「茶、調味料(アミノ酸)、重炭酸アンモニウム」としっかり印刷されてあるという。調味料とは味の素のことで、重炭酸アンモニウムとは重曹のことだ。重曹を添加すると色が綺麗に緑色になる。添加しない場合は線でこの項目を消すように農家は指導されているという。
 確かに、お茶の旨味はテアニン、グルタミンなど種々のアミノ酸によるものだ。玉露など高級なお茶ほどこれらのアミノ酸がたっぷり含まれている。つまり、グルタミン酸を添加したお茶とは、元々痩せてまずい安物の茶を、安直に玉露に化けさせたものだと言うことになる。ペットボトルのお茶や缶のお茶を飲んで却って咽が渇いたり胸やけがした場合、これらグルタミン酸ナトリウムが使われている可能性がある。また玉露入りなどと書かれている場合は、特に疑わしい。高級茶の玉露を200円を切る値段で飲めると思うのがそもそも間違いだ。玉露に似せるために味の素が加えられているのである。

 最近スーパーで見かける様々な表示について。
 「有機」食品、「無農薬」、「減農薬」などこれらはどの程度信頼できるものであろうか?答えを先に行ってしまうと、信頼が置けるのは「有機」食品のみである。有機食品を生産する事業者は、登録認定機関という第三者に認定されていなければならず、JASに基づいて記録管理を徹底し、畑から工場、流通の過程まで追跡出来るようにしている。だが「無農薬」「減農薬」は認定制度が取られていない。従って、これらは全く信頼出来ない。自己申告で農薬を使っていなければ「無農薬」、その生産地の慣行的な農薬使用量の5割以下なら「減農薬」と表示出来るからである。実際に無農薬茶から環境ホルモン作用のある殺菌剤ベノミルが検出された事例もある。ちなみに「有機」のお茶にはグルタミン酸ナトリウムの添加も許可されていない。農薬やグルタミン酸ナトリウム無しの、本当のお茶を飲みたかったら有機栽培されたものに限るのだ。但し、こうかつな生産者は常に消費者を騙そうとする。例えば「有機肥料使用のお茶」は有機茶ではない。有機茶には「有機JASマーク」が付いているから目安にするといい。

 私としては、是非スーパーにこの本を持って買い物に行きたいところである。きっとこれまでとは、買い物籠の中身がだいぶ変わってくるだろう。
(2003.2.16)
 
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